昆虫食でおなじみのゲンゴロウは東南アジア産ですが、国内で保護種になる「ヒメフチトリゲンゴロウ(ヒメフチ)」を含む可能性があり、その法的リスクが周知されていないように見えます。2022年12月の環境庁資料によればヒメフチは2023年から種の保存法「特定第二種」となり、売買等が禁止される見込みで、これは同じ種であれば国内外を問いません。
昆虫食のタガメやゲンゴロウの現状と法的な整理
昆虫食のタガメやゲンゴロウは、TVでアイドルが罰ゲームとして食べさせられたり、SNSやYou Tubeなどでも頻繁に写真や動画を見かける存在になっています。
まず、タガメの国内種は、売買が禁止される種の保存法「特定第二種」保護下にありますが、昆虫食で使われるタガメは、外観から容易に区別できる東南アジア産タイワンタガメで別種で、輸入・売買は合法です。
一方、ゲンゴロウの事態は複雑です。種の保存法「国内希少野生動植物種」指定済の「フチトリゲンゴロウ」と、2023年から種の保存法「特定第二種」指定予定の「ヒメフチトリゲンゴロウ(ヒメフチ)」両種とも東南アジアに生息するからです。
しかも、両種は外観から判断が難しい近縁種と混じって生息していて、その区別は交尾器あるいはDNAを見ないと難しいことが知られています。つまり、東南アジア産の昆虫食にはフチトリ・ヒメフチが混じっていて、外観からはわからないルーレット状態です。
昆虫食のパッケージでは調理済のものも多く、その場合さらに識別は困難でしょう。
環境庁レッドデータブックによれば、両種とも東南アジアにも生息していて、同一種であれば国内外産を問わず規制対象です(※同一種であれば国内外産問わない件は、環境省に確認済)。
分布域 インドネシア、フィリピン、インド、中国など南方地域に広く分布し、国内ではトカラ列島宝島以南の琉球列島に分布している。ただし、沖縄諸島における確実な記録はない。
国のレッドデータブック「フチトリゲンゴロウ」
分布域 国外では中国、東南アジア、インド、アッサムから記録がある。国内では奄美諸島以南の南西諸島に分布する。
国のレッドデータブック「ヒメフチトリゲンゴロウ」
種の保存法保護種の取り扱いに違反した場合の罰則
フチトリゲンゴロウは「国内希少野生動植物」指定により陳列・譲渡が禁止されるほか、違反した場合、刑罰対象。
ヒメフチが指定される特定第二種含め、種の保存法に違反した場合、個人は5年以下の懲役あるいは500万円以下の罰金、輸入・陳列・販売した法人は1億円以下の罰金と重い刑罰が課されます。
昆虫食のゲンゴロウについては、タガメ同様「別種である」ことの確認、あるいは関係機関が問題ない見解を出す等、穏当な落とし所を見つけることが望ましいでしょう。
そうでない場合は、販売停止するしかないと思われます。
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