国蝶オオムラサキは準絶滅危惧種。そのオオムラサキはヤフオクでも越冬幼虫が売買され、ほとんどが特定人物によるものです。今回は、ヤフオクの2021年取引データを集計・分析し、オオムラサキ販売個体数の87%にあたる1863匹/2153匹が特定人物によるものだった件を明らかにします。
準絶滅危惧種オオムラサキ
オオムラサキは国蝶国蝶と言われますが、法律で規定されたものではありません。1957年に日本昆虫学会が日本を代表する蝶として発表したものです。
国蝶の候補には、アゲハ・ギフチョウ・アサギマダラ・ミカドアゲハなどがありました。アゲハには柑橘類の害虫という側面もあります。アサギマダラは高山にいて一般的な馴染みがありません。ギフチョウやミカドアゲは一部地域のみの分布なのに対し、オオムラサキは全国的に分布しています。山梨県オオムラサキセンターの展示によれば、こうした経緯で、オオムラサキが国蝶になったとのこと。
さて、オオムラサキは国のRL(レッドリスト)では準絶滅危惧種で、絶滅危惧種ではありません。多くの県で準絶滅危惧種で、10都道府県ほどで絶滅危惧種です。乱獲によって、地域個体群が減少・絶滅し、さらに県単位で絶滅危惧種になり、そういう都道府県が増えれば、国のRLでも絶滅危惧種に昇格することになるでしょう。
絶滅危惧種並の減少速度を見せるオオムラサキ
オオムラサキは現在は絶滅危惧種ではありませんが、急速に減少している報告があります。
環境省は全国1000箇所程度の定点を設けて、生物多様性を定量的に観察する「モニタリングサイト1000」制度を設けています。蝶の種類と個体数データを〜17年までの10年分分析した結果、1年あたりの減少率をみると、絶滅危惧1A類相当の15%以上を示した種は、ミヤマカラスアゲハ31.4%を筆頭にオオムラサキ16.1%など6種が該当しています。
蝶類の減少要因には、開発や耕作放棄による植生遷移も大きいわけですが、現実に減っている生き物に、採集がとどめを指してしまう恐れがあるわけです。
ヤフオクにおけるオオムラサキ流通の実態
ヤフオクのオオムラサキ関係の流通は、切手・標本と生体の2つに分かれます。成虫は数が取れないのに対し、生体は越冬蛹虫が大量に流通しています。成虫の標本は年数件なので無視してOKです。
で、問題のオオムラサキ越冬蛹虫の流通。これは2021年で2000匹ほど流通していて、そのほとんどが特定人物(sakana1611氏)によるものです。準絶滅危惧種とはいえ、各産地から50匹100匹単位で乱獲すればどうなるか、それが毎年1500匹とか1800匹とかいう総数に達していたならば、どういう影響を与えるか、少し考えればわかるでしょう。
書いていて悲しくなってきたので、今日はここまで。