ミシシッピアカミミガメはミドリガメとも呼ばれ、アメリカから大量に輸入された外来種であることは皆さんご存知でしょう。現在、野外で見つかる亀の6割にも達し在来種を圧迫していることから、駆除を進めている自治体もあります。それでは、アカミミガメを見つけたらどうすれば良いでしょう。拾ったり捕獲した場合の法規制も確認します。
ところで「アカピッピミシミシガメ」という呼び方もすっかり定着した感ありますね。
ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)をめぐる現状
アメリカ原産のミシシッピアカミミガメは、1950年代後半から幼体が「ミドリガメ」として輸入され、屋台やお菓子の景品として1990年代半ばには年間100万匹も輸入されました。アカミミガメの幼体は5cm程度ですが成長すると甲羅で30cm近くになるため、野外に捨てられた個体が在来種を圧迫するなど、生態系に害を及ぼしています。近年の調査では、野外で見つかる亀の6割程度がアカミミガメと言われています。
ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)を見つけたらどうすればよいか?
現在、アカミミガメは国の法規制対象ではありませんが(後述)、自治体レベルで駆除をすすめている場合があります。それ以外では、人体に危険を及ぼす可能性があるカミツキガメ・ワニガメとかでなければ、行政・警察に連絡しても特に何も行われないと思います。
丹波篠山市では、お城の堀のハス群落がアカミミガメによる食害で消滅する被害があり、対策に取り組んでいます。
絶滅危惧種のオニバスなどを有する明石市では、環境省や神戸市と連携した「明石・神戸アカミミガメ対策協議会」を設立し、アカミミガメ等の水生の外来生物の防除調査や、市民への啓発活動等の事業を実施し、生態系の保全を目指し取り組んでいます。
これは、環境省としても将来のアカミミガメ規制・駆除に向けた体制や駆除技術確立という意味合いがありそうです。
引き取りは行っていませんが、ため池が多く残る名古屋市では、在来のイシガメや生態系保護のため、アカミミガメの防除を行っています。
国による法規制がされていない現状では、野外でアカミミガメを見つけたとしても、自分で生涯飼うか、自分で引取先を見つけるか、どちらかの選択肢になります。
また、アカミミガメ防除に関するFAQはこちらがよくまとまっていますので、ご確認ください。
外来種関係の基礎知識
以下、外来種や法規制周りの基礎知識を説明していきます。
「外来種」と「侵略的外来種」の定義と区別
近年、TV番組などの影響で外来種は悪、というイメージもありますが、厳密には外来種の定義は以下であり、それ自体は善悪や駆除の有無の基準ではありません。
導入(意図的・非意図的を問わず人為的に、過去あるいは現在の自然分布域外へ移動させること。導入の時期は問わない。)によりその自然分布域(その生物が本来有する能力で移動できる範囲により定まる地域)の外に生育又は生息する生物種(分類学的に異なる集団とされる、亜種、変種を含む)。
環境省
外来種のうち、侵略性が高い種が「侵略的外来種」として駆除・規制の必要性が高い種、となっています。よく、食って食われては生態系なのだから野生に任せればよいのだ、という言説を見かけますが、人為的に導入された種が、生態系、人の生命・身体、農林水産業等へ被害を及ぼしているから対策される、という関係を認識してください。
外来種のうち、わが国の生態系、人の生命・身体、農林水産業等への被害を及ぼす又は及ぼすおそれがあるなど、特に侵略性が高く、自然状態では生じ得なかった影響をもたらすもの。
環境省
「特定外来生物」では何が禁止される?
法的には、「外来生物法」で「特定外来生物」に指定された種は、様々な規制対象となります。
- 飼育、栽培、保管及び運搬することが原則禁止
- 輸入することが原則禁止
- 野外へ放つ、植える及びまくことが原則禁止
- 譲渡・販売は原則禁止
「原則禁止」とあるのは、許可を受ければ可能ということで、自己判断で勝手に可能になるわけではありません。
特定外来生物には、有名な所でアライグマやブラックバス、水辺ではウシガエルやアメリカザリガニを除く全ての外来ザリガニが指定されています。
よくあるシーンとしては、特定外来生物を野外において捕まえた場合、持って帰ることは禁止されていますが(運搬することに該当)、その場ですぐに放すことは規制の対象とはなりません(釣りでいう「キャッチアンドリリース」も規制対象とはなりません)。
混獲が即違反になることを避ける実務的な目的の一方、ブラックバスのように釣り資源を維持するためにキャッチアンドリリースOKとなっている面では微妙ですね。
なお、ブラックバスのキャッチアンドリリースを禁止している自治体もありますので、個別に確認してください。下記は、屁理屈こねるバサーを論破している宮城県のページ。また、哺乳類や鳥類は特定外来生物であっても駆除する場合は「鳥獣保護法」の許可が必要です。
ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)など爬虫類にはサルモネラ菌がいて危険!という話
そういえば聞いたことあったなレベルだったのですが、爬虫類由来のサルモネラ菌感染事例は毎年発生しているそうです。サルモネラ菌に感染すると、胃腸炎など食中毒症状を起こします。
特にカメ由来のサルモネラ菌事例が多く、幼児や高齢の方は特に危険です。
- ミシシッピーアカミミガメ(ミドリガメ)との関連が強く疑われた小児重症サルモネラ感染症の2症例
- 小さいカメ由来のサルモネラ症集団発生―米国
- ペット用水棲カメにおけるサルモネラ保菌実態と汚染飼養水の殺菌処理方法
上記論文は1985年と古いですが、カメ類の飼育水の50%からサルモネラ菌が検出され、アカミミガメは60%と一番高かった、とのことです。
ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)は飼育禁止になる?
アカミミガメとアメリカザリガニは、生態系に対する侵略性が高く、特定外来生物指定の目玉となる種ですが、あまりに飼育数・生息数が多いため、既存法制で対処できず、現在は規制対象になっていません。
アカミミガメとアメリカザリガニについては、害があるのに規制しないのは現状追認になるのでは、という議論があり、次回の外来生物法の改正でこれらに対処するカテゴリーの新設が予想されています。
その場合、輸入・譲渡・売買・放流などが禁止になる一方、既存個体の飼育は個別に許可不要になるものと思われます。ただし、繁殖した個体をどうするかなどは課題になってくるでしょう。
ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)に関するFAQ
- Q:ミシシッピアカミミガメは、規制対象?
- ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)は、生態系や農産物に被害がある侵略的外来種ですが、現在はまだ「特定外来生物」指定などの法規制されていません。
- Q:ミドリガメには“菌”がいる?
- 2005年にミドリガメ由来のサルモネラ菌で子供が重症になった事例があり、注意喚起されるようになりました。毎年発生していて、爬虫類の糞からは半分〜90%近い保有率だったという研究もあります。詳しくは記事本文をご確認ください。
- Q:子どもがアカミミガメを拾ってきたら?
- アカミミガメは子どもの頃は小さくても成長すると甲羅で30cmサイズになります。法規制されていなくても、生態系を乱す侵略的外来種であることから、飼うなら捨てたりせず、一生飼う覚悟をしてください。
- Q:アカミミガメを引き取ってくれる所はある?
- アカミミガメは個体数も多くまだ法規制されていない種であることから、引き取ってくれるような自治体はほとんどありません。駆除などで大量に処分する場合は、業務用冷凍庫などが用いられます。