ゲンゴロウ・タガメ飼育ブログhttps://gengo6.com/ゲンゴロウとタガメの飼育Mon, 23 Jun 2025 04:59:55 +0000jahourly1https://gengo6.com/wp-content/uploads/cropped-MVIMG_20190706_195634-32x32.jpgゲンゴロウ・タガメ飼育ブログhttps://gengo6.com/3232 160887231経験者が語る!休耕田ビオトープ開設の手続きと運用のポイントhttps://gengo6.com/2025/06/23-11248https://gengo6.com/2025/06/23-11248#respondMon, 23 Jun 2025 00:00:00 +0000https://gengo6.com/?p=11248

自然豊かなエリアの休耕田を見て「ここをビオトープにしたい!」と思った方も多いでしょう。休耕田ビオトープは、生き物が増えるだけでなく、農家さんの草刈り負担を軽減できる枠組みでもあります。実際に休耕田ビオトープを運営してきた ... ]]>

自然豊かなエリアの休耕田を見て「ここをビオトープにしたい!」と思った方も多いでしょう。休耕田ビオトープは、生き物が増えるだけでなく、農家さんの草刈り負担を軽減できる枠組みでもあります。実際に休耕田ビオトープを運営してきた経験から、開設に必要な手続きと運用上の注意点についてお伝えします。

休耕田ビオトープのポテンシャル

たとえば我々が運営している休耕田ビオトープでは、1年目にナミゲンの飛来、2年目の今夏はを確認しています。

ナミゲンは難易度高いですが、ちょっと環境がよい所なら等はすぐ来てくれるし、無限にオタマジャクシが発生したり、を入れるたびにイトトンボのヤゴたちが入るのは気持ちがよいものです。

基本的には、数km圏内の種が徐々に来るイメージをもっていればよいと思います。

「復田可能」がポイント!開設前の手続き

田んぼを借りて、稲を植えつつビオトープ的な運用をする場合、これは通常の田んぼと同じなので、特に手続きは不要です。

一方、田んぼで作物を作らず水を張るビオトープでは、以下を考慮する必要があります。


そもそも、農地をビオトープにしていいのかという疑問がありますよね。結論から言うと、休耕田のビオトープ化には問題なく、各地に事例があります。ただし、農地を一時的にビオトープとして利用する建て付けなので、復田可能な状態を保つことがポイントです。

農家さんにOKをもらったら、農業委員会に「復田できる状態でやります」と話を通しましょう。利用形態が農地転用に当たらないことを確認するためです。たとえば、池を掘って水深1mにしてしまったら、もはや農地とは言えません。

農家さんが農地として補助金を受けていることもあるので、その範囲内の利用であることを確認する意味合いもあります。

休耕田ビオトープ開設のポイント
  • 休耕田ビオトープは法的にもOKで各地に実例がある
  • 休耕田ビオトープはいつでも復田可能にする
  • 農地転用に当たらないことを農業委員会に確認する

休耕田ビオトープの管理方法

畔の補修
畔の補修

休耕田ビオトープの管理は、水を張れば終わりではありません。陸地化の抑制と周辺の草刈りが重要です。

休耕田ビオトープには周辺から雑草が入り込み、植生遷移によって陸地化が進行します。1-2年目はいい感じの湿地!と喜んでいても、3-4年目には何割かが陸地化します。最終的に優占するヨシなどの大型多年草は、積極的に刈り込んだ方が良いでしょう。この辺は、年何度訪問できるかにもよります。

また日本の気候では、年数回畔周辺の草刈りが必要です。農家さんにやってもらう方法もありますが、ここは借りている側が積極的におこなうべきです。

草刈りはBefore/Afterがわかりやすく、周辺の農家さん含め「ちゃんと管理しているんだな」とアピールできるポイントだからです。我々の場合、借りている場所の両隣の田んぼ分も刈っています。

刈払機の利用に資格は不要ですが、キックバックによる事故も多いので、安全講習の受講をします。

制度的な位置づけと支援制度

農林水産省が出している「里地・里山ではじめる自然回復」という資料には、「休耕田ビオトープ型」「谷津田保全型」が挙げられているように、休耕田のビオトープ化は法的にも問題なく各地に実例があります。

また、農地の農業以外の機能に注目した「多面的機能支払交付金」という制度では、資源向上活動の一つに「遊休農地等のビオトープ」も明記されています。

農地は農地であって、宅地や駐車場にするには「農地転用」手続きが必要と聞いたことがある方もいるかもしれません。ではなぜビオトープがOKというと「休耕田(遊休農地)」の一形態として認められているからです。

高齢化や後継者不足で農地が休耕田になり荒廃農地になるプロセスのなかで、休耕田状態を維持するだけでも年数回の草刈りが必要です。しかし、先祖伝来の土地であるとか、藪化すると近隣に迷惑がかかる等で、草刈りだけして休耕田状態を維持している場所がたくさんあります。

休耕田が荒廃農地になるプロセス
休耕田が荒廃農地になるプロセス

こうした休耕田(遊休農地)があることは国も認識していて、荒廃農地になるよりはマシということで、「多面的機能交付金」や「中山間地域等直接支払制度」で支援しています。

食料・農業・農村基本計画(令和2年3月31日閣議決定)では、「荒廃農地の発生防止・解消等について、多面的機能支払制度及び中山間地域等直接支払制度による地域・集落における今後の農地利用に係る話合いの促進や共同活動の支援、鳥獣被害対策による農作物被害の軽減、農地中間管理事業による農地の集積・集約化の促進、基盤整備の効果的な活用等による荒廃農地の発生防止・解消に向けた対策を戦略的に進める。」とされたところです。
荒廃農地の発生防止・解消等:農林水産省

草刈りを負担に感じている農家さんも多いので、ビオトープ利用者が周辺の草刈りを行うことで、行政・農家・利用者3者ともメリットが生まれるというわけです。

その代わり、いつでも復田可能にする必要があって、返せと言われれば返さないといけない不安定な立場が、休耕田ビオトープの限界といえるでしょう。

休耕田ビオトープについて記載された資料・公的サイト

国や自治体のサイトに掲載された休耕田ビオトープ事例があります。休耕田をビオトープ化していいの?と聞かれたら、これらの資料を提示しましょう。

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https://gengo6.com/2025/06/23-11248/feed011248
大阪万博会場で“羽虫”が大量発生?現地でみた正体と有効な対策https://gengo6.com/2025/05/25-11092https://gengo6.com/2025/05/25-11092#respondSun, 25 May 2025 09:09:12 +0000https://gengo6.com/?p=11092

大阪万博会場で虫が大量発生と話題になっています。その正体は蚊柱でおなじみの「ユスリカ」。なかでも今回は海水混じりの所から発生する「シオユスリカ」であることが特徴です。4月に万博を訪問し現地でユスリカ見た様子や有効な対策に ... ]]>

大阪万博会場で虫が大量発生と話題になっています。その正体は蚊柱でおなじみの「ユスリカ」。なかでも今回は海水混じりの所から発生する「シオユスリカ」であることが特徴です。4月に万博を訪問し現地でユスリカ見た様子や有効な対策について、虫の知識がある立場から解説します。

万博のユスリカ問題まとめ

シオユスリカ発生源と目される海水プール「ウォータープラザ」

長くなりそうなので概略。万博でユスリカが大量発生して問題になっている。ユスリカは蚊と違って人を刺したり感染症を媒介したりしないが、大量発生すると「不快害虫」として対処が必要。夕方、蚊柱を作る習性がある。

ユスリカの種は何でどこから発生しているのかによって対処方法が変わってくる。今回は塩分耐性が高い「シオユスリカ」と特定された。汽水域や海岸の岩場など、塩分濃度が高い場所で発生する種類。

万博大屋根リングの下にある「つながりの海」「ウォータープラザ」は、工事中干していて、2月に海水注水をはじめたとの報道がある。これによって捕食者がいない広大な“海水プール”が誕生し、数世代した結果、現在の大発生にいたった可能性が高い。夕焼けや噴水ショーを見るため人が多い時間帯と蚊柱発生のタイミングが合うため、話題になりやすい構造。

現在一部で行われていると聞く陸上や淡水への剤散布はあまり意味がなく、発生場所である大屋根リング下の「つながりの海」「ウォータープラザ」に成長阻害剤をまくなどの対策が有効。

よく聞くコウモリの話

コウモリが集まってどうの言っている人がいますが与太話なのでスルーしてOK。ユスリカは野鳥もよく食べますが、万博会場の夢洲は、渡り鳥の中継地として有名でした(参考)。会場建設のため潰してしまい、向かいの埋立地「大阪南港野鳥園」にも野鳥はたくさんいますが、万博会場には来ていません。周りにもがあるか、深夜まで人が多すぎて近寄れないからです。野鳥も集まってこないのに飛翔力が劣るコウモリが集まるはずがありません。コウモリが大量に集まって問題になったイベント例もなく現実的な脅威は低いといえるでしょう。なので、この話はおしまいです。

万博で大発生しているユスリカ!現地で見たその様子とは

万博西ゲートで観客をむかえてくれるミャクミャク像。撮影スポットになっている。

私は2025年4月26日に万博に参加。現地でユスリカの大群を目にしています。その後、5月18日にも通期パス勢の友人に頼んで写真や、ユスリカのサンプルも確保しました。まずは現地で実際にどうだったのか、お伝えしましょう。

まずは4月26日。万博会場は大阪湾に面した埋立地のため、夕方から夜にかけて大屋根リングにのぼってきれいな夕日や噴水ショーを眺めるのが定番です。日没が1830頃だったので18時過ぎにリングにあがって海側を一通り歩いています。

会場左下辺りからエスカレーターで大屋根リングにあがっている所。赤い球体はシンガポール館

後で写真を見返した所、すでにこの時点でユスリカが写り込んでいます。赤い球体の真上あたりを拡大した所、25匹ほど写っているようです。

風景を撮った写真に映り込んでいたユスリカ

大屋根リングにあがると明らかにユスリカの蚊柱が立っていて、人々が手で振り払いながら歩いていました。当時は話題になっていなかった頃のため、ま〜新しい造成地ならそういうこともあるよね、程度の感想。

なお夕暮れ時には、こんな写真が撮れます。空が広い!水辺に反射する夕焼けがきれい!(だが波のない海水プールが後々問題を引き起こすことになるのである!後述)

万博会場の夕焼け。素晴らしい体験!

その後、ユスリカが話題となったため、通期パスを持っている友人に改めて現地の様子を撮ってきてもらいました。もちろん、ユスリカのサンプルも確保済。同定は難しいそうですが、専門家に送付済です。

運営側でも同定済とは思っていたものの、いつ結果が発表されるかわからず、また対策も始まっていると聞いていたため、確保が間に合って良かったです。さらなる状況証拠として、ウォータープラザ付近に大量にあるであろう羽化殻をチェックしたり、赤虫を観察・撮影したい所ですが、友人は一般人のため、そこまではお願いしませんでした。

あれだけ数がいるなら、岸辺見張っていれば羽化も観察できるのではないかなあ。

2025年5月18日1830頃、ウォータープラザ付近の大屋根リングで、ユスリカの大群が写っている所。

この写真には、プログラムによるカウントで2000匹ほど写っています。一箇所の撮影でこれですから、リング全体では万は確実、10万から数十万いるかもね?という印象。ユスリカは本来、ほかの生き物の餌となる弱い存在で、食べられまくっても子孫を残せる繁殖力を持っています。そこに捕食者だけいない環境ができると、爆発的に増えてしまうわけですね。

動画と同じ場からカメラで撮影したもの。空の染みはすべてユスリカ。

遠浅の海水プールという「つながりの海」「ウォータープラザ」の構造

虫の知識がある人ならまず「海から発生する種類って少ないんじゃないの?」と思うはずです。だから、私も最初混乱しました。

ユスリカは確かにウォータープラザ付近で大量発生しているが、万博会場には会場中央の「静けさの森」しか大きな水辺がありません。大きいと言ってもあの数が発生するような広さではありません。

また、「静けさの森」あるいは会場外の埋め立て地で発生しているなら、万博会場全体で問題になるはずです。でも、なっていません。

ところが、USJ開業の頃、埋立地からのシオユスリカ飛来対策を行った事例がTwitterで寄せられ、塩分耐性が高いユスリカが「つながりの海」「ウォータープラザ」から発生している可能性が高まりました。

朝日新聞報道によれば、リング外側の「つながりの海」32haとリング内側の「ウォータープラザ」3haは、工事中干されていて、2025年2月17日から海水を注入し、水深は1m。小学校の25mプールは25m x 12mなので、「ウォータープラザ」は小学校プール100個分相当の広さです。

動画でも堤防が写っていて、工事中干せるということは、物理的に区切られている閉鎖領域と考えられます。

万博会場に海水満ちる 「海を通じて世界とつながる」を表現:朝日新聞

シオユスリカの塩分耐性が高いと言っても、海水がまったく平気というわけではありません。川が海に流れ込む干潟、あるいは海岸の岩場の潮だまりなど、海と川、あるいは陸と海の境目のあいまいな領域(エコトーン!)、海水が薄まっているような所を好んで住む類です。

和歌山千畳敷の岩場

まとめ

万博会場の夢洲は埋立地ですが、渡り鳥がたくさん集まる中継地として有名でした。万博開催の都合上いたしかたなかったとはいえ、今となってユスリカを食べてくれる捕食者がいない状況になっているのは皮肉なことです。

ユスリカたちが数日しかない成虫寿命を燃やして蚊柱を作っている光景は、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」そのものとも言えるでしょう。

大阪万博会場・夢洲の「野鳥の楽園」が喪失危機 渡り鳥が飛来する湿地を埋め立てリゾート開発 | 環境 | 東洋経済オンライン

自然保護関係ではよく「人工的に作った場所だから生態系もなにもない」などと言われますが、渡り鳥であれユスリカであれ、住める環境だと思えば寄ってくるし、このように大発生することもあります。

「ウォータープラザ」に注入したのが淡水だったら(水道代節約?)とか色々な分岐点あったにしろ、会期は半年と限られています。うまいこと解決されることを期待しましょう。

賑わう万博会場
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https://gengo6.com/2025/05/25-11092/feed011092
青山のタワマン「いい感じのビオトープ作ったよ!」→ザリガニ放されて壊滅の顛末https://gengo6.com/2025/05/13-11037https://gengo6.com/2025/05/13-11037#respondTue, 13 May 2025 03:57:34 +0000https://gengo6.com/?p=11037

青山通りの都営住宅立ち並ぶあたりに、タワマンと併設された広大な森があります。小川が涼やかでいい雰囲気だったのですが、ザリガニが放されて水草やメダカ等の生き物は壊滅してしまいました。どうしてこうなった…。ということで現地を ... ]]>

青山通りの都営住宅立ち並ぶあたりに、タワマンと併設された広大な森があります。小川が涼やかでいい雰囲気だったのですが、が放されて等の生き物は壊滅してしまいました。どうしてこうなった…。ということで現地を見てきました。

クラス青山と公開空地の概要

場所は別に秘密ではないので書いてしまいますが、北青山の「ののあおやま民活棟」です。都営住宅跡地を再開発したもので、25階建てのタワーが核となっています。高級賃貸「クラス青山」にサービス付き介護施設、店舗・地域交流施設などの複合施設ですね。

本件の場合、約3,500m2という大規模緑地が特徴ですが、都市計画法の「再開発等促進区」の例外で、公共施設・有効空地を設けると建物の規制緩和を受けられるためでしょう。

緑地空間全体のデザイン監修に株式会社ランドスケープ・プラスの平賀達也氏、樹種選定のアドバイザリーに東京農業大学客員教授の濱野周泰氏の協力を得ながら、明治神宮など計画地周辺地域の潜在植生や生態系に基づいた外構計画を行い、多様な生物が持続的に生息できる豊かな緑地空間を創出しています。

ビオトープにザリガニが放されて壊滅と話題に

現地のオープンは2020年5月。たまたま2022年10月にいい感じに水草がそだったビオトープを見ています。その後2024年には現地にザリガニが放されて壊滅したという立て看板が出るようになり、2025年5月に現地見てきた所、以下の状況でした。

周りの森はいい感じに育っているだけに、ここだけ異様な感じがします。冬にかいぼりで干していたそうなので、今はその後生き残りがいるか確認している段階のようですね。

泥に覆われ沈黙したビオトープ。パイプはザリガニ駆除用のトラップ

なお、泥に覆われた底面を見て管理が悪い元々の水質に問題が〜などのコメントが寄せられているので補足します。アメリカザリガニは、水草を食べたり、の隠れ家をなくすために切る環境改変能力を持っています。

アメリカザリガニが入ると、こういう濁った色の水になることがよくあって、水生昆虫なども激減するので「ザリ色の水」などと呼ばれて嫌われています。ため池であれば水草のあるなしは衛星写真からも判別できたりしますので、アメリカザリガニには衛星で見えるほどの環境改変能力があると言ってもよいでしょう。

メダカやドジョウ・の話は微妙で、その辺で採ってきたり買ってきて入れると都内ではない系統のメダカや大陸系ドジョウ・ヌマエビが入ったりするのではと思いますが、その辺配慮されているかしらないので、軽く触れる程度にしておきます。

現地立て看板
木々が育って木陰を創出している
小川沿いの小道。だいぶ自然な感じに育っている

アメリカザリガニは条件付特定外来生物で野外放出は違法

誰でも立ち入れるビオトープが、アメリカザリガニ投入で壊滅、駆除したり再整備する予算もなくそのまま放置という事態は、あるあるではあります。閉鎖環境のようですから剤入れる方法もありますが、いずれにしてもまた投入されるかもしれないのに毎回リセットするのかという議論になるでしょう。

見出しで結論書いてしまいましたが、アメリカザリガニは生態系に多大な被害を及ぼす侵略的外来生物として、法規制で野外放出が禁止されています。お子さんが持ち帰ってきて飼いきれなくなったときは、親御さんが責任をもって殺処分するなど、野外に迷惑をかけないようにしてください。

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https://gengo6.com/2025/05/13-11037/feed011037
気になるauの衛星通信!フィールド電波ない問題の解決策になるかhttps://gengo6.com/2025/04/15-10979https://gengo6.com/2025/04/15-10979#respondTue, 15 Apr 2025 00:00:00 +0000https://gengo6.com/?p=10979

2025年4月に衛星とスマホの直接通信サービス「au Starlink Direct」がはじまると聞いて、勘違いしてしまった人が多そうです。野外のフィールドでは電波が入らないこともよくあり、衛星通信でスマホが使えれば便利 ... ]]>

2025年4月に衛星とスマホの直接通信サービス「au Starlink Direct」がはじまると聞いて、勘違いしてしまった人が多そうです。野外のフィールドでは電波が入らないこともよくあり、衛星通信でスマホが使えれば便利です。しかし、現状はSMSや位置情報の送信、テキストベースのGeminiなど、au Starlink Directでデータ通信はできないことに注意が必要です。

ちょうど、Starlink miniの導入を検討していて、衛星通信についてはチョットクワシイので解説します。

auの衛星通信「Starlink Direct」とは?

KDDIは2025年4月10日から「au Starlink Direct」というサービスを開始しました。これは、SpaceXのStarlink衛星を利用して、通常の携帯電話の電波が届かないエリアでも通信できるサービスです。

サービス開始時期と対応機種

サービスは2025年4月10日に開始され、iPhone 14シリーズ以降や特定のAndroidスマートフォンなど、計50機種が対応しています。特別なアプリやハードウェアの追加は不要です。

  • 対応機種:iPhone 14以降、Galaxy S22以降、Google Pixel 7以降など
  • 追加設備:不要(既存のスマートフォンでそのまま利用可能)
  • サービス提供:KDDIとSpaceXの提携によるもの

ということは、スターリンクで必要だったアンテナなしにどこでも通信可能ってこと?と夢が広がりますが…

えっデータ通信はできないの?解散!!

「電波が届かないところでもつながる」と聞くとすごそうですが、「au Starlink Direct」ではデータ通信できず、テキストベースの通信に限定されています。つまり、GoogleマップやTwitter、その他普段のアプリはほとんど使えません。解散!

できること

  • テキストメッセージ送受信
  • 現在地の位置情報共有※
  • AndroidでGeminiによる調べものなど※
  • 緊急地震速報/津波警報/Jアラート受信
  • ※テキストメッセージアプリ経由

できないこと

  • データ通信
  • 音声通信

なぜ今回のサービスではデータ通信ができないのか

衛星マークが表示されるのはちょっと格好いい

既存のスマホでOKなら、スターリンクの大仰なアンテナはなんだったのという話になります。そのあたりの仕組みをもう少し掘り下げてみましょう。

衛星が頭上を通過する数分間しか通信できない]

Starlink衛星は上空約550kmを周回していて多数の衛星で地球の全域をカバーする仕組みであることはご存じの方も多いでしょう。ここでピンと来た方もいると思いますが、低軌道で周回しているということは、一つの衛星がカバーできるエリアは小さくなります。一つの衛星が上空にある数分しか通信できないため、大容量のデータをやりとりすることが難しいのです。

Direct To Cell

スマホのアンテナでは高速移動する衛星を追跡できない

通常のスターリンクでは高速で上空を通過する衛星を次々切り替えて通信していますが、携帯のアンテナではそういう器用なことはできません。

また、衛星の数と密度の問題もあります。携帯通信可能な衛星は、携帯基地局を積み込んだ一部の衛星に限られています。将来、こうした衛星の密度が高まれば、データ通信も解禁される可能性があります。

FCCは2022年末、SpaceXに対して7,500基の第2世代Starlink衛星の配備を承認しました。このうち2,016基にDirect To Cellシステム(※スターリンク側のサービス名)をサポートする機器が搭載される予定です。衛星密度が高まれば、より安定したサービスが期待できます。

スマホの送信電力とアンテナ性能の限界

衛星通信では、上りと下り(ダウンロード)両方の通信が発生します。特に上りの場合、地上基地局なら数100mから1km程度で済む所、上空550kmの衛星まで電波を飛ばす必要があります。これは、既存の携帯にも可能なのでしょうか。

結論としては、送信の出力を上げるか、衛星側のアンテナが受信能力を上げる必要があります。

現状できるのはテキストメッセージのみ

これらの技術的制約から、現状ではテキストメッセージの送受信と緊急情報の受信のみに対応しています。テキストメッセージは数キロバイト程度の小さなデータであり、短時間の通信でも送受信が可能です。

まとめ

スターリンク回線を利用するauの衛星通信「Starlink Direct」では、通信量が少ないテキストベースのサービスに限定されています。音声通信やデータ通信はできないため、いわゆるスターリンク的なスマホ利用はできません。

しかし、スターリンクでは早ければ数年後にはデータ通信も解禁するとしていて、将来的には利用できる可能性があります。

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ジャンボタニシ農法とはなんだったのか?卵から天敵、駆除方法まで知っておきたい基本情報https://gengo6.com/2024/06/17-10789https://gengo6.com/2024/06/17-10789#respondSun, 16 Jun 2024 16:21:53 +0000https://gengo6.com/?p=10789

参政党のSNS投稿をきっかけに注目を集めた「ジャンボタニシ農法」。雑草を食べさせて除草する農法ですが、ジャンボタニシはすぐ地域全体に広がり稲を食害するため、今いない所に放すことは非常に危険です。本記事では、ジャンボタニシ ... ]]>

参政党のSNS投稿をきっかけに注目を集めた「ジャンボタニシ農法」。雑草を食べさせて除草する農法ですが、ジャンボタニシはすぐ地域全体に広がり稲を食害するため、今いない所に放すことは非常に危険です。本記事では、ジャンボタニシの生態や特徴、や生体の駆除方法、対策や天敵について詳しく解説します。

参政党発のジャンボタニシ騒動とはなんだったか

稲を食害することで有名なジャンボタニシ

2024年初頭、参政党の一部の支部や党員がSNS上で「ジャンボタニシ農法」を推奨する投稿をおこない、物議を醸しました。

ジャンボタニシは稲を食い荒らす。一度広まると根絶困難で、ジャンボタニシを放す様子や、「ジャンボタニシ農法を全国でやったらいい(参政党員)」などの的はずれな発言が批判を浴びました。

さらに「地域ぐるみで40年上やっています(参政党員)」などの事実と異なる発言もあり、該当JAが否定したり、農林水産省が注意喚起のTweetをする事態となっています。

  • 「ジャンボタニシ農法を全国でやったらいい(参政党員)」
    →農林水産省から新たに放飼しないよう注意喚起される
  • 「我が家は40年以上ジャンボタニシ活用して無農米作ってる(参政党員)」
    →今から40年前の1980年代はジャンボタニシが日本に入ってきた頃で、ジャンボタニシ農法はまだない。該当エリアで試されるようになったのは2000年ごろ。
  • 「地域ぐるみでJA福岡市が指導しました(参政党員)
    該当JAから完全否定される。「ジャンボタニシを除草のために水田に放つことや、ジャンボタニシを活用した除草を推奨している事実は一切ございません」

あまりの炎上に参政党は党としては推奨していないと軌道修正しましたが、反ワクチンやオーガニック・無農薬志向からの農薬批判など、非科学的な主張を繰り返してきたため、今後も要注意と言えるでしょう。

参政党のジャンボタニシ騒動に関する各種報道

SNSでの炎上に引き続き、全国ニュースでも報道される事態となりました。

除草目的の「ジャンボタニシ農法」とは?

ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)
ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)

話題の「ジャンボタニシ農法」ですが、実在する農法ではあります。ジャンボタニシの習性を利用して、水田の除草をおこないます。

「ジャンボタニシで無農薬農法!」と持て囃す向きもありますが、ジャンボタニシが蔓延してもう根絶できない地域で、なんとか活用できないかという苦肉の策であることに注意が必要です。

ジャンボタニシ農法を紹介しているサイトでも、ジャンボタニシがいない地域に新たに放すな、と注意書きが入っているのが普通です。

ジャンボタニシに雑草だけ食べさせる方法

ジャンボタニシは稲を食害するのに、どうやって雑草だけ食べさせるのか。それは、を食べるのは水面下だけという習性を利用するからです。

  • ジャンボタニシは、稲も雑草も区別せず食べる(大前提)
  • 田植え直後の苗は倒れたり水面下に芽があって食べられやすい

というわけでジャンボタニシの食害が発生します。

イクラのようなジャンボタニシの卵は有名ですが、実は餌を食べるのは水面下だけなんですね。そこで、田植え直後は水深を1cm等に低くして、苗を食べられないようにするのがジャンボタニシ農法です。稲が育った後に水位をあげれば、雑草だけ食べてくれるという仕組み。

  • ジャンボタニシは、水面下で餌を食べる
  • ジャンボタニシは、水上に登って産卵するが、登っては食べない

ジャンボタニシ農法の手順

以上をまとめると、ジャンボタニシ農法とは苗を植えた後の水位を調整することで、食害対象をコントロールする農法であることがわかります。

  1. 苗を植える
  2. 水深を1cm等に低くする。
  3. 苗の葉は水上にあるので食べられない
  4. 稲が十分育った後水位を上げると、雑草だけが食べられる

ジャンボタニシ農法は持て囃すものではない

これだけ覚えて帰って欲しいのですが、ジャンボタニシ農法をやりたいからジャンボタニシを放す、これはNGです。まして、新規就農する人がやることではありません。

なぜか。ジャンボタニシがいないところに新たに放流すると、水路をつたって地域全体に広がります。当然、周りの農家さんは大激怒です。農薬を減らしたい、自然農法がよい、その理想は結構ですが、自分の田んぼだけで済まないことを意識する必要があります。

また、cm単位の繊細な水位管理が必要で、失敗したら全滅もあり得ることを考えると、リスクが高すぎます。毎年ジャンボタニシに悩んでいて、その習性を活用しようという人がやるもので、経験が少ない人がやるものではありません。

ジャンボタニシの特徴

ジャンボタニシの見分け方
ジャンボタニシの見分け方

ジャンボタニシは、南米原産の外来種であり、日本の水田や水路に深刻な影響を与えることで知られています。ここでは、ジャンボタニシの生態や習性、生息域や天敵について解説します。

ジャンボタニシの生態と習性

ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)は、主に水中で生活する淡水巻貝です。南米原産で、1981年に食用目的で台湾から日本に持ち込まれました。全国500箇所も養殖所が設けられましたがその後放棄され、野生化しました。水田や水路、池などの淡水域に生息し、温暖な気候を好みます。

食性は雑食で、芽などのやわらかい植物を好みます。そのため、稲の苗が食害にあい、世界の侵略的外来種ワースト100、日本の侵略的外来種ワースト100などに選ばれています。

ジャンボタニシは旺盛にします。年数回産卵し、夜間に水際の植物の茎やコンクリ壁に登って卵を産み付けます。ピンク色の卵が集まった卵塊は2週程度で孵化し、幼貝は2ヶ月ほどで繁殖力を持ちます。

  • 淡水生の巻貝類の多くがコケや水底の沈殿物等を主食とするのに対し、本貝はそのものを摂食することが特徴
  • 水中にあるものしか食べることができず、若い稲の葉は水中に引き込んで食害する。

ジャンボタニシの生息域

ジャンボタニシは南米原産だけあって、冬季の死亡率は高いものがあります。14度以下では活動を停止し土中などで越冬しますが、暖冬や温暖化により個体数が増えたり、生息域が北上する傾向にあります。

沖縄・九州・中国・四国の他、温暖な太平洋側を中心に生息し、現在の前線は滋賀県や関東にあるようです。

ジャンボタニシの卵には毒があるって本当?

ジャンボタニシの卵には神経毒があるとされ、ピンク色の目立つ卵塊でありながら、食べる生き物はほとんどいないとされています。しかし、人間がこの毒を過剰に恐れる必要はありません。触った後は、手を洗う程度で十分です。

卵塊は水中に落とすと死にますが、孵化直前の白い卵は孵化してしまうので、物理的に潰した方がよいでしょう。

目立つピンク色をしたジャンボタニシの卵。数百個の卵塊が水上に産み付けられる。

ジャンボタニシの天敵は?

ジャンボタニシの卵塊は食べる生き物がいませんが、孵化した後の幼貝は鳥や魚、甲殻類など多くの生き物に食べられています。たとえば、アイガモやコイ、、クサガメ、ドブネズミなどが天敵として挙げられています。

しかし、水田にはジャンボタニシの天敵が少ないため、繁殖して増えてしまうという事情があるようです。

河川や池に普通に生息している多くの魚や甲殻類、カメなどはスクミリンゴガイの天敵です。私たちが試験した在来または帰化した46種の生物のうち、27種がスクミリンゴガイ(孵化貝)を捕食しました。

九州沖縄農業研究センター:スクミリンゴガイ | 農研機構

ジャンボタニシ対策の難しさ

ジャンボタニシの駆除は非常に困難。一度繁殖すると根絶が難しく、化学薬品や物理的手段による長期的な管理が必要になってきます。

  • 水路からの侵入防止(金やネット設置)
  • トラップによる誘引・捕獲
  • 水路での殺卵
  • 石灰窒素散布・薬剤配布
  • 冬期の耕うん(物理破壊&寒さにさらす)
  • 水路の泥上げ

ジャンボタニシやジャンボタニシ農法に関するFAQ

ジャンボタニシはいつどうやって日本に入ってきたの?
ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)は1981年に食用目的で台湾から日本に導入されました。その後、各地の養殖場が廃れるとともに野生化しました。
ジャンボタニシ農法とは?
ジャンボタニシ農法とは、草を食べる性質を利用して除草目的でジャンボタニシを使う農法です。ただし、今いない地域に新たに放つことは、地域の稲作を破壊し、世間の大きな非難を浴びることになるでしょう。
タニシとジャンボタニシの見分け方は?
大きさからの判断は難しく、オオタニシなど在来種が間違って駆除される例も見かけます。卵塊の有無で生息を判断したほうが簡単です。ジャンボタニシは1段目の殻が極端に大きく、2段目以降極端に小さくなる殻の形から判別可能です。
ジャンボタニシの卵には毒があるって本当?
本当ですが、触れた後の手を洗う程度で十分です。人間の被害事例は聞いたことがありません。
ジャンボタニシの卵は水に落とすと良いって本当?
本当です。ただし、白い卵は孵化直前なので物理的に潰した方がよいとされています。
ジャンボタニシには寄生虫がいるって本当?
本当です。ジャンボタニシには寄生虫(広東住血線虫)がいます。生あるいは加熱不十分で食べると体内に入るので、手袋をして触ったり、火を通してから食べるようにしましょう。

まとめ

ジャンボタニシ農法は、ジャンボタニシの雑草食性を活用した除草方法ですが、稲への被害や外来種としてのリスクが高く、積極的に各地へ広げるような農法ではありません。南米原産のジャンボタニシは、温暖な気候を好む淡水巻貝で、雑草や稲の若苗を食べます。繁殖力が強く、ピンク色の卵を産み付け、天敵には鳥や魚、カメなどがいます。駆除には化学薬品や物理的手段が必要で、一端侵入すると根絶は困難です。

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https://gengo6.com/2024/06/17-10789/feed010789
2024年4月から東京都でガサガサが合法に!内水面漁業調整規則が改正されるhttps://gengo6.com/2024/04/01-10734https://gengo6.com/2024/04/01-10734#commentsMon, 01 Apr 2024 09:07:11 +0000https://gengo6.com/?p=10734

タモ網を用いるガサガサは一般には合法ですが、実は東京都では違法でした。河川等の漁は各都道府県の「内水面漁業調整規則」の規制を受けますが、東京都ではタモ網を含む押し網自体が禁止されていたためです。2024年4月からこの規制 ... ]]>

タモを用いるは一般には合法ですが、実は東京都では違法でした。河川等の漁は各都道府県の「内水面漁業調整規則」の規制を受けますが、東京都ではタモ網を含む押し網自体が禁止されていたためです。2024年4月からこの規制が解除され、名実ともに東京都でもガサガサが合法となりました。

東京都の「内水面漁業調整規則」が改正され、2024年4月からガサガサが合法になった

都から発表があった通り、2024年4月から、東京都でもタモ網によるガサガサが明示的に合法になりました。都の発表でわざわざ「可能になります」と書いてあるということは、今までは違法だったのです(!!)。

改正内容

東京都内水面漁業調整規則第23条の漁具漁法の制限及び禁止の項目から押網を削除します。

これにより、従来は都内の内水面漁場で利用が禁止されていた、たも網などを利用したいわゆる「ガサガサ」と呼ばれる漁法が可能となります。

漁業調整規則改正|農林水産|東京都産業労働局

東京都では漁業規制の関係でガサガサが違法だった問題

普段あまり意識されていませんが、河川等のガサガサで使える漁具は、各都道府県の「内水面漁業調整規則」の規制を受けます。本格的になれば漁具に近づくからです。

「内水面漁業調整規則」の内容は都道府県によって異なります。タモ網については、規制がないか富山県のように30cm等大きさで規制している所が多いなか、東京都ではタモ網自体が禁止されていたんですね。
※押し網とタモ網を独立して記述している都道府県もある

東京都の「内水面漁業調整規則」(〜2024/3/31)

東京都の解釈では、タモ網は「内水面漁業調整規則」で禁止されている「押し網」に含まれているものの、違法状態ではあるが実際に摘発された例はないという状態でした。

このことは以前から知られていましたが、報道で取り上げられたことも改正の契機になったのかもしれませんね。

だが、このガサガサは、都の内水面漁業調整規則で禁じている「押し網」にあたるという。違反すると、6カ月以下の懲役や10万円以下の罰金といった罰則もある。都水産課は「魚資源の保護のため」と説明するが、実際に摘発された事例は「知っている範囲ではない」(担当者)という。

タモ網でガサガサは密漁? 東京都の独自規制、罰金も:朝日新聞デジタル
三谷釣漁具店のガサガサ網 【三谷釣漁具店】丈夫なのは当たり前!大きなガサガサ網で最強になれる件 ]]>
https://gengo6.com/2024/04/01-10734/feed110734
ムネアカハラビロカマキリの竹箒拡散説についてhttps://gengo6.com/2024/01/01-9104https://gengo6.com/2024/01/01-9104#respondMon, 01 Jan 2024 12:30:47 +0000https://gengo6.com/?p=9104

日本では今、在来のハラビロカマキリが急速に外来のムネアカハラビロカマキリに置き換わっていることが話題となっています。生息環境が競合する上、ムネアカハラビロカマキリの方が大型です。生息域が広がっている理由として、中国から輸 ... ]]>

日本では今、在来のハラビロカマキリが急速に外来のムネアカハラビロカマキリに置き換わっていることが話題となっています。生息環境が競合する上、ムネアカハラビロカマキリの方が大型です。生息域が広がっている理由として、中国から輸入された竹箒(ほうき)に鞘 (らんしょう)が付着していることが指摘されています。

カマキリにはくわしくありませんが、せっかく勉強した分をまとめておきます。

日本各地で侵入が確認されるムネアカハラビロカマキリ

ムネアカハラビロカマキリは、中国大陸原産の侵略的。2010年に初めて確認されると、現在では20都道府県以上で記録されています。数年で在来のハラビロカマキリを置き換えてしまうなど、生息域の拡大速度と在来種への影響の両面で注目されている外来種です。

ムネアカハラビロカマキリの学名

ムネアカハラビロカマキリの学名はHierodula chinensis。類似種が多く、当初Hierodula membranaceaあるいは、Hierodula formosana、Hierodula venosaなどが提唱されました。2021に広島産で分子系統解析がおこなわれ、chinensisが示唆され、現在はHierodula chinensisであろうということになっています。

※地域個体群によってはchinensis以外の場合もあるかもしれません。
※過去標本から、2000年ごろには侵入がはじまっていたとされます。

ハラビロカマキリとムネアカハラビロカマキリの違いと見分け方

在来のハラビロカマキリは、本州・四国・九州・南西諸島に生息する中型のカマキリで、体長は50mm〜70mm。オオカマキリなどと比べ、羽根に白い斑があり、胸が短く腹部がその名の通り幅がある体型で区別されます。また、草むらではなく、樹上性が強い生態です。

一方、ムネアカハラビロカマキリは体長60mm〜80mmと在来種より大型です。

ハラビロカマキリとムネアカハラビロカマキリの見分け方としては、胸が長めで全面赤みがかるムネアカハラビロカマキリと、黄色に一部黒斑が入るハラビロカマキリという違いがあります。

また、前脚の鎌の部分に、大きな白い突起が3つあるハラビロカマキリと、小さな突起が8-9個あるムネアカハラビロカマキリという違いは、見分けるのにわかりやすいポイントです。

ムネアカハラビロカマキリ
胸の腹側が赤く、鎌に小さな突起が並ぶムネアカハラビロカマキリ

以下の写真では、羽根の白い斑、胸が短い様子など、オオカマキリとは違う特徴が写っています。

ムネアカハラビロカマキリ
胸の腹側が赤くならず、一部に黒斑があるハラビロカマキリ。鎌の二の腕部分に大きな突起が3つ並ぶ

また、ハラビロカマキリとムネアカハラビロカマキリでは、卵鞘 (らんしょう)の形状にも違いがあることが知られています。

平べったく全面付着しているハラビロカマキリの卵に対し、ムネアカハラビロカマキリでは表面が白っぽくビロード状、下部が枝から離れるわかりやすい特徴に注目しましょう。

ムネアカハラビロカマキリの侵入経路は輸入された竹箒?

公園の竹箒

ムネアカハラビロカマキリの問題は、確認されだして10年程度で20数都道府県という拡散速度の速さと、在来種を駆逐する侵略的外来種の側面です。

自然拡散の場合、侵入地から徐々に広がっていく拡散経路を示すのが普通です。しかし、ムネアカハラビロカマキリでは各地で同時多発的に侵入が記録されています。また、確認地点が点在していて、植樹由来だけでは説明できない要素がありそうでした。

これについて、中国から輸入された竹箒(ほうき)由来という指摘が2018年にされています。論文筆者が勤務する多摩動物公園や、ホームセンターでチェックした数百本の竹箒からは3%程度の卵鞘の付着が確認され、孵化したはムネアカハラビロカマキリだったとのこと。

これらの竹箒は中国杭州産で、一時学名とされたHierodula venosaは生息せずHierodula chinensisはいるエリアであることも、その後の情報と矛盾しません。

また、公園などの整備に使われる竹箒由来なら、同時多発的に各所で見つかっていることの説明も可能です。

竹箒から確認されたカマキリの卵

ムネアカハラビロカマキリ竹箒由来説は虫好きに知られるようになり、各地で実際の確認例があります。
※ムネアカハラビロカマキリと確認していないものもありますが、竹箒に付着している例

ムネアカハラビロカマキリに関するFAQ

ムネアカハラビロカマキリは侵略的外来種ですが、今の所は特定外来生物等の法規制種ではありません。したがって駆除等の対象ではありませんが、在来種を駆逐することが知られているので、動向が注目されています。

ムネアカハラビロカマキリは外来種?

外来種です。類似種が多い分類のため、中国原産のHierodula chinensisを中心に複数種いる可能性があります。

ムネアカハラビロカマキリは特定外来生物?

特定外来生物ではありません。しかし、侵入地点ではハラビロカマキリが姿を消すことから、侵略的外来種としての側面を持っています。

ムネアカハラビロカマキリを見つけたら?

法規制対象ではないため、特に駆除の対象ではありません。未記録の県であれば専門家に報告するのもよいでしょう。
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https://gengo6.com/2024/01/01-9104/feed09104
シマゲンゴロウの飼育と餌、生息場所https://gengo6.com/2023/10/07-10630https://gengo6.com/2023/10/07-10630#commentsSat, 07 Oct 2023 13:19:16 +0000https://gengo6.com/?p=10630

シマゲンゴロウは特徴的な模様を持つ人気種。近年激減した県も多いようです。生息環境は浅く開放的な水面。幼虫はオタマジャクシを好むものの、冷凍アカムシを餌に成虫まで飼育可能。 目次 特徴的な模様をもつ人気種「シマゲンゴロウ」 ... ]]>

は特徴的な模様を持つ人気種。近年激減した県も多いようです。生息環境は浅く開放的な水面。はオタマジャクシを好むものの、冷凍アカムシをに成虫まで可能。

特徴的な模様をもつ人気種「シマ

シマゲンゴロウの学名はHydaticus bowringii。体長は13-14mm。前胸背は黄褐色。腹側は赤褐色。上翅は光沢ある黒をベースに中央に一対の黄褐色の斑紋、左右に2本ずつ縦縞を持ちます。一目でシマゲンゴロウとわかる個性的な種です。

シマゲンゴロウ
水田にたたずむシマゲンゴロウ
シマゲンゴロウの2齢・3齢幼虫と成虫

、コシマゲンゴロウ、が普通種とするならば、それよりはレア。元々全国に分布する種ではないが、北陸や九州上半分など、絶滅危惧I類になっている都道府県も多いことが目をひきます。

国の絶滅危惧カテゴリーでは準絶滅危惧種だが、各都道府県の状況を見ると、実質的には絶滅危惧II類に近いと言えるでしょう。

日本のレッドデータ検索システム

シマゲンゴロウの生息環境

シマゲンゴロウ幼虫はオタマジャクシを好むことや、成虫が上陸越冬する習性で知られます。これらが示しているのは、豊富なオタマジャクシ、上陸できるコンクリでない護岸、成虫が越冬できる周辺の林等、シマゲンゴロウの生活環を構成する周辺要素が欠けると、いなくなってしまうだろうということです。

当然ながら、ほかの水生昆虫同様、開発や耕作放棄、農やアメザリなどの侵入なども減少要因となります。急速に進む中間山地の耕作放棄が、残っていたシマゲンゴロウ産地の減少に影響していることは確かでしょう。

シマゲンゴロウが生息する水路
シマゲンゴロウの新成虫が集まっていた水路

シマゲンゴロウ成虫の餌や飼育方法

シマゲンゴロウ成虫の飼育方法は、その他のゲンゴロウ成虫の飼育と同じでOK。餌はコオロギや冷凍アカムシ、肉食魚用のペレットなど、特に好き嫌いはないようです。

ただし上陸越冬するので、11月頃には湿らせた水苔を入れたタッパーに入れて冷暗所に保管するとよいでしょう。水中越冬でもいけるのではと思いますが、試していません。田んぼの周辺での生活に適応して、水がない時期は上陸する道を選んだのかもしれません。

シマゲンゴロウ幼虫の飼育

シマゲンゴロウ幼虫は、中央にはっきりした白線を持ちます。また大顎の湾曲が強く、全体にがっちりした体格の印象です。

オタマジャクシを好むことから、関東ではオタマジャクシが多い6月頃にを終え、7月からは新成虫が見られます。

シマゲンゴロウ3齢幼虫

飼育下では「こだわりあかむし」のみで成虫にできます。

シマゲンゴロウ幼虫の成長過程

10/4 シマゲンゴロウ初齢幼虫出現

モンジ幼虫に混じって、シマゲンゴロウ幼虫も出現。モンジ初齢と比べるとお尻が細長く、頭が逆三角形。餌は、1日2回冷凍アカムシを5匹ほど与える。モンジよりは食欲少なく、食べ残すことも多い。

シマゲンゴロウ初齢幼虫
10/7 シマゲンゴロウ2齢幼虫の出現

3日ほどで脱皮して2齡幼虫が出現。引き続き、1日2回冷凍アカムシを与える。5-10匹程度与えれば十分。

シマゲンゴロウ2齢幼虫
3齡幼虫

3齡幼虫になると、シマゲンらしい中央の白い線がはっきりする。同時に飼育しているモンジが冷凍アカムシだと死亡率高いため、餌は冷凍コオロギに切り替えた。普通によく食べる。

10/17 シマゲンゴロウ終齢幼虫の上陸

餌を食べなくなり、上半身の内蔵が白く空になると、上陸が近い。水面近くで暴れたり、水面から頭を出したりする上陸仕草を見せるようになったら、上陸させてもよい。

蛹室を作るシマゲンゴロウ幼虫

シマゲンゴロウ幼虫は、土の表面に蛹室を作るので、土の深さは必要ない。100均の一番小さなタッパーにピートモスを入れる。幼虫は一部が容器の蓋に付くような蛹室を作るので、蛹室の場所はわかりやすい。後はたまにチェックして、新成虫が現れるのを待つ。

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https://gengo6.com/2023/10/07-10630/feed210630
新宿御苑でカブトムシが大発生!!のなぜhttps://gengo6.com/2023/08/13-10576https://gengo6.com/2023/08/13-10576#respondSun, 13 Aug 2023 05:48:04 +0000https://gengo6.com/?p=10576

都内でカブトムシが大発生と聞いて見てきました。新宿御苑のあちこちで複数個体が群がる樹液酒場を観察できてよかったです。アクセスよく入場料も安いので、親子の自然観察におすすめ。御苑には元々カブトムシが生息していますが、なぜ大 ... ]]>

都内でカブトムシが大発生と聞いて見てきました。新宿御苑のあちこちで複数個体が群がる樹液酒場を観察できてよかったです。アクセスよく入場料も安いので、親子の自然観察に。御苑には元々カブトムシが生息していますが、なぜ大発生しているか、その理由を考察します。

新宿御苑でカブトムシが大発生!

どうも今年は都内のカブトムシが多いようです。都心のオアシス新宿御苑でも「一生分見た!」「あちこちいた」などの声があり、私も見てきました。園内のあちこちに樹液が出ている木があって、群がるカブトムシやクワガタが観察可能。

通路沿いの木に普通にいるので、散歩しながら探していけば見つかります。虫にくわしくない親御さんや小学生くらいのお子さんを連れて行くのにも安全・安心でおすすめ。

2023/08/12 11時。樹液酒場にカブトムシ、クワガタのメス、カナブン、キイロスズメバチなどが集まる様子。

カブトムシには夜行性の印象ありますが、日中でも活動している個体がいます。

日中もカブトムシを観察できる

新宿御苑でカブトムシ・クワガタを探すコツ

新宿御苑でカブトムシ・クワタガタムシが観察できるのは、大雑把に大木戸門側の「玉藻池」の東側か、自然観察用に整備された「母と子の森」あたりです。「母と子の森」の方が、カナブンなどたくさん集まっている木があります。

カブトムシの観察スポットは書くと乱獲につながります。そのため、具体的に書くのを避けるのが一般的です。今回の場合、新宿御苑は採集禁止なので大丈夫でしょう。

なお、虫かごやを持っていると入れませんので、ご注意ください。樹液が出る木の周辺には、採集禁止の案内も追加されています。無視しないように。

新宿御苑の動植物は採集禁止

新宿御苑の営業時間やアクセス

新宿御苑の営業時間は時期によって変わります。〜8/20までは朝9時〜19時(入園は1830まで)です。入場料は大人500円中学生以下無料と家族連れにもやさしい料金体系。

入園案内 : 新宿御苑 | 一般財団法人国民公園協会

日本庭園や広大な芝生広場もあるので、大人の散策にもおすすめ。園内はよく整備されていますが、それなりに歩くので暑さ対策は必要です。最寄り駅は千駄ヶ谷駅・新宿三丁目駅・新宿御苑駅あたり。

新宿御苑の芝生広場

最近また整備されて、飲食できる所も数か所設けられています。せっかく新宿伊勢丹近くなので、帰りにその周辺で食べていくのも良いでしょう。

小綺麗な売店&休憩所

なぜ新宿御苑でカブトムシが大発生するのか

新宿御苑は内藤藩の大名屋敷が由来です。明治維新後、宮内庁所管などを経て戦後から一般公開されています。そういう経緯で、新宿御苑には昔からカブトムシ・クワガタが生息していたと考えられます。

ただし、都会なので放虫やその子孫も混じっている可能性が高いです。

次の疑問はなぜ今年はカブトムシが大発生しているのか。以前こんなに話題になったことはなかったと思います。その理由として考えられるのは、カシノナガキクイムシと堆肥です。

カシノナガキクイムシが原因で一時的に樹液が出ている

そもそも、園内の通路沿いに何本も樹液が出ている木があるのがおかしいんですね。人目につくところにカブトムシが集まっているから見つかりやすいという事情があります。その原因は、ナラ枯れを引き起こすカシノナガキクイムシ(カシナガ)です。

カシノナガキクイムシに食害されると、彼らが持ち込む「ナラ菌」がして樹勢が衰え、最終的に枯れてしまいます。これが「ナラ枯れ」で、全国的に問題になっています。

4-5mmの小さな虫が穴をあけて、糞と木屑が混じった「フラス」を排出します。食害が進行する際に一時的に樹液が出るため一時的にが増えたり、カブトムシが増えたように見えている可能性があります。

下記報道によれば、首都圏のナラ枯れ被害は3年前の約20倍に急増しているとのことです。

「ナラ枯れ」対策設備に被害 カブトムシハンター妨害か 「子どもの夢壊すな」抗議も

新宿御苑では何本も食害され、枯れている木も見受けられました。カシノナガキクイムシは大きく育った木を好むため、そういう年代の木が増えたことも関係あるでしょう。

カシノナガキクイムシによる食害
カシノナガキクイムシによる食害

園内の整備にともなう堆肥からの発生

実はカブトムシは、人間との関わりが深い種です。里山を整備し、腐葉土を作るなかでそれを利用してきた側面があります。

実際、新宿御苑でも剪定して落とした枝や倒木などの発生材をチップ化し、1-2年発酵させた後、園内にまいて再利用しているとのことです。こうした堆肥置き場は、カブトムシが発生する場所となります。

発生材をチップ化して再利用しています : 新宿御苑 | 一般財団法人国民公園協会

NHK「ダーウィンが来た!」の調査によれば、近年木材チップの再利用が進んだのには数十年前の「廃棄物処理法」の影響があるとのこと。従来野焼きで処理されていたものが産業廃棄物扱いとなり、費用節減のため堆肥化による再利用が進んだという話です。

カブトムシがシマトネリコに大集結!ある「法改正」が引き金だった…その「衝撃の理由」(田所 勇樹) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)

大量のカブトムシが見られるのは一時的な可能性が高い

カブトムシの大発生のなぜ、で見てきたように、木材チップの堆肥化による個体増もあろうと思いますが、ナラ枯れの進行は深刻です。今は一時的に樹液が出ていても、数年で完全に枯れ園内の見やすい所にある木がなくなってしまう可能性は高いと思います。

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https://gengo6.com/2023/08/13-10576/feed010576
ミンミンゼミ、隅田川を渡る。七不思議の一つ、ついに解消されるhttps://gengo6.com/2023/07/29-10531https://gengo6.com/2023/07/29-10531#respondSat, 29 Jul 2023 06:22:10 +0000https://gengo6.com/?p=10531

東京のセミ分布で注目されている地域差の話はご存知でしょうか。浅草近辺、隅田川両岸の隅田公園のうち、台東区側にはミンミンゼミいるが、対岸の墨田区側にはいない謎。一説によれば、東京大空襲で焼き尽くされ一旦絶滅、台東区側は上野 ... ]]>

東京のセミ分布で注目されている地域差の話はご存知でしょうか。浅草近辺、隅田川両岸の隅田公園のうち、台東区側にはミンミンゼミいるが、対岸の墨田区側にはいない謎。一説によれば、東京大空襲で焼き尽くされ一旦絶滅、台東区側は上野などから再進出したが、アブラゼミより飛翔力が弱いミンミンゼミは隅田川を渡れないという考察も。今夏、墨田区側にもミンミンゼミが再進出したことを確認したので報告します。

東京に住むセミとその分布

軽く調べた程度ですが、東京には6種類のセミがいるとされています。アブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミ、クマゼミ、ヒグラシです(吉野,2008,2009)。アブラゼミは全域に分布し個体数も多く、ミンミンゼミが続くとされます。

実家がある静岡市では、クマゼミが優先でミンミンゼミは丘陵・標高ある場所にいるイメージでした。東京に来たら、アブラゼミ優先で平地の公園でもミンミンゼミが普通にいるので、、はじめは違和感覚えたものです。

なお東京にもクマゼミはいますが、散発的な分布のため、植栽等に混じって入ってきたものが多そうです。

東京ではアブラゼミが優占種

ミンミンゼミは隅田川を渡れない?隅田公園両岸で異なる分布の謎

冒頭で触れたミンミンゼミ隅田川を渡れない説。これは、杉並で知られる須田孫七さんが、朝日新聞で語った話が元になっています。掲載されたのは2009年8月13日夕刊「アブラゼミ戦火の記憶」。内容はネットに転載されたものが見られますが、著作権の問題があるのでここでは触れません。

低地(墨田区)ではアブラゼミ1種が優占種となっているということが明らかになった。その理由としては須田氏の次のような説もある。

その理由は東京大空襲との説である。(1)大空襲で地域の昆虫のほとんどが全滅。セミのも焼き尽くされた 。(2)復興後、他の昆虫の多くは植樹や河川敷を利用して木々にとりつくなど生態系を戻したが、木とその根元の地中をすみかとするセミは、雌雄ともに飛行距離が比較的長いアブラゼミが、 焼け残った場所からたどり着くにとどまったとされている。須田氏は、空襲でいったん地域のセミが全滅し、復興後も川と急速な宅地化により、アブラゼミ以外のセミが公園にたどり着けていない可能性がある(須田、2009)という指摘である。

東京の低地におけるセミの分布の解明

各種調査で、低地の墨田区ではアブラゼミが圧倒的優先であることがわかっていますが、それを象徴する場所が隅田川両岸に広がる隅田公園です。生き物系イベント開催地として知られる東京都立産業貿易センターの裏あたり。

隅田公園台東区・浅草側にはミンミンゼミがいるのに、墨田区・スカイツリー側にはいない。ほぼ同じ環境なのになぜだろう、という話です。

墨田区側隅田公園は、水戸徳川家の下屋敷由来で、伊達政宗から伝わった名刀燭台切光忠が関東大震災で被災したことで知られます。その後、後藤新平の発案で浜町公園・錦糸公園と並び震災復興公園として整備されました。

隅田川を隔ててミンミンゼミ分布が異なる不思議

墨田区側の隅田公園はじめじめした感じの暗い公園なイメージでしたが、オリンピックを前に整備され、常緑の芝生が美しい開放的な公園に生まれ変わっています。リニューアル後の2020年夏に数時間滞在した所では、アブラゼミしかいませんでした。以来、注目して通りがかったときには気にしていました。

芝生の緑が鮮やかな隅田公園(墨田区側)

2023年、墨田区側隅田公園でもミンミンゼミの鳴き声を確認

先日車で通りがかった所、ミンミンゼミの鳴き声を確認、数日再訪して両日ともミンミンゼミが鳴いていることを確認しました。つまり、ついにミンミンゼミが隅田川を渡ったのです。以下のの神社は墨田区側隅田公園の一角にある牛嶋神社です。

※補足
台東区側ではなんとクマゼミの鳴き声も確認しました。足立区あたりの公園にいることは聞いていたのですが、浅草にもいるのですね…。ただし、個体数は少ないようでアブラゼミの方が優占しています。

考察と疑問

さて、隅田川を隔てるだけでミンミンゼミ分布が変わる謎について。私は飛翔力がアブラゼミとミンミンゼミでどれだけ違うか把握していません。また、物資や車に紛れて移動するものもあるので、隅田川だけで説明できるのかは疑問です。実際、墨田区両国の旧安田庭園でもミンミンゼミの鳴き声は確認しています。

また、隅田公園から近い墨田区役所そばの首都高付近でもかなりの合唱が聞かれました。元々個体数は少ないものの生息していて、観察量・機会が少なかった可能性があります。須田氏の指摘と同時期に行われた調査では、台東区側と墨田区側で説明が必要な大差はあるものの、隅田側でも少数ミンミンゼミが確認されています。

東京の低地におけるセミの分布の解明

一方、低地の墨田区はアブラゼミ優占地として知られ、ほかのセミは少ないことから、元々少なかった種が空襲で一旦地域絶滅した可能性はあろうと思います。その象徴が、隅田公園だったということなのでしょう。

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https://gengo6.com/2023/07/29-10531/feed010531