数ヶ所で湿地の面倒を見ていますが、私の場合ガマ・ヨシは見つけ次第刈っています。「なんでそんなにガマ・ヨシを目の敵にしているんですか?」と聞かれるので、その理由を整理しておきます。大きな河川や湖と違って、休耕田的な環境は驚くほど早く陸地化します。開放水面を維持するため、ガマ・ヨシが手に負えなくなる前に刈り込んだ方が良いのです。






ガマ・ヨシ群落管理の必要性
ガマ・ヨシ群落の一般的なイメージはどうでしょうか。最近では水質を改善する存在として、ヨシ原を意図的に再生するような話もあるようです。一方、休耕田や小さなため池などの浅い止水域では、以下のような問題を引き起こします。
また、2-3mに達する大型抽水植物が枯れて堆積すると富栄養化・陸地化が進行し、最終的に水生昆虫も姿を消します。
こうした環境の激変は早いと数年で起きるため、植生遷移の初期状態を維持したいなら、積極的な介入が必要です。具体的には定期的に刈り取りや耕起などを行います。
地下茎で増える!ガマの繁殖戦略
休耕田ができると1-2年目は生き物の数が増え“いい感じの湿地”になるのですが、数年後訪れると一面ガマやヨシに覆われて網も入れられない、そんな経験がある方も多いでしょう。こういう休耕田は最終的に陸地化し、さらに柳などが生えてきて最終的に森に還っていきます。いわゆる「植生遷移」です。


ある実験では、休耕田をビオトープ的に湛水管理する場合、3・4年目に大型の抽水植物が急増するので、3年目には刈払いと耕起が必要としています。
この現象は、椅子取りゲームとして考えるとわかりやすいでしょう。毎年ヨーイドン!で水面という限られた資源を奪い合うゲームです。多年草は冬の間蓄えた栄養を元にスタートしますから、1年草より有利です。あるいは、最初から椅子に座った状態で次の椅子も奪いに行くことも可能です。


では、ガマの繁殖戦略を元に実際どういうことが起きるか見ていきましょう。種と地下茎両方で増える点は、ガマ・ヨシ共通の繁殖方法です。
ガマと言えばソーセージのような穂が有名です。数十万個の種が綿毛となって拡散します。したがって、管理する湿地周辺のガマは種をつける前に刈る必要があります。
※谷間など、湿地周辺だけ刈れば侵入抑えられる場合。
次に、ガマは種もつけますが地下茎で株を増やすほうがメインです。この地下茎が厄介で、刈っても再生したり、株が大きくなると爆発的に面積を広げる原因になります。複数回刈って徐々に弱らせたり、耕起して地下茎を寸断したり、除草剤で地下部分も枯らしたりなどの対策が必要です。


ガマ・ヨシ群落の管理方法は工数との兼ね合いで決まる
ご家庭のビオトープやご近所の湿地の場合、どうとでも管理できるので神経質になる必要はありません。増えすぎたら刈り込めばよいだけです。
一方年1-2回しか行けない、あるいは遠方の場合は、私のようにガマ・ヨシ見つけたら刈り込むくらいの積極的な介入が必要です。現地に着いて初めて大規模な草刈りが必要となっても、道具その他手配が間に合わないからです。草刈り機を借りられたとしても、田んぼ1枚分の草を陸揚げとか、一人でできる作業量ではありません。
小さな湿地の場合、将来的な工数を最小化するために、根堀りを含めた根絶に近いガマ・ヨシ管理も一つの方法でしょう。
生息地ネットワークという考え方
最後に補足として、私がメンテしている湿地の多くは、周りにも複数の生息地がある自然豊かな場所です。孤立した生息地なら劇的な変化は避けるべきですし、もっと慎重なアプローチが必要でしょう。
どういう管理を行うかは、そうした周辺環境や利用種全体も勘案して決める必要があります。

