たった一人が86%を占める!?ヤフオクのカワシンジュガイ取引を分析してみた #ヤフオク #カワシンジュガイおじさん

ヤフオクのカワシンジュガイ流通

2022年から保護種になったカワシンジュガイは、規制直前にヤフオクで1万匹100万円x9セット=9万匹という大量出品があったことで話題となりました。ヤフオクでの売買が指定要因なのに、そのヤフオクで駆け込み出品があるという異様な光景です。これに対し、環境省とヤフオクが連携し規制を早めるなど、一人のやらかしが後世の行政に影響を与える事態となりました。

今回は2020年の取引データを集計・分析し、通称“カワシンジュガイおじさん”がヤフオク販売個体数の86%を占め、カワシンジュガイ規制とは実質カワシンジュガイおじさんをどうするか問題だったことを明らかにします。なお、分析に用いた元データ及び集計方法は既知のものであり、検証及び他種・他業界への横展開も容易です。

2022年から保護種になったカワシンジュガイ

2022年1月24日から種の保存法「特定第二種」で保護種となった、淡水に住む二枚貝のカワシンジュガイ(川真珠貝)。文一総合出版が運営するサイト「Buna」にカワシンジュガイがどんな生き物か解説した記事があります。

環境省資料でカワシンジュガイの指定理由を見ると、生息地の減少に加えて、タナゴ類の産母貝としての需要があり、ヤフオク等の取引件数が近年増加傾向にあるとしています。「カワシンジュガイ類の取引件数・個体数の年度推移」のグラフですが、令和2年度(2020年度)は取引件数650件、個体数16000件弱だったようです。

令和3年度希少野生動植物種専門家科学委員会「令和3年度の国内希少野生動植物種の選定について」 P6
環境省資料の集計方法

主要なオークションサイト(2 社)における過去 10 年間(2011 年 4 月 1 日から 2021 年 3 月 31 日まで)の取引レコードを主に環境省レッドリスト 2020 の掲載和名により検索し、バイアスとなる得るレコード(生体ではない取引や外国産の個体の取引等)を特定の文字列の抽出により検出し、削除して集計に使用した。「商品タイトル」の情報から、取引個体数に係る文字列を抽出し、1 取引あたりの販売個体数を算出した。卵嚢取引は個体数としてカウントすることが困難であるため、個体数の集計には含めていない。なお、「商品タイトル」から取引個体数に係る文字列を抽出できなかった場合は、原則 1 個体として扱った。

※主要なオークションサイト(2社)がどこを指すか明記されていませんが、生体流通はヤフオクがほとんどと言ってよいです。メルカリは動物生体扱っていません。

タナゴ類の産卵母貝に使われるカワシンジュガイ

タナゴ類はカワシンジュガイなどの淡水二枚貝に産卵する習性を持っています。そのカワシンジュガイの幼生は、ヤマメやイワナなどサケ科魚類のエラに寄生し、ある程度大きくなると稚貝になって川底に定着します。カワシンジュガイは100歳を超えるものがいるなど長寿なことが知られています。

つまり、カワシンジュガイの個体群が維持されるには、数十年から100年単位で維持される川底、イワナやヤマメが住める環境の両方が最低限必要で、それらは開発や河川改修で失われがちです。さらに、移動せず川底に刺さっている生態のため乱獲に弱いことが懸念されています。

なお以下のTweetはタナゴ類がカワシンジュガイを産卵に使う様子を示すために使ったもので、動物園等研究機関が希少種の維持のために最低限カワシンジュガイを使うことは、法規制後も問題ありません。ミヤコタナゴは国内希少野生動植物種及び国の天然記念物に指定された日本固有種です。

産卵のためカワシンジュガイに群がるタナゴ類

ヤフオクの駆け込み出品をめぐる騒動

種の保存法の保護種指定は、12月に専門家会議が行われ候補種の発表及びパブコメの募集、年末に閣議決定、周知期間を設け年明け1月から2月に施行という段取りが通例です。多くの生き物がオフシーズンのうちに規制することで、駆け込み採集をできるだけ防ごう、というスケジュールです。

とはいえ、候補種が発表されるとヤフオクで駆け込み出品があるのも通例となっています。カワシンジュガイでは、後にカワシンジュガイおじさんと呼ばれることになるtear_19810708氏が、1万匹100万円x9セットという大量出品を行い、環境省やヤフオクが声明を出し出品規制を早めるなどの騒動が起きています。

1万匹の出品は結局落札ありませんでしたが、一人のやらかしがヤフオクや国を動かした事例です。

専門家や環境省が希少種のネットオークションでの流通(実質ヤフオク名指し)に言及するシーンは増えています。一方、Yahoo! JAPAN社がどのレベルで問題を認識しているのかは、今まで明らかになっていませんでした。今回の騒動を機に、朝日新聞の小坪さんがヤフオク担当者の見解を引き出しています。

法規制直前の駆け込み出品

“カワシンジュガイおじさん”の取引個体数を集計してみた

ヤフオクの取引データは120日で見られなくなってしまいますが、aucfan.com というサービスで過去10年の取引が蓄積されています。aucfanにはプレミア会員向けのCSV出力オプションがあり合計月1500円程度と手頃です。今回は、このデータを集計します。

ちなみに、正規表現で整形して1年分データを作った後に、CSV出力機能あることに気づいて泣きましたw。無料版だと価格や入札件数が見られないほか、CSVが最大500件出力できるのに対しページ送りごとに処理する必要があります。

aucfanのデータを元にした論文は複数出ていて、年々流通量が増えていること、特定第二種に指定されると流通が消えることなどが示されていますが、今回は特定個人が与える影響を見てみる趣旨です。

集計方法

ヤフオクの2020年1月から2020年12月までの取引レコードを生体に限定して集計。「商品タイトル」「商品説明」の情報から1取引あたりの販売個体数を算出した。10個体x9セット落札数5件なら実販売個体数50個体として扱った。

ヤフオクのカワシンジュガイ取引(2020)サマリ

ヤフオクのカワシンジュガイ取引を集計した結果、カワシンジュガイおじさん(tear_19810708氏)一人で出品数の51%、複数セット出品も考慮した実販売個体数の86.5%、売上の80.5%を占めていることがわかりました。冒頭環境省委員会資料でヤフオク流通量のグラフが出ていますが、実質カワシンジュガイおじさんをどうするか問題だった、ということに。
※1 データは私一人で集計したため、誤判定など多少の誤差はあり得えます。元データはaucfanですので必要があれば誰でも検証可能です。

※2 複数セット出品を考慮しない場合、カワシンジュガイおじさん(tear_19810708氏)が占める割合は82%です。環境省資料では複数セット出品は考慮していません(確認済)。

※3 環境省グラフで2017年に個体数が急増したのはカワシンジュガイおじさん参入の影響か、2021年にさらに販売数が増加した内訳の検討は、今後行います。カワシンジュガイおじさん参入の影響は、2016年と2017年の内訳を検討すればわかります。おそらくカワシンジュガイおじさん参入分が純増となって表れています。

ヤフオクのカワシンジュガイ取引(2020)サマリ

インターネットオークションでの流通と聞くいろいろな人が出品しているように思ってしまいますが、そもそも、2020年のヤフオクのカワシンジュガイ出品者はたった5人しかいません。影響度を考慮すると、カワシンジュガイおじさん(tear_19810708氏)とA氏の実質2人だけです。

ユーザー名出品数
カワシンジュガイおじさん(tear_19810708氏)311
A氏282
B氏12
C氏4
D氏1
ヤフオクにカワシンジュガイを出品した人と数(2020)

出品数では半数程度のカワシンジュガイおじさん(tear_19810708氏)が実販売個体数では86.5%を占める理由について。ほかの出品者が1取引1セット最大15個体程度の出品なのに対し、9セットなど複数セット出品や100・200個体等の大型出品が複数あるためです。2020年の100個体以上の取引は63件。

売上については、規模感の目安として提示しました。私の集計ではカワシンジュガイおじさん(tear_19810708氏)はヤフオクで毎年200万〜の売上があると推計しています。行者ニンニクとか魚類とか、カワシンジュガイ以外の売上もあります。

プラットフォームの責任について

カワシンジュガイはヤフオクでの流通による採集圧が懸念されるとして保護種になりました。その中身を見てみると、カワシンジュガイおじさん(tear_19810708氏)一人で実販売個体数の86%を占めるなど、特定個人の影響であることは明らかです。もちろん、カワシンジュガイの減少要因には開発によるものもありますが、最後は個人の乱獲が止めを刺してしまう可能性を示したと言えるでしょう。

また、規制の方法について。特定個人のやらかしに国が乗り出すのは大げさではないか、プラットフォームのヤフオクが規制すれば済むのではという論点もあろうと思います。特定個人の数百万の小遣い稼ぎのために、誰かがデータを集めて資料を作り、専門家が会議をして、環境省が保護種として全国に周知するという、壮大な余波が発生しています。

※年200万、2017参入だったと思うので合計は1000万くらい

乱獲したのは特定個人ですが、大量販売を可能にしたのはヤフオクです。サンショウウオもヤフオク流通が原因で20数種一斉に保護種入りしました。Yahoo! JAPAN社がこうした不名誉を避けるには、レッドリストの絶滅危惧種以上は扱わないとか、基準を設ける方法もあるのではないでしょうか。

法規制された種は扱わないというYahoo! JAPAN社の従来運用は理解できるものの、希少種を小遣い稼ぎの種としてしか見ていない人は、規制されたら別の種に移っていくだけです。売買を禁止できる特定第二種で泥縄的に逐次指定あるいは予防的に大量指定する方法もありますが、社会的コストが大きすぎます。こうした行為が繰り返されれば、ヤフオクが黙認しているからだ、という見方になってくるでしょう。

モラルという話も出たので補足

予防的に特定第二種に大量指定するとこうなるのでは、という未来。

カワシンジュガイ以外にターゲットを移したカワシンジュガイおじさん
収穫まで数年かかる行者にんにくを500本出品するカワシンジュガイおじさん

政治に働きかけなくても自社でできることはありますよ!

最後に。カワシンジュガイの売買は、タナゴ類の産卵母貝としての需要が主とされます。日淡勢など、買う人が加担していたことにも、留意が必要です。5-15個体のものはともかく、100・200個体の取引は、ショップ等の仕入れにも使われたのではと思います。

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