2019年にピークで60匹ほどゲンゴロウ類の幼虫を飼育した経験から、ナミゲンゴロウ幼虫の飼育方法と成長過程をまとめました。交尾から産卵、孵化、餌、飼育環境、上陸、羽化までゲンゴロウ幼虫の育て方を豊富な写真で説明します。
ナミゲンゴロウの繁殖方法は確立されていて、手間をかけられれば難易度は高くありません。多産や4cmサイズを目指すと、奥が深くなっていきます。以下、ゲンゴロウと書く場合はナミゲンゴロウを指します。ゲンゴロウ類、と書く場合はコガタノゲンゴロウやクロゲンゴロウなど他の種も含みます。
ゲンゴロウ幼虫の成長過程
ゲンゴロウの成虫は冬眠なく一年中見られますが、幼虫が出る時期は5月から10月頃です。野生下の生活史と異なり、飼育下では12月に羽化した事例も見かけます。
産卵のスイッチは水温25度以上、日照時間13時間以上とされています。3令まで成長した幼虫は土中で蛹となり、孵化から上陸まで幼虫期間25日、上陸から羽化まで約27日かかります。成虫になるまで、おおよそ50日見ておけばよいでしょう。
2019年に親6匹から生まれた27匹から成虫にいたったのは8匹です。生育ステージごとの平均日数は以下のとおり。2019年は全体に発生が遅く1匹目の孵化は7/22でした。
1令幼虫 | 2令幼虫 | 3令幼虫 | 蛹(蛹室内) | 幼虫期間 |
---|---|---|---|---|
7日間 | 9日間 | 14日間 | 27日間 | 25日間 |
ゲンゴロウ幼虫飼育の特徴
ゲンゴロウ全般に言えますが、幼虫は共食いするので個別飼育が必須です。また生き餌が必要で、都会では餌の確保に苦労するでしょう。餌はお金で解決できます。
また食べ残しで水が痛むので毎日水換えしなければなりません。50匹規模だと毎日2時間は取られます。
大規模に飼育している人では、水の循環装置を自作するなど工夫しています。
ゲンゴロウの交尾
一生に一度しか交尾しない昆虫もいますが、ゲンゴロウ類は産卵期でなくても頻繁に交尾します。
繁殖期が終わった秋でも、普通に交尾していてお盛んだなあ、という感じです。
ゲンゴロウの交尾では、オスが吸盤付きの前脚でメスの背中に覆いかぶさります。メスが呼吸できず弱るのを避けるため、オフシーズンはオスメス分けて飼育したりします。
左端の写真ではオスの前脚の吸盤と、中脚でメスを抱え込んでいる様子が観察できる。
ゲンゴロウの産卵・卵
クロゲンゴロウ、コガタノゲンゴロウ、ナミゲンゴロウなどの大型の種では、オモダカやホテイアオイなどを齧った後、スポンジ状の組織内に産卵します。
ゲンゴロウが産卵に使う水草・湿地性植物を「産卵床」 と言いますが、多産させるには植物選びが大事とされています。
ゲンゴロウに齧られた植物はボロボロになっていくのと、孵化に10日ほどかかるため、何個か予備を用意して交換していきます。
産卵後の植物は植え直したり養生しますが、そのシーズンに再利用できるほど回復しません。
クロゲンゴロウの産卵行動
ホテイアオイはストロンと呼ばれる茎で子株を出して増殖します。この動画では、クロゲンゴロウのメスがホテイアオイの茎を齧った後、反転して産卵しています。
https://www.youtube.com/watch?v=J6iRv6YelDs
ゲンゴロウ初齢幼虫の飼育方法
1匹目の幼虫出現を確認したら、朝夕水槽をチェックするようにします。引き続き孵化する可能性が高いからです。
幼虫を見つけたら、共食いを避けるため分離するのがお世話の第一歩です。ゲンゴロウ幼虫は呼吸のため水面近くにいるので、出会う機会が多くすぐ共食いしてしまいます。幼虫の回収には大型のスポイトを使うと便利です。
ゲンゴロウ幼虫は孵化直後は白く、一日経つと黒い模様が表れます。ゲンゴロウの幼虫は大型で、1令ですでにコガタノゲンゴロウの2令近いサイズがあります。餌にはミズムシ(ミズゲジ)を与えています。一日5匹は食べるでしょうか。一週間程度で2令幼虫に脱皮します。
飼育環境は数匹のうちはプラカップ、数が増えたら無印良品の区切り付き収納ケースを使用しています。
ゲンゴロウ2令幼虫の飼育方法
ゲンゴロウは2令でもう小魚を食べられます。メダカ、アカヒレ、小さめの小赤などが使えます。水の痛みやエサ代を考えるとバランスが良いのはイエコ(ヨーロッパイエコオロギ)です。
ゲンゴロウ3令幼虫の飼育方法
ゲンゴロウ幼虫は3令直後は6cm程度ですが上陸前には8cm以上に成長します。見比べるとわかるように、頭と胸の3節はそのままで、体節が伸びていきます。
餌をあげるとすぐ食いつくので撮影機会も豊富。主にアカヒレや金魚の稚魚「小赤」など小魚を与えますが、食べ残しで水が痛んで死ぬ確率も上がるので気を使います。
https://www.youtube.com/watch?v=j9h3AhblrAg
ゲンゴロウ幼虫は牙を通して獲物の体内に消化液を送り込む「体外消化」を行います。
https://www.youtube.com/watch?v=jvNpjcH30qI\
社会人の場合、水換え餌やりのタイミングは朝・帰宅後・寝る前の3回あります。帰宅後に小赤を与えて、食べ終わっていれば寝る前にもう一回、という感じです。
帰宅時間によりますが、朝与えるのは止めました。数十日苦労して後一週間で上陸、という頃に水質悪化で落として(死んで)しまった幼虫が何匹もいます。
慣れてきて機械作業的に水換えしていると、朝うっかり餌を入れてしまいしかも幼虫が食いついてしまうことがあります。そこは心を鬼にして除去すべきです。
ゲンゴロウ幼虫の上陸とタイミングの見極め
ゲンゴロウの3令幼虫は十分成長すると上陸して土に潜り蛹室を作ります。この上陸タイミングを逃すと死んでしまうので見極めが大事です!
…とは言うものの上陸サインはかなりはっきりしていて迷ったことはありません。
- 3令になってからの日数
- 餌に興味を示さなくなる
- 縁を泳ぐなどの上陸仕草
などから判断できます。
シーズン1匹目が上陸したら後は同じ日数で「予定日」が計算できます。8cmを超えるのも目安とされていますがプラカップだと正確に測れず自分は使っていません。
また幼虫は動くものに反応し大顎を開いたり追ってきたりしますが、上陸前の幼虫はピンセットを目の前で動かしても無反応だったりそっぽを向いたりします。
動画のようにせかせかと歩き回ったり、縁を突っつくように泳いだりなどの「上陸仕草」も明確なサインです。
https://www.youtube.com/watch?v=fHatWLnlIJU
ピートモスを握って水が出ない程度に湿らせて大きめのプラカップやプラスチック容器などに詰めます。幼虫は数時間〜一晩程度で土中に戻り蛹室を作り前蛹→蛹になります。ゲンゴロウは成虫で4cm弱あるので、土の深さは5cm近く入るものが必要です。
土に置いた直後は微動だにしない個体も多いですが、すぐ土を掘り出す幼虫もいます。動画はコガタノゲンゴロウ。
https://www.youtube.com/watch?v=2Nm_7h5UUn4
ゲンゴロウの羽化
ゲンゴロウ幼虫は上陸後25日程度で羽化し、数日土中で静かに過ごした後、地上に出てきます。
ゲンゴロウにはオスメスで背中の模様が異なる種がいて、ナミゲンゴロウはその一つです。
ゲンゴロウ幼虫飼育に関するFAQ
ゲンゴロウ幼虫を育てるには生き餌が必要です。爬虫類飼育用に流通する餌用コオロギが各種サイズがあり便利です。大型種の終齢幼虫では金魚などを与えます。
ゲンゴロウ幼虫は獰猛なハンターですが、幼虫を握ったり口元で指を動かさない限り、噛まれることはないでしょう。世話にはピンセットを使います。
ゲンゴロウ幼虫は共食いするため、プリンカップで個別飼育します。食べ残しで水が汚れるため毎日水換えします。終齢幼虫は陸上に上陸して蛹を作ります。これには園芸用のピートモスを用います。上陸タイミングについては、記事本文を参照。
ゲンゴロウが孵化してから羽化するまでだいたい40-50日かかります。基本的に毎日水換えが必要なので、宿泊を伴う旅行が難しくなります。
早ければ5月から幼虫が見られます。一般には6月以降が多いようです。飼育下では、晩秋までずれることがあります。
産卵のスイッチは水温25度以上、日照時間13時間以上とされています。室内飼育の場合は照明時間が乱れがちです。屋外飼育することで改善される場合があります。
日に数個2週程度にわたって卵を産むようです。従って、幼虫20匹弱がだらだらと発生することになります。
卵は10日程度で孵化しますが、植物の組織内に産卵するため、厳密な産卵日はわかりません。植物に傷が付きだしたら産卵したとみなし、朝夕水槽をチェックして発生した幼虫を回収します。
ゲンゴロウは3令が終齢幼虫です。その後、土に潜って蛹を作り、新成虫が現れます。
3令幼虫で6-8cmです。8cmは幼虫上陸の一つの目安となります。
食べ残しで水が汚れるので、毎日水換えします。3令幼虫なら朝夕水換えすることもあります。