書店に並びだした新世代の図鑑「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」に注目

かねてオイカワ丸さん他が取り組んでいた図鑑「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」が2020年1月23日に発売されました。2019年11月末までに日本から記録された真水生のコウチュウ目とカメムシ目の485種・亜種のうち、480種・亜種を掲載という意欲作です。西新宿のモード学園コクーンタワーに入る「ブックファースト新宿店」にも並んでいるのを確認しました。

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図鑑「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」の見所3点

日本産既知種を羅、生きた水生昆虫の写真、簡単な種の区別方法の記載、執筆陣が現役研究者などが売りとされている図鑑「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」。それはそれなんですが、私的に熱いポイントをお話します。

まずですね、今Twitterの昆虫クラスタって写真の目が肥えていると思うんですよ。例えばAntRoomや丸山先生本などなど、プロの美麗写真が見られる時代になっています。今後出る昆虫本に求められる写真レベルも、上がったと言えるでしょう。

その点「日本の水生昆虫」は豊富な生態写真がメイン。もそうですが標本と生物では発色が全然違います。また生体の白バック写真も一案ですが、個人的には左右で脚の広げ方が違うのが気になります。

「日本の水生昆虫」の生態写真は田んぼや湿地の自然な雰囲気でよい感じ。撮影環境をコントロールしづらい分、生態写真を揃えるにはフィールドにたくさん出て、撮影チャンスが多い人たちである必要があります。

白バックと生態写真が混じったら統一感なくなりますから、「生態写真で行くぞ!ないものは集めるぞ!」という議論があったものと想像します。

次。5500円2.5cm厚と2冊ボリュームな大作ですが、私の関心の中心である大型ゲンゴロウを見てみましょう。

まず表紙の鮮やかなエメラルドグリーンのゲンゴロウは絶滅危惧種の「マル(マルコ)」。種の保存法で捕獲・移動・譲渡が禁じられている今、私も一回見せてもらった程度の希少な昆虫です。ナミゲンゴロウでもでもなくマルコを選んだ所に、こだわりを感じます。

図鑑「日本の水生昆虫(ネイチャーガイド)」

マルコは緑色が強い種で「日本の水生昆虫」のコガタノゲンゴロウ頁は「背面は緑色味のある褐色」、マルコ頁では「背面は褐色味のある緑色」という説明で、この順番!この順番なんですよ!現物を見た人には刺さるポイントです。もしマルコが絶滅してしまったら、このニュアンスは伝わらなくなります。表紙にはそうならないように、という意志が込められていると感じました。

つい最近話題になったタマがあるんですけど、「日本の水生昆虫」にかかれば『しれっと「よく泳ぐ」』なのであって、丁寧に説明するには文字数が足りない制約のなか、伝われ!文字数!のせめぎあいも一興です。

最後に、種の簡単な区別方法の記載は、ありがたいですね。水生昆虫やっていたら、自分が興味がある種以外も頻繁に混じってきます。でも、分類の知識がなければ「わからん」で止まってしまうんです。もし大雑把に特定できれば、世界の解像度が上がります。

余談。コラムでケシゲンゴロウがカイミジンコ特化していることに触れられていましたね。長崎大の大庭先生は本サイトでも何度か引用させていただいている水生昆虫の専門家です。

幼虫はその仲間も含め頭部に突起を持っていることが約90年前から知られていた。しかし、何のためにあるのかは研究者らの間で長らく謎とされていた。それを突き止めたのが、ホシザキグリーン財団の林成多(まさかず)研究員と長崎大教育学部の大庭(おおば)伸也准教授(昆虫生態学)だ。
90年の謎を解明 ケシゲンゴロウ幼虫の角の用途:イザ!

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