一般に泳ぎが下手と言われるガムシですが、タマガムシなど巧みに泳ぐ種もいます。背中を下に無重力遊泳する姿をTwitterに動画投稿したところ、15万再生されるバズりを見せましたので、反響をまとめます。
※その後、19万再生1.1万favに到達
そもそもガムシとは
「ガムシ」は甲虫目ガムシ科(Hydrophilidae)の水生昆虫の総称、あるいはガムシを代表する大型種のことです。昆虫食のゲンゴロウによく混じっています。むしろガムシしか入っていないことも…。
また、泳ぎが下手とされますが、ゲンゴロウと比べると下手という比較の問題で、十分上手に泳ぎます。何かに掴まっていることが多いので、そんなに上手である必要がないのです。
注釈なく「ガムシ」と書く場合は、4cm弱に達する大型種を指すことが多いでしょう。草食メインの雑食で、ざっくり説明するときは肉食のゲンゴロウに対して草食のガムシ、としてしまう場合もあります。正確には繁殖期に死骸などの肉も食べて栄養補給します。
ガムシは水生昆虫を扱っているとフィールドでも出会いますが、成虫は大食漢で水草の確保が大変なのでなかなか飼いきれません。またいる所にはいるのであまり希少種扱いはされていません。
漢字では「牙虫」と書きますが、これは成虫の腹に立派なトゲがあることから、あるいは幼虫の姿から来ていると言われています。おとなしい水生昆虫です。
幼虫は肉食でモノアラガイなどの貝を食べます。小型種ではまた別です。この写真ではわかりませんが、ゲンゴロウ幼虫よりぶよぶよしています。
幼虫は写真のように餌を頭上に掲げて食べる習性がありますが、もしかするとこの辺りの話と関わっているかもしれません。
15万回再生された「タマガムシ」とは
4cm弱に達する大型水生昆虫の「ガムシ」に対して、タマガムシは3.5mmくらいの小型種です。丸っこい体と背を下に巧みに遊泳する習性で知られています。どこにでもいるわけではありませんが、浮葉植物が豊富でやや水深がある止水域に多産します。
無重力遊泳については「ずっと見ていられる」「想像してたのとチガウ」「泳ぐの定義とは?!」「フリーザが乗ってる奴」「マンダロリアンに出てくるヨーダのバギーだ」などのご感想をいただいています。ありがとうございます。
背中を下に泳ぐ理由はよくわかっていません。腹面に空気を貯めるほかのガムシは普通に泳いでいます。また、動画でもピーンと張った後脚が見えますが、中脚だけ遊泳毛が発達していて、これを一生懸命動かしています。
このタマガムシは石川県ふれあい昆虫館に行った時、渡部さんに案内いただいたフィールドの出身です。
まだ数字は増えていますが、Tweetアナリティクスによると158400再生、10439いいね、2600RTを叩き出しています。
15万回再生ってなんなん?定義は?と気になったので調べてみました。
Twitterには「動画アクティビティ」なる便利なものがあります。検算してみたところ「メディア(動画)の再生数」は25%以上再生したものを指すようですね。
タイムラインでの自動再生などもあり、数秒表示されただけのようなものはカウント対象外とする仕様は妥当かなと思います。
再生時間(分)はトータル63339分で1056時間相当!いやーとんでもない数字ですね。こちらも25%以上再生したユーザーの再生時間(分)を計算したものです。
26秒と長めの動画なのに完了率が11%というのは割と高いのではないでしょうか。数秒の動画でも同じくらいの完了率なことはよくあります。
水生昆虫たちが生きる湿地を守るために
ところで、タマガムシが好む浮葉植物が豊富な湿地を守っていくにはどうしたらよいでしょうか。これには、アメリカザリガニの侵入が大きく関わってきます。
今年からアメザリを除く外来ザリガニが「特定外来生物」に指定され、飼育・放流などが禁止されましたが、本来アメザリこそ水辺を荒らす侵略性が高い種で、多くの産地がアメザリ侵入によって壊滅しました。
アメザリは水草を切って水生昆虫が隠れられなくする環境改変能力があり、また移動能力も高く拡散しやすい特徴を持っています。かい掘りしても穴をほって耐えるため根絶できません。こうして、ザリガニが侵入した湿地からは水草がなくなり、死んだ色の水面ができあがります。
意外なことに、日本でもまだザリガニやウシガエルが侵入していない湿地はあり、水生昆虫たちが命をつないでいます。しかし、これらの湿地も開発で失われるなど、減少しつつあります。今回ご紹介したタマガムシなど、魅力的な種が周りにいると関心を持っていただくことが、環境保護の第一歩となります。
みなさん、よろしくお願いします!