タガメが捕食した“大物”の記録を探していきます。日本最大の水生昆虫タガメは普段はドジョウやカエルなどを食べていますが、たまにヘビ・カメ・鯉など大物も捕えているのです。タガメは大きな前脚の鎌を持ち、自分より大きなサイズの獲物も積極的に食べています。
タガメは幼虫の頃から自分より大きな獲物を捕えている
野生下のタガメは、幼虫時代オタマジャクシを主食にしていると言われています。成長すれば日本最大の水生昆虫タガメも、幼虫時代は鳥や魚に食べられる側なので、早く成長するために大きな獲物を必要としています。
写真は野生化のタガメ2令幼虫ですが、自分より大きなオタマジャクシを捕えています。
写真は、タガメ1令幼虫。複数匹がメダカに襲いかかっています。体長で言えば自分の3倍はあるはずです。
タガメの成虫が金魚を抱え込んで食べています。強力な前脚だけではなく、6本脚を使って獲物を確保する習性はタガメならではと言われていて、コオイムシやタイコウチでは見られません。
ちなみに、タガメとコオイムシ1令同士の体格差はこのくらい。タガメは体格と比較しても大きな前脚を持っていることがわかります。
【海外】タガメがヘビを捕食している動画
タガメは英語でGiant water bugと呼ばれます。2013年にアメリカはアリゾナ州のリンコン山脈(Rincon mountains)で、タガメが蛇を捕らえる正にその瞬間が撮影されてます。
ガーターヘビ(Thamnophis属)の子どもは10cm程度、3cmほどのタガメは羽根がないので幼虫ですが、種は特定されていません。撮影者が詳細をまとめた記事はこちら。
タガメの幼虫は早く成長するため普段から体長以上の餌を捕りますが、子どもとは言え蛇も捕まえてしまうのは驚きです。
タガメがマムシを捕食した事例
先程の動画は海外でしたが、日本でもNHKの「ダーウィンが来た!」2017年6月25日放送の「毒ヘビを狩る!田んぼの王者タガメ」でタガメ成虫がマムシを狩る様子が撮影されています。タガメによるヘビの捕食は色々目撃されていて、「野外におけるタガメによるヘビ類の摂食例(森・大庭,2004)」や「野外におけるタガメによるニホンマムシの捕食事例(大庭伸也,2012)」によれば、以下の報告があります。それぞれ、リンク先に実際の画像・動画があります。
- 2002 ヤマカガシ幼体を捕食するタガメの観察例
- 2003 ヒバカリを捕食するタガメの観察例
- 2011 マムシを捕食するタガメの観察例
タガメがクサガメを捕食した事例
元の報告が見つかりませんでしたが、タガメの研究者である大庭伸也先生は、クサガメ幼体を捕食したタガメの写真もお持ちで、ナショナルジオグラフィックに該当記事が載っています。
ウシガエルやブラックバスの胃からタガメやゲンゴロウが見つかった例
タガメがヘビやカメを捕食した事例が正式に報告されているのは、それだけ珍しいからです。
一方、ウシガエルやブラックバスなどの侵略的外来種は、タガメやゲンゴロウ成虫すら丸呑みにしてしまいます。報告された例では、「ウシガエルの胃内容から検出されたタガメについて(平井, 2005)」やオオクチバスの胃からゲンゴロウが報告された例(杉山, 2005)などがあります。