全国的に減少している大型ゲンゴロウのなかで、クロゲンゴロウは一番身近な種かもしれません。クロゲンゴロウは2cm強で卵型の体型、黄色い縁取りはなく背面・腹面とも緑褐色から黒褐色です。飼育は容易で、幼虫の飼育もほかのゲンゴロウ一般と同じです。
クロゲンゴロウの特徴
クロゲンゴロウ(学名:Cybister brevis、通称クロゲン)は、2cm強の大型ゲンゴロウで、北海道を除く本州・四国・九州に生息します。ナミゲンゴロウが環境省のレッドリスト(RL)で絶滅危惧II類なのに対し、クロゲンゴロウは準絶滅危惧種の位置付け。西日本ではコガタノゲンゴロウも増加していますが、2cmを超える大型種のなかでは、一番身近でしょう。南西諸島には、トビイロゲンゴロウという似た外見の別の種がいます。
ゲンゴロウは黄色い縁取りある種が有名ですが、クロゲンゴロウには黄色い縁がなく、背面・腹面とも緑褐色から黒褐色という特徴があります。また幼虫では2令で頭部が真っ黒になる例が知られています。
クロゲンゴロウはフィールドで見ると黒っぽく地味ですが、照明と角度によってはエメラルドグリーンに輝きます。
野外で見るクロゲンゴロウ
北関東のクロゲンゴロウは、タガメを探しているとついでに入ってくるイメージ。水深数cmから10-20cmの所まで、比較的浅くて水草豊富な水域にいます。
このエリアでは6月から8月まで幼虫を確認しています。
クロゲンゴロウの飼育
クロゲンゴロウ成虫の飼育は容易な部類。頻繁に甲羅干しするので、支柱を入れた容器を用います。泳ぎ疲れて弱るので、何も入れない容器よりは、掴まって休める場所が必要です。人工水草なら管理が楽でしょう。
クロゲンゴロウの餌には、煮干しとか肉食魚用のペレット、赤虫やコオロギなどを与えます。生き餌でなくても良いので楽。なお、水面に油が浮くような餌は厳禁です。あっけなく死にます。
汚れの原因となる食べ残しは随時取り除いでください。水換えの頻度を減らせます。冬越しは室内・屋外どちらでも可能で、常温で問題ありません。
クロゲンゴロウ幼虫の育て方
クロゲンゴロウ幼虫は、初夏から夏にかけて見られます。区別が問題になるのは主にナミゲンゴロウですが、頭部形状のほかに頭部後ろの1節目に中央の筋が通るかが、わかりやすい違いでしょう。
クロゲンゴロウの2令幼虫は、頭部が真っ黒になる例が知られますが、その条件ははっきりしていません。写真は抜け殻です。
肝心の飼育方法ですが、これは一般のゲンゴロウ幼虫の飼育と同じで、1令から3令までコオロギで成虫まで育てられることがわかっています。ナミゲンゴロウだと3令で小金なども使いますが、クロゲンゴロウでは爬虫類・両生類用に流通している餌用コオロギを使うのが便利でしょう。
クロゲンゴロウ幼虫の成長過程
水槽に自然発生したクロゲンゴロウ幼虫を成虫にしましたので、その成長過程を追ってみます。
大型ゲンゴロウ全般に言えますが、雌雄がいれば勝手に交尾します。ホテイアオイなどの産卵床を入れておくと、自然発生することも。12令では模様がはっきりせず、ナミゲンゴロウと勘違いすることもあります。
ゲンゴロウ幼虫は共食いするため、プリンカップ等で個別飼育します。また幼虫の成長に合わせて、コオロギのサイズも変えていく必要があります。爬虫類・両生類用の餌として流通するコオロギは、大中小などサイズ展開されています。
最初ナミゲンゴロウ幼虫と思っていたら、2令では模様がはっきりし、クロゲンゴロウ幼虫でした。コオロギのサイズを複数入れて、どのサイズを食べられるか様子を見ています。
ゲンゴロウは3令が終齢幼虫です。水に落ちているのに脱皮するコオロギ(よく見ます)、それを食べるクロゲンゴロウ幼虫というカオス。
十分栄養を取ったクロゲンゴロウ幼虫は、餌を食べなくなり、上陸して土に潜ります。土中で蛹室を作った幼虫は蛹になり、ある日成虫が現れる、という訳です。
蛹が観察できる位置にあったので羽化の観察を楽しみにしていたのですが、気づいたら新成虫が出ていました。
クロゲンゴロウのレッドデータ掲載状況
いわゆる“レッドデータ”は、絶滅の危険度を評価したレッドリスト(RL)掲載種について、種ごとに解説した書籍がレッドデータブック(RDB)です。クロゲンゴロウは、環境省のRLで準絶滅危惧種と評価されています。
クロゲンゴロウの各都道府県における絶滅危惧種としての評価は、東京で絶滅判定されているほか、群馬・埼玉・神奈川・富山・山梨・福岡・熊本などで絶滅一歩手前の絶滅危惧I類と評価されています。
絶滅危惧I類だと野生ではほぼ見つからず、見つかると十数年ぶりとか、新聞ネタになるとかそういうレベルの希少さです。
クロゲンゴロウについてのまとめ
全国的に減っているゲンゴロウの大型種のなかでは、クロゲンゴロウは個体数が多いとされています。環境省でも準絶滅危惧種扱いですが、2017年にクロゲンゴロウが山梨で記録された事例でまとめられているように、北関東など比較的多い県もあれば、東京や神奈川のようにほぼ絶滅状態の場所まで、まだらな状態となっています。
クロゲンゴロウに関するFAQ
- Q:クロゲンゴロウもゲンゴロウですか?
- ゲンゴロウです!クロゲンゴロウのように黄色い縁取りがない種もいます。
- Q:クロゲンゴロウは販売されていますか?
- クロゲンゴロウは比較的数がいるので、1匹500円〜1000円程度の価格で流通しています。大型種のなかでは、一番手頃な種でしょう。
- Q:クロゲンゴロウとガムシの違い、見分け方は?
- ガムシは35mmから40mmと、クロゲンゴロウの体長20mmから25mmと比べ大型です。わかりやすい見分け方としては、お腹に牙が突き出していたらガムシ(牙虫)です。