ウミネコの鳴き声がうるさい!台東区・墨田区・江東区・中央区の被害状況と対策方法

東京都の台東区・墨田区・江東区・中央区では近年、カモメの仲間ウミネコが問題になっています。ビル屋上に営巣し、昼夜問わずミャーミャーと響く鳴き声や、大量の糞などの被害が報告されています。当マンションでも今年2023年から屋上営巣が確認され対応検討中です。ウミネコの市街地営巣は東京都のみの特殊な問題で、自然破壊の結果都市進出したのではなく、上野動物園の保護個体を放鳥したものが・拡散した経緯を知らないと、対策を見誤ることになるでしょう。

2024/06追記。以下のTV報道に一部取材協力しました。

東京都のウミネコ問題の概要

東京都では近年、海鳥のウミネコがビル屋上で集団営巣し、鳴き声や糞による被害が問題となっています。深夜早朝も大声で鳴くため、眠れないという方もいるようです。

この問題について、報道では「巣作りに適した場所がないから(市街地に進出した)」と解説されることもあるようです。しかし実際の所、自然破壊のせいで都市進出したのではない、という東京都の特殊事情に注意が必要です。

東京都では元々、諸島部を除き、東京都本土部のウミネコの繁殖は確認されていませんでした。上野動物園が1990年と1994年に、保護個体を数十羽放鳥。不忍池で細々と繁殖していた所、2013年に周辺ビル屋上で営巣が確認されると爆発的に増加し、台東区・墨田区・江東区・中央区に進出しました。

現在その数は数百羽に達し、各地で小集団に分かれコロニーを形成しています。
※元々不忍池には野生個体も飛来していて放鳥組との混合集団を形成したとされる

つまり、ウミネコ問題の個体群は、ビル屋上での繁殖に成功した内陸集団が拡散したという特殊な経緯を持っています。海鳥であるウミネコは、隅田川や東京湾の魚をにしていて、より餌場に近いところに営巣場所を移してきたと考えられます。

東京都のウミネコ個体群拡散経緯

ウミネコは集団営巣でコロニーを形成し、一度成功した場所では翌年も繁殖する習性があります。そのため、根本的な対策としては、ビル屋上にネットを張って巣作りを防ぐ方法が推奨されています。

従来ウミネコは、鳥獣保護管理法の保護下にあり駆除できませんでしたが、2022年4月から運用が変わり、都が許可した業者は、繁殖期に限りや雛の駆除を行うことが可能になりました。この情報がまだ掲載されていない区もありますが、急ぎの対応が必要な場合は区の担当課から紹介してもらうと良いでしょう。

なお、無許可でウミネコを捕まえたり、動物をけしかけたり、卵や雛を排除する行為は鳥獣保護管理法に抵触し、違法です。建物の管理会社やマンション管理組合が非合法な手段を取ると責任問題になります。

業者への依頼やネット設置には費用がかかりますが、組織人としては、あくまで合法的に対処していきましょう。

  • 都市部の市街地で発生するウミネコ被害に関して他事例はなく、現状では東京都特有の事象
  • 1990年代に上野動物園で保護個体を放鳥したものが繁殖・拡散
  • 2003年に屋根での繁殖が確認されて以降、台東区・墨田区・江東区・中央区で被害が確認されている
  • 都の環境局が苦情件数カウントしていて、近年急増している
  • 同じ場所で繰り返し営巣するため、最終的にネットを張って巣を作れなくする対策が一般的
  • ウミネコは鳥獣保護管理法により卵や雛の駆除が規制されていた→2022年4月から、都が許可した業者は巣や雛の駆除が可能になった

ウミネコ被害の実際

今年2023年から、当マンションでも営巣されたため、屋上を確認してきました。

ウミネコ営巣の被害としては一般に糞害と鳴き声があります。また、同じ場所で毎年営巣する習性から、屋上にネット設置等の工事が必要となり、多額の対策費用が発生します。

  • 大量の糞による建物や洗濯物の汚れ
  • 昼夜問わず鳴くことによる騒音

屋上で集団営巣するウミネコ

1羽2羽ならかわいいものですが、ウミネコは集団営巣してコロニーを形成する習性があります。湾岸部では岩山や岸壁などに営巣しますが、ビル屋上の場合緑化した場所を好むとされています。被害が報告されるのは主に繁殖期の4月〜8月です。
#屋上緑化していない場所でも繁殖実績あり

私の場合は、ビル周辺に糞が増えたため屋上を確認した所、視認した範囲で巣10個親20羽、卵15個を確認しました。

マンション屋上のウミネコ巣
マンション屋上のウミネコ巣
マンション屋上のウミネコ巣

巣はかなり簡素。早い場合で1〜数日で卵を産んでしまう場合もあるとのこと。

ウミネコの巣と卵

深夜早朝も大音量で鳴くウミネコの群れ

これは当マンションではないのですが、台東区内で撮影。音声ONにすると、ウミネコの群れが「ミャーミャー」鳴く様子が聞こえます。高いお金を出して最上階に住んだと思ったら、大音量で鳴き続けられるわけで、たまらないでしょう。

朝6時に台東区のマンション屋上で鳴きまわるウミネコの群れ(2022)

ウミネコはカモメの仲間の海鳥。日中は隅田川や東京湾に出て、魚を食べています。夕方に帰ってきると、群れで飛び回ります。は2022年7月の19時台、数十羽の群れ。

夕方移動するウミネコの群れ(2022)

ウミネコによる糞害

ウミネコが屋上の縁に止まって、糞を落としてきます。屋上の縁がかなり汚れている様子。

ウミネコの糞害
ウミネコの糞害(マンション屋上)

営巣すると出入りが増えるため、周辺にも糞が落ちるようになります。場合によっては、近隣から苦情が入ることもあるでしょう。

路上の糞害

2023年当マンションにおけるウミネコ被害の時系列

2023年5月頭 ウミネコ営巣確認

近隣からの指摘で屋上を確認した所、ウミネコ営巣を確認。区と相談の上、区から紹介された業者に依頼し巣・卵を駆除。

2023年5月中旬 ウミネコの鳴き声や糞の被害増加

営巣すると出入りが増えるため、建物周辺の糞が増える。屋上の縁に止まっている個体が見えることもある。早朝深夜の鳴き声など、一部住民はウミネコ被害に気づきはじめる。

建物周辺の糞害
建物周辺の糞害
2023年5月下旬 ウミネコの再営巣を確認

屋上を確認し、巣10個親20羽卵15個を確認。

2023年6月中旬 ウミネコの雛を確認

屋上を確認。卵・雛・雛の死体を確認。専門家によれば、再営巣した分かもしれないが、ほかより遅れているとのこと。

ウミネコの雛

ウミネコ対策の実務

ウミネコ問題については、行政から対策含め情報提供が行われています。

予防的な対策としては以下の3点が挙げられます。

  • 定期的に屋上を点検する
    ウミネコは人の気配がするところは避けるため、巣づくりが行われる4月下旬から週一以上見回りを行います。下見に来ているウミネコに人がいることを知らせましょう。
  • 緑化された場所に防除を設置する
    ウミネコは緑化された屋上を好みます。防鳥ネットを設置し、物理的に巣づくりできなくします。なお浄化槽の隙間など、緑化していない場所での営巣例もあります。
  • 屋上の縁にテグス(釣糸)を張り巡らせる
    ねぐらや糞害を防ぐには、屋上の縁(ふち)にテグスを張る対策も有効です。

一方、周辺住民あるいはマンション住人としては何ができるでしょうか。

周辺住民として

ご近所でいつもウミネコが騒いだりしているビルがあるなら、管理者に連絡するのも一つの方法です。屋上に普段立ち入らないビルでは、気づいていない可能性があります。その際、行政の対策パンフレットなどを添えると問題が理解されやすいでしょう。

なお後述のように、ビル側で対応中でも予算その他の制約で、対策には時間がかかることをご理解ください。

マンション住人として当事者になってしまった場合

鳴き声や糞などから営巣が疑われる場合、管理人・管理会社等に連絡して、屋上をチェックしましょう。

営巣が確認された場合、区の担当課に相談すると、周辺情報も得られて話が早いです。駆除する場合、許可された業者を紹介してくれる場合もあります。個人で勝手に駆除すると、鳥獣保護管理法違反になるので注意。

ただし、駆除した後にまた営巣してしまう場合があるため、また費用が発生する可能性があります。

ウミネコは繁殖成功した場所で、翌年も繁殖する習性があります。根本的に被害を防ぐには、屋上にネットを設置して物理的に巣づくりできなくする対策が一般的です。その費用は作りや屋上の面積によりますが、100万円以上かかる場合もあります。

マンション管理組合の予算では想定していない出費になるため、最低限次の繁殖シーズンに間に合うよう、総会あるいは臨時総会決議が必要です。理事会としては災難ですが、設置事例は多く行政からの資料もあるので、がんばってください。

屋上緑化やめればよいのでは→条例違反

ウミネコが屋上緑化した場所を好むなら撤去すればよいのでは?補助金目当てに屋上緑化するからだ!といった反応を見かけます。

台東区では、緑ゆたかなまちづくりをすすめる「みどりの条例」において、“敷地面積が300平方メートルを超える建築物については、建築面積の20%以上の屋上緑化または壁面緑化を行って下さい。”と定められているからであって、補助金目当てではありません。

なお「みどりの条例」は各区に同様のものがあります(屋上・壁面緑化を義務づける制度一覧)。

ウミネコ問題の行政対応

東京都・台東区・墨田区・江東区・中央区など各自治体で特設ページが設けられています。

鳥獣保護管理法による保護の対象ではありますが、令和4年4月から東京都の鳥獣保護管理事業計画が改定となり、ヒナと卵について東京都の許可を受けた業者は、3月~8月の期間を限定し捕獲できることとなりました。

ウミネコの被害について 墨田区公式ウェブサイト

東京都の「第13次東京都鳥獣保護管理事業計画(2022/4/1〜2027/3/31の5年間)」では、ウミネコについて、鳥獣の適正管理の項において「近年、23 区内の沿岸部における住宅地等で営巣し、糞や鳴き声による生活環境被害を及ぼしているため、適正に対応していく。」との方針が示され、予察捕獲表(P25)へ新規追加されています。

第13次東京都鳥獣保護管理事業計画(P25)

※2ウミネコは東京都レッドリスト(本土部)2020 年度版において、区部・本土部の「留意種」に評価されていることから、本来の営巣環境ではない人工構造物上での繁殖により生活環境被害が発生した場合を対象とし、必要最低数の捕獲に限る。

予察捕獲とは?

野生鳥獣は、鳥獣保護管理法で捕獲が原則禁止されています。その例外が「狩猟」と「許可捕獲(有害鳥獣捕獲等)」です。

予察捕獲とは、有害鳥獣捕獲の形式の一つで、被害が顕著になった鳥獣の生息数を制限するために行われる捕獲のことを指します。鳥獣保護管理法に基づき、都道府県知事の許可を得た者が行うことができます。

ウミネコやドバトのように、人間の生活環境に被害をもたらす野生生物に対しても、この制度が適用されることがあります。

予察捕獲とは
鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の参照条文等

東京都のウミネコ問題に関するFAQ

以下、特に注記がない場合は、東京都本土部(区部)の話です。ウミネコは伊豆諸島等で繁殖していますが、近年まで東京都本土部では繁殖していなかったため、区別されます。

東京都のウミネコは今どの区で問題になっている?
隅田川や東京湾に接する台東区・墨田区・江東区・中央区です。
東京都のウミネコは今何羽いる?
東京都区部には、現在数百羽いるとされます。各地で小集団に分かれコロニーを形成しています。
ウミネコは元々東京都で繁殖していた?
島を除く本土部では繁殖していませんでした。不忍池方面で繁殖が確認されだしたのは1990年代です。
ウミネコの何が問題になる?
ウミネコは集団営巣する習性があり、鳴き声や糞が問題となります。深夜早朝問わずミャーミャー鳴き続けます。
ウミネコを駆除して良い?
卵を生む前の巣は撤去可能ですが、卵や生体は鳥獣保護法の対象で、個人で駆除すると違法です。2022/04から都が許可した業者は繁殖期に限り巣や雛の駆除が可能になりました。お金はかかりますがそう高くないので依頼してみてください。
動物をけしかけたり巣を放棄させれば良いのでは?
巣の損傷につながる行為は、鳥獣保護法違反とみなされる場合があります。1年以下の懲役または100万円以下の罰金いずれかの刑罰が課されます。

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