ミドリガメが法規制される話があります。外来種とされるクサガメも、飼育禁止になるのでしょうか。2023年に迫る法規制の進行状況と、ミドリガメやクサガメが飼育禁止になるかについて、解説します。
アメザリ・ミドリガメ規制を念頭に置く外来生物法の一部改正が成立!
クサガメが飼育禁止になるか、心配する声を聞きます。ミドリガメの法規制が迫っているからです。
2022年に外来生物法の一部改正が成立。アメザリ・ミドリガメの規制は来年2023年からとされています。
日本の野外で見られるカメの7割はミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)になっていて、在来種を圧迫しています。そして、従来の法規制「特定外来生物」では飼育禁止になるので、クサガメも大丈夫かということになっているわけですね。
クサガメも外来種?
昔は在来種とされていたクサガメですが、現在は、江戸時代後期18世紀ごろ朝鮮半島から移入された外来種との見方が強まっています。また、飼育個体や中国からの輸入個体が遺棄される事例も各地で相次いでいます。少なくとも、北海道・沖縄に定着したクサガメは、国内外来種あるいは外来種です。
クサガメが生態系に与える被害としては、在来種イシガメとの交雑(いわゆるウンキュウ)があります。交雑種であるウンキュウも繁殖能力を持つことが知られており、純粋なイシガメが減る要因になります。イシガメはミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)やアライグマなど、侵略的外来種の進出によって数が減っています。
クサガメが外来種と考えられる理由として、疋田・鈴木(2010)は1.化石や遺跡からの出土例がない 2.DNAが均一で近年入ってきたことを示している 3.文献に現れるのが18世紀、などの点を挙げています。
- クサガメは化石や遺跡からの出土例がない
イシガメでは遺跡からの出土例が複数あるが、クサガメはない - クサガメのDNAは各地で均一なので近年入ってきたことを示している
全国134匹のDNAを分析した結果103匹は韓国産と同じタイプ。一部に、中国タイプの集団もいる。 - クサガメが文献に現れるのが18世紀以降
初出が小野蘭山の『本草綱目啓蒙(小野, 1803–1806)』で、別文献では18世紀末に西日本に生息としている
よくある誤解ですが、外来種の概念に年代は関係なくクサガメも外来種です。
外来生物法では明治以降の侵略的外来種を規制対象にしています。鎖国が解け外来種が一気に入ってきたことや、江戸時代以前は移入の経緯がはっきりしない種も多いため、実務上の問題でそれ以前の外来種を規制対象外にしているだけです。
ちなみに海外にも外来種の概念ありますが、当然ながら明治以降かの縛りはありません。
クサガメも規制される可能性はあるが、少なくとも飼育禁止にはならない
結論から言うと、クサガメはまだ法規制されていないし、規制されたとしても飼育禁止になる可能性は低いでしょう。
一つは外来生物法では実務上明治以降の侵略的外来種を対象にしていることと、もう一つはミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)規制でも飼育禁止にはならないからです。
アメザリとミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)は、生態系への被害が大きいのに規制できていない二大巨頭と言われてきました。法規制のハードルとなっていたのは、「特定外来生物」に指定されると、飼育禁止になるためです。ミドリガメは、2019年時点で全国およそ110万世帯あわせて160万匹が飼育されているとされ、法規制されると飼育個体の大量遺棄が起きる懸念がありました。
ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)は、2015年には5年後までに段階的規制する方針が出ていた経緯があります。しかし、当時の外来生物法では飼育禁止部分の回避が不可能であるとして、指定が見送られたのです。
2022年に、飼育等の規制行為について、種ごとに除外規定を設けられる外来生物法の一部改正が行われ、2023年からザリガニとミドリガメの法規制がはじまる見込みです。
上記で述べたように、飼育個体が多い種では、売買・放流禁止のほか、飼育・譲渡に除外規定を設ける方針です。クサガメが将来規制されるとしても、明治以降の縛りを解除する事情が発生した上で、同様の指定になる可能性が高いでしょう。ただし、飼育継続できてよかったねという話ではなく、あくまで指定時の大量遺棄を防ぐためという目的が大事です。
また、クサガメの飼育個体数は把握していませんが、その数が少ない場合は、アメリカザリガニ以外の外来ザリガニ全種が特定外来生物指定されたように、飼育禁止になる可能性もあります。
個人的には、アメザリとミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)の指定効果を見るため2年〜5年必要で、追加の指定はその後になるのではないかと予想しています。