タイコウチの特徴と飼育方法

タイコウチ

は、全国的に数が減っている水生昆虫。タイコウチの特徴や飼育方法、生息地、ヒメタイコウチやインドシナオオタイコウチとの違いなど。タイコウチは呼吸管を除き体長3cm強の大型種で、小昆虫やなどをに飼育します。タイコウチはコオイムシやガムシよりは珍しい印象で、見つかったら周りによい自然環境があることを示しています。

English Ver.Water scorpion and breeding – Diving Beetle & Giant Water Bug breeding

扁平な体が特徴のタイコウチ

タイコウチはカメムシ目タイコウチ科タイコウチ属に分類される水生昆虫。学名はLaccotrephes japonensis。英語でwater scorpionと呼ばれるように、サソリに似た扁平な体と鎌を持ちます。同様、長い呼吸管を持ち、呼吸管を除いた体長は30〜35mm。色は茶褐色から黒褐色で、手に持つと擬死する習性があります。

タイコウチの全身

タイコウチの前脚。力こぶ部分に突起があって格好良い。タガメ同様、鋭い口吻を突き刺して獲物を消化します。

タイコウチの上半身
タイコウチの上半身

タイコウチの下半身。ミズカマキリ同様長い呼吸管を持ちますが、より底面に潜んでいる印象。

タイコウチの下半身
タイコウチの下半身

雌雄は生殖器で見分けますが、外見でもやや細身のオスと幅が広く大きいメスで区別可能。

タイコウチのペア
タイコウチのペア

タイコウチの死んだふり。脚を縮めて擬死する習性があります。

擬死するタイコウチ
擬死するタイコウチ

タイコウチの生息地・生息環境

タイコウチは、田んぼ周辺の水路やのあるため池など、浅めの湿地に生息しています。タイコウチはタガメ同様、農や開発の影響で1980年頃までに激減し、その後丘陵部・山間部などに生き残っています。流速が早かったり、深い所にはあまりいません。

現代においても、コンクリート水路の整備やの侵入、植生遷移や耕作放棄による浅い湿地の消滅など、減少要素が多い印象です。よく飛翔するミズカマキリと比べ、生息地の消滅が個体群の消滅につながりやすそうです。もしタイコウチがいたら、ほかの水生昆虫の生息にも適した環境が残っていると言えるでしょう。

タガメとタイコウチ
タガメとタイコウチ

よく間違われるタガメとタイコウチ・コオイムシの違い

タイワンタガメ
タガメとタイコウチ・コオイムシの違い

タガメを見たことがある人が減っているので、コオイムシやタイコウチはタガメによく間違われます。これは上野の国立博物館の標本ですが、005がタイワンタガメ、006がオオコオイムシ、007がタイコウチです。カメムシの仲間で前脚の鎌と突き刺して消化する食べ方は共通していますが、大きさも形も全く異なることがわかります。

なお、タイワンタガメは東南アジアに生息する種で昆虫食として輸入されていることで有名です。

タイコウチの絶滅危惧種指定状況

国のRL(レッドリスト)には記載されていないので、タイコウチは国の絶滅危惧種ではありません。

一方、タイコウチは東京都で絶滅判定されているほか、いくつかの都道府県で絶滅危惧種に指定されています。具体的には、新潟県・沖縄県で「絶滅危惧I類」のほか、青森県・山形県で「絶滅危惧II類」、石川県・長野県・高知県・長崎県・鹿児島県で「準絶滅危惧種」に指定されています。

ただし、27の都道府県で何らか絶滅危惧扱いされているガムシより大丈夫、と言えるかは個人的には疑問。少なくとも北関東におけるレア度はコオイムシ >>> ミズカマキリ・ガムシ > タイコウチ > タガメであるように見えます。見つかるポイント・個体数とも、ガムシより少ない印象です。

タイコウチが各都道府県のRLに未記載なのは、実際には減少しているものの、情報不足で何も指定されていないパターンなのかもしれません。

タイコウチ、実は各地で減っているのでは問題

Twitterでタイコウチの生息状況について聞いてみた所、各地で減少傾向である旨、教えていただきました。いくつかの県では、ほかの絶滅危惧種より希少なのにレッドリストに記載されていないとのこと。普通種だと思っているうちにいなくなってしまうパターンかもしれません。生息スポットの減少具合を気にとめるようにしたいと思います。

例えば、愛媛県のレッドリスト改訂関係者によると、次回改訂でタイコウチを入れる予定というお話。タイコウチが依存しているような浅瀬は植生遷移で陸地化しやすく、農業用ため池も管理しないと落ち葉がたまって生息環境に適さなくなります。

兵庫では1990年代〜2000年代くらいまで見られたがその後タイコウチを見かけなくなったとのこと。

安曇野市ではコオイムシ・ガムシと比べるとタイコウチは数が少ないとのこと。

石川県では、タイコウチは絶滅危惧I類のゲンゴロウより希少であるとのこと。

タイコウチの餌と飼育方法

鯉の稚魚を食べるミズカマキリとタイコウチ
鯉の稚魚を食べるミズカマキリとタイコウチ

タイコウチの飼育は、それほど難しくありません。水深5cm〜10cm程度で足場を入れた容器を用意し、メダカやタイコウチより小柄な水生昆虫などの餌を与えます。食べ残しで水が汚れるので、適宜入れ替えます。生き餌という面倒さはありますが、メダカはどこでも買えるので楽ですね。

野生では泥に身を潜めて通りがかった餌を捕獲する待ち伏せ型の狩りをします。運動量は少なく、餌も毎日はいりません。個体数と同数程度のメダカでも入れておけばよいでしょう。水深が数cmなど浅い場合、水面に浮くコオロギなども餌にできます。与えたことはありませんが、あたりもいけそうです。ただし水が痛むので食べ残しは速やかに取り除きましょう。

寿命は数年で、冬は陸上越冬します。11月頃、湿らせた落ち葉・水苔等に潜らせ冷暗所に置くと、勝手に冬眠します。春暖かくなったら、起こしましょう。タガメの冬眠方法と同じ感じでいけると思います。飼育下では水中越冬でも大丈夫で、日陰など水温が安定した場所に容器を置きます。

させた経験はありませんが、初夏に湿らせた水苔や生花用オアシスなどの地上部に10個程度のを産みます。写真は類似種のヒメタイコウチの卵で、タイコウチの卵も同様に髭が生えています。

ヒメタイコウチの卵
ヒメタイコウチの卵

ヒメタイコウチやインドシナオオタイコウチとの違い

タイコウチの仲間には、より小型なヒメタイコウチ、海外には1.5倍近く巨大なインドシナオオタイコウチがいます。

ヒメタイコウチは体長20mmほどと小型のタイコウチ。日本では中京など限られた地域に生息し、名古屋近辺ではタイコウチの方がレアとされます。

ヒメタイコウチの翅は退化し飛べません。湧水などで保たれてきた浅い湿地の水際、湿った陸上部に生息します。呼吸管も短く、水だけの容器に放り込むと溺れて死んでしまうことがあるくらいです。移動能力が低いので、開発には極めて弱いと言えるでしょう。

ダンゴムシを捕らえたヒメタイコウチ
ダンゴムシを捕らえたヒメタイコウチ

インドシナオオタイコウチは、その名の通り東南アジアに生息する大型のタイコウチです。私も生体を見たことはありません。呼吸管を除いた体長は40〜45mmに達し、日本のタイコウチの1.5倍近くあることになります。国内でもたまに生体が流通していますが高価です。

インドシナオオタイコウチ

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