美麗昆虫として知られるナミハンミョウですが、実は家庭でも飼育可能。ナミハンミョウは肉食で、餌はミルワームやコオロギなどでOK。産卵させるには赤土ベースの容器を用います。幼虫は穴に潜み餌を待ち受けます。
全人類、ハンミョウをご家庭で飼うべきでは?!
主語が大きくてすみません…。昆虫先生でも特集されるなど、有名昆虫と言ってよいナミハンミョウ。開けた地面にいることが多く、“道教え”の異名の通り、人が近づくと素早く走り去ったり、飛んで移動します。
ナミハンミョウの学名はCicindela japonica。2cmほどの昆虫で、日本のハンミョウとしては最大種でありながら、青緑色に赤が入る、美しい金属光沢が特徴です。大きな眼に立派な大顎を持ち、獲物を捕らえます。
ハンミョウは、よく飛びよく走る生態から、捕らえにくく飼えない昆虫というイメージがありますが、実は普通に飼える種です。
ハンミョウを飼育するメリットは、野外だと不可能な数cmの距離で動き回る姿が見られること。これは野外で見たことがある人ほど、感動する光景でしょう。
あ、最近YouTubeチャンネル「水生昆虫TV」をはじめました。水生昆虫中心に、今回のようにほかの種の飼育方法や生態をアップしていきます。チャンネル登録、よろしくお願いします!100人登録されないと、カスタムURLを取得できないらしいんですよね。
ハンミョウの持ち帰り方
ハンミョウは、いる所には多産し、幼虫の巣穴も大量に見つかります。ハンミョウが乱舞する産地を見つけたので、今春に改めて数匹持ち帰ってきました。ここで大事な話ですが、ハンミョウを持ち帰りたいなら、弱らないよう隙間を埋めることが大事です。動き回ると、弱ってしまいます。
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数日ならプリンカップでも飼育できる
ハンミョウは、一時的に飼うだけならプリンカップなどで良いのですが、産卵させたいなら、赤土ベースの飼育容器を用意する必要があります。ハンミョウは肉食なので、食べ残しや獲物の体液などで臭うようになります。プリンカップは、あくまで一時的な飼育環境でしょう。
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ハンミョウ飼育容器にはクリアスライダーが便利
ハンミョウは暴れまわるような神経質さはないのですが、予備動作なく飛べるので、蓋全開で世話をするのは危険。カブクワ飼育に使われるクリアスライダーが便利です。ただし、クリアスライダーはコバエ対策で密閉度が高いため、蒸れやすい欠点があります。蒸れるとカビが発生するので、蓋を切り取って網を取り付けるなどの工夫が必要です。
産卵用に赤土ベースの土を敷いて、水場と餌場を設けた飼育容器。
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真上からハンミョウ飼育環境を見た所。食べ残しは不衛生になり臭いの原因にもなるので、管理上一箇所にまとめたい。100均の小型タッパーを埋め込んであります。そのまま土の上に置くと、登れません。
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ハンミョウは赤土ベースの土に産卵します。ペアを入れておけば、比較的簡単に産卵します。
園芸用の赤土をすりつぶして、フルイの一番細かい目も通るようにします。結構面倒。
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加湿しながら、5-10cm敷き詰める。ただし、幼虫が成長してきたら試験管などで個別飼育する人も多いようです。
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抜け出しやすいよう、小枝で補助しています。成虫の餌は、ミルワームなど。
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枝を伝って餌場から脱出するハンミョウ。
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ハンミョウ幼虫とその餌
ある日、地面に穴が開いて幼虫が顔を出します。こんにちは!
幼虫の餌に使っている「コクヌストモドキ」。穀物の害虫ですが、幼虫は小さなミルワーム的な生き物です。数がいるなら、コオロギを使ってもよいでしょう。ハンミョウ幼虫2令以降の餌は、コオロギメインにミルワーム混ぜるとかで十分です。
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ハンミョウ幼虫の成長過程
飼育していた親から約3ヶ月でハンミョウ新成虫が誕生したので、成長過程の記録。成虫まで1-2年かかる記述も見かけますが、飼育下で頻繁に餌を与えれば数ヶ月でいけるようです。
ハンミョウはペアで同居させるだけで、頻繁に交尾します。ハンミョウの交尾では、オスが大顎でメスの胸の辺りを捕まえて押さえつける感じです。オスはメスを見つけ次第交尾しようとするため、メスが傷んでしまうケースも見られます。
オスとメスを外見から見分けるのは困難ですが、若干オスの方が小柄です。
ハンミョウの交尾、生生しいですね pic.twitter.com/RcLYRX4wN3
— ゲンゴロウ飼育ブログ (@gengo6com) May 3, 2021
ある日、地面に穴があいて「これは?!」となります。ところでハンミョウ幼虫は非常に臆病でこの写真のように顔が見える瞬間はほとんどありません。5-6匹が成虫になるまでの間、幼虫を見たのは数度だけです。
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こちらは、餌用のコクヌストモドキ幼虫でミニ・ミルワーム的な感じ。コクヌストモドキは穀物害虫ですから逃げない容器で飼ってください。ハンミョウ幼虫に与えるには、ピンセットで穴にそのまま放り込めばOKです。
2日に一度程度与えましたが、もっと少ない頻度でも良いようです。ただし、その場合幼虫期間は延びます。
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穴がふさがって死んでしまったのか?と思っているとある日、一回り大きくなった穴が出現します。1令から2令の生存率はそれほど高くないようで、数割〜半数は死んでしまうようです。飼育下では栄養状態がよいため、野生下よりは多く残りそうです。
私の所では幼虫5-6匹しか出現しませんでしたが、数十匹産む事例も聞いています。
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ハンミョウ幼虫は、生き餌ではなくても半死などのコオロギでも食べます。穴に突っ込んでおくと、気に入らなければ外に放り出します。
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それほど餌を与えていないのに穴が閉じてしまい、死んでしまったか?と不安になっているとある日さらに大きな穴が出現します。ハンミョウは3令が終齢幼虫です。
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ハンミョウ幼虫の巣穴が4つあいています。3令です。餌用のイエコと比べるとサイズ間がわかるでしょうか。
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餌用に投入していたイエコが成虫になって卵を産んだり色々ありましたが、ふと覗くと脱出孔とともにハンミョウ新成虫が誕生していました。正直、いち早く閉じた穴だったので死んでしまったのかと思っていました。
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TG-6で激写。もうちょっと目にピント当てたいですね。
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野生のハンミョウ幼虫を観察
ハンミョウ幼虫の穴は、農道脇の赤土の土手などでも観察できます。密接した穴が固まっていたら、足を止めてしばらく観察してみましょう。意外と臆病で奥に引っ込んでいますが、しばらくすると顔を出す個体もいるはずです。
下の写真でいうと、穴の大きさの違いは幼虫が何令かによります。中央の小さな穴は1令ですね。
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オタマジャクシはゲンゴロウやタガメ幼虫の餌として、またカエルも水鳥や蛇、タガメ成虫の餌として生態系を支えています。初夏はオタマジャクシに脚が生え、上陸する時期。農道脇のハンミョウ巣穴で、不自然な姿になっているカエルたちを見つけました。これは、ハンミョウ幼虫に引きずり込まれているんですね!
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左のカエルはまだ生きていました。右の個体のめり込み具合!!
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