ナミゲンゴロウ、ヒメフチゲンゴロウ、エゾゲンゲンゴロウモドキ、マルガタ、モンジ、オキスジ、コバンムシ等が売買禁止される特定第二種指定候補に!

ゲンゴロウ

希少動植物の保護種を選定する専門家会議が今年も開催されています。昆虫ではナミゲンゴロウ、ヒメフチゲンゴロウ、エゾゲンゲンゴロウモドキの大型種のほか、オオイチモンジ(モンジ)やコバンムシも特定第二種指定候補に上がっています。特定第二種では、生体・標本等の売買が禁止されますが、趣味の、飼育者間の無償交換等は禁止対象外です。

2023年からナミゲンゴロウ・エゾゲンゴロウモドキなどが売買禁止される

希少動植物の2023年度からの保護指定種を選定する環境省の専門家会議が2022年12月1日に開催され、ゲンゴロウ(ナミゲンゴロウ)をはじめとする複数のゲンゴロウが候補にあがっています。

追記:その後、2023年1月11日から規制対象になる旨、正式に発表されました。

環境省「令和4年度国内希少野生動植物種新規指定候補種の概要」より

国内希少野生動植物種新規指定候補種の昆虫は以下の通り(資料

  • ゲンゴロウ(ナミゲン)
  • ヒメフチトリゲンゴロウ(ヒメフチ)
  • エゾゲンゴロウモドキ(エゾゲン)
  • (マルガタ)
  • オオイチモンジシマゲンゴロウ(モンジ)
  • オキナワスジゲンゴロウ(オキスジ)
  • コバンムシ

昆虫以外では、ホムラハコネサンショウウオやニホンザリガニも候補となっています。

アメリカザリガニの特定外来指定前にニホンザリガニも保護種に

日本にはアメリカザリガニ、ウチダザリガニ、ニホンザリガニの3種いますが、在来種はニホンザリガニのみ。ウチダザリガニは特定外来生物指定済、アメリカザリガニが来年2023年から条件付特定外来生物指定される方針のため、残ったニホンザリガニに捕獲圧がかかることを見越した指定でしょう。

もちろん、ネットオークションでニホンザリガニ売買が行われていることも踏まえた動きです。

ゲンゴロウの絶滅危惧カテゴリーとの対応状況

国のレッドリストとの対応では、ナミゲン、ヒメフチ、エゾゲン、マルガタ、オキスジ、ニホンザリガニが絶滅危惧Ⅱ類(VU)、モンジとコバンムシが一つ上の絶滅危惧IB類(EN)となっています。

ヒメフチやコバンムシは生息地の減少が著しく、モンジも生息地の分断・孤立化が進んでいるように聞いています。全体に指定は妥当でしょう。気になるとしたら、エゾゲンを指定してゲンゴロウモドキを外した理由は何かあるのかな、程度です。

売買など特定第二種で禁止される行為

特定第二種の前に、「国内希少野生動植物種」の話から。

種の保存法の「国内希少野生動植物種」は、国内で絶滅が危惧される種が指定され、「個体の取り扱い規制」として販売・頒布目的の陳列・広告、譲渡し、捕獲・採取、殺傷・損傷、輸出入等が原則として禁止されます。原則として、とは許可が必要という意味です。研究でも許可が必要だったり、混獲含めに入った時点で違法となり、生息エリアは実質禁止になるなど、大変厳しい法律でした。

その点使い勝手を改善したのが特定第二種で、販売・頒布目的の捕獲・譲渡が禁止される一方、研究目的や趣味の飼育などは規制対象外です。つまり、開発やなど減少要因は色々あるけれども、捕獲圧によるものは確実に規制できる点で、売買が盛んな希少種の保護に役立ちます。

特定第二種の規制
環境省「特定第二種制度の概要について」

特定第二種に指定された種で禁止されること、許されることは以下の通りです。

  • 販売・頒布目的の捕獲・譲り渡し等は禁止。販売・頒布目的でない趣味・研究目的では許される。
  • 販売とは、対価を得て財産権を移転すること。
  • 頒布とは、有償・無償を問わず、不特定多数の者に配り分けること

■禁止される行為

・インターネットオークション・店頭での個体等の販売・購入
・個人間での個体等の販売・購入
・店頭・商業目的のイベントにおける個体等の無償配布

■許される行為

・学術研究や生息状況の調査を目的とした捕獲等又は譲渡し等
・系統保存や野生復帰等の保全を目的とした飼育又は繁殖に伴う個体等の捕獲等又は譲渡し等
・特定の個人に対する商業目的でない個体等の譲渡し等


※該当・非該当ケースについては、状況に応じて個別に判断が必要
※種の保存に影響がないものに限る

ヒメフチの保護種指定がに与える影響

昆虫食のゲンゴロウは、東南アジアから輸入されています。国内で保護種になる「ヒメフチトリゲンゴロウ(ヒメフチ)」も東南アジアに生息しています。昆虫食の多くのパッケージでは、種を区別せずやゲンゴロウが混在していて、SNSにアップされた写真を眺めている限り、ヒメフチも頻繁に混入しています。

種の保存法規制種を輸入・陳列・販売した法人は1億円以下の罰金と法的リスクが高い状態です。

ヤフオクでの駆け込み出品は今年から対策済

行政の手続き上、規制候補種の発表から実施までどうしてもタイムラグが発生します。そのため、ヤフオクでは駆け込み出品・売買が大量に行われる問題がありました。

2022年から保護種になった2枚貝カワシンジュガイはタナゴの産貝として需要があり、規制直前にヤフオクで1万匹x9セット=9万匹という大量出品があったことで話題となりました。

ヤフオクでの売買が指定要因なのに、そのヤフオクで駆け込み出品があるという異様な光景です。これに対し、環境省とヤフオクが連携し規制を早めるなど、一人のやらかしが後世の行政に影響を与える事態となりました。

カワシンジュガイの問題などを受けて、ヤフオクは抜本的な対策に乗り出し、現在は規制種の駆け込み出品は規約で禁止されています。

(3)環境省より、種の保存法に基づいて新たに国内希少野生動植物種に追加予定として情報公開された動植物種(当該動植物種の卵や種子を含みます)
【ご注意ください】
・政令が閣議決定され、環境省が情報公開した時点から出品禁止物となります。環境省の公開情報はこちらをご確認ください。
・情報公開の対象に卵や種子が含まれていない場合であっても禁止とします。

ヤフオク!ガイドライン細則の改定予定について(動植物) -お知らせ – ヤフオク!

なお、レッドリスト掲載の絶滅危惧種・準絶滅危惧種も出品禁止にしたため、今回のゲンゴロウ類は候補種と絶滅危惧種両面でヤフオク出品禁止対象です。

ゲンゴロウの特定第二種指定に関するFAQ

ナミゲン・エゾゲンが保護種になるのはいつから?
ゲンゴロウ、エゾゲンゴロウモドキ等の特定第二種規制の実施は、2023年1月11日から。ヤフオク等大手ネットオークションでの売買禁止措置は候補種発表と同時に行われるため、駆け込み出品はできません。
ナミゲン・エゾゲン等は売買できる?
特定第二種指定により、生体・標本・卵ともできなくなります。
ナミゲン・エゾゲン等をどうしても飼ってみたいんだけど!
販売・頒布は禁止ですので、自分で採集してください。自己採集による個人的飼育は、特定第二種の規制対象外です。
ナミゲン・エゾゲン等はお金でなければ譲渡できる?
販売・頒布にあたらない個人間の無償譲渡は特定第二種の規制対象外です。ただし、金銭に相当する対価を得た場合も有償譲渡扱いで禁止されています。また、Twitterで募集等、相手が誰か証明できないような無償譲渡も頒布とされるリスクがあり避けた方がよいでしょう。
卵・種子の指定って何?
やサンショウウオ等、ヤフオクでの卵塊売買が問題となって特定第二種指定された種では、「卵・種子の指定」が明示的に行われます。捕獲圧・売買圧がかからないようにするためです。

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