日本最大の水生昆虫タガメの生態や、タガメが減った原因、タガメに似ている種や海外のタガメなど、タガメに関する広い話題について。
タガメの雑学
ネットには、タガメ飼ったことないくせに、という雑な記事が多いので、気づく範囲で正しい情報を載せています。タガメに刺されると毒があるかなど。タガメは全国的に減少していて、一部のエリアを除いて探さないと見つからない種なので、刺される心配などは不要です。
タガメの種類や形態
タガメは日本最大の水生昆虫ですが、世界にはさらに大きなタガメがいます。世界最大のナンベイオオタガメ、アフリカにいるタガメモドキ、身近なものでは昆虫食で使われるタイワンタガメ、などです。
また、タガメに似た水生昆虫として、コオイムシ、タイコウチ、ミズカマキリなどが挙げられます。これについては「世界には…」の記事後半で触れています。
売買・飼育禁止?タガメの法規制
2020年2月に、タガメが種の保存法「特定第二種」に指定され、販売・頒布目的の陳列・広告、譲渡し、捕獲・採取、殺傷・損傷、輸出入等が原則として禁止されました。
従来の「国内希少野生動植物種」指定では、研究・調査目的でも許可が必要など使い勝手が悪いという声もあり、里山に住む身近な種の指定が増えるとどうか、という課題もあり、今回「特定第二種」が新設されたものです。
特定第二種の特徴は、販売・頒布目的の禁止で乱獲を防ぎつつ、研究や趣味目的の捕獲・飼育はOKとすることで使い勝手を良くしています。特定第二種の新設後初めての指定となった、タガメやトウキョウサンショウウオは、制度の認知や効果測定に適した象徴的な種、ということになりそうです。
農薬や街灯などタガメの減少要因
タガメは1950年代までは都市近郊でも普通に見られる種でしたが、1980年には各地で地域絶滅が報告されるなど、急速に数を減らしました。
タガメの場合、開発にくわえ農薬と街灯も大きな減少要因として挙げられます。一般に水生昆虫類の農薬に対するLC50(半数致死濃度)は100ug/l以下(昆野, 2001)である所、タガメはBHCで0.07μg/l、ピレスロイド系で1ug/l前後で、RDBにあるとおりタガメは特に農薬に弱い、と言えそうです。
タガメは繁殖期に盛んに飛翔し、一晩で数km移動したりします。生態系の頂点種のひとつとして、生息密度を下げるために新たな生息地を開拓する習性を持っていると考えられますが、これがタガメの生息には不利に働いています。
タガメは光に集まる性質=走行性が強く、水銀灯に集まってそのまま死んでしまう、さらには数年で地域絶滅してしまう事例が複数確認されています。