トンボやミズカマキリなど水辺の虫には、ミズダニが寄生していることがあります。寄生時は袋状で動かないため、しばらく飼育してミズダニ成虫が泳ぎだす所を確認しました。あの袋からめっちゃ泳ぐ奴が出現するとは…ミズダニ、侮っていました。
English ver. I knew that water mites could swim, but they actually swim really well!
色鮮やかで水辺の宝石とも呼ばれるミズダニ
日本だけでも200種以上いるミズダニは、宝石の名前が付いたものもいるほど鮮やかな体色を持ちます。フィールドでも比較的よく出会いますが、ご指摘の通り「ああアレね」程度でスルーしておりました。先日、フォロワーさんとの会話でミズダニが話題になったので、今回よく観察してみることにします。
体色がきれいで赤、橙、緑、黄などきれいなものが多く、ホウセキダニ、ルビーダニと名付けられたものがいるほどである。サイズは1ミリ以内のものが多いので肉眼で観察するにはあまりに小さいので水生昆虫の研究者や愛好家はミズダニを知ってはいても真剣に見る人は少ない
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ミズダニは広い範囲の水生昆虫に寄生する
ミズダニは見た目は普通のダニですが、水中で暮らし水生昆虫に寄生します。寄生先をまとめた論文(また大庭先生!)によれば、蚊・カワゲラ・アメンボ・ガムシ・ミズカマキリ・コオイムシ・タガメ・ゲンゴロウ・ガガンボ・トンボのほか、巻き貝や二枚貝などに寄生した記録があります。
大阪市では,コオイムシとミズカマキリに寄生する事が増田(1942)により報告されている.また,Abé et al.(2015)は神奈川県の相模原市・平塚市・南足柄市ならび山梨県の北杜市・韮崎市で採集したコオイムシと,兵庫県のたつの市・佐用町で採集したミズカマキリにオオミズダニ属の一種が寄生していることを報告しており,宿主である水生昆虫の種に関して選好性があること,コオイムシでは成虫より幼虫に多くのダニが寄生する傾向があること,ミズカマキリの雌雄や体サイズの違いに関して寄生率に差は見られないが,胸部や脚にダニが寄生する傾向があることなどを明らかにしている.
日本の水生動物に寄生するミズダニ類
個人的に見ている範囲では、ミズカマキリとタイコウチで寄生率には違いがあるようです。よく付いているミズカマキリに対し、タイコウチではあまり見かけません。泥に潜っているかの違いでしょうか。
水生昆虫についている“あの袋”がミズダニの寄生形態
ミズダニはこのように袋状で寄生していて、下の写真では10個体以上寄生しています。
ミズダニの生活史は、卵・卵蛹・幼虫・第1蛹・若虫・第2蛹・成虫という発生過程をたどります。幼虫が寄生すると第1蛹に、若虫が寄生すると第2蛹になります。若虫と成虫は自由遊泳しますが、蛹は袋状で動きません。私たちがよく目にするのは、大きく目立つ第二蛹です。
蛹が二段階ある理由はわかりませんが、寄生主の脱皮や羽化の際に乗り換える必要性からかもしれません。
ちなみに、イモリに寄生するミズダニも見つかっていて(プレスリリース)、この仲間はイモリの体表で一生をすごすということで、脱皮や羽化の有無が成長過程の進化に影響を与えたのかもしれません。
ミズダニの成虫は巧みに泳ぐ
寄生中のミズダニは袋状で動かないので、これがダニ?と不思議な感じです。これは成虫になった所を見てみたいですよね。しばらくミズカマキリを飼っていた所、ミズダニの成虫が出現したのでスポイトで採取して動画撮影しました。
1-2mmサイズなので細かい所は映っていませんが、脚を盛んに動かして巧みに泳ぐ様子がわかります。鮮やかな赤色もあいまって目をひく生き物ですね。