街灯(水銀灯)が原因でタガメの地域個体群が絶滅状態になった事例が複数ある件

タガメ飼育水槽

タガメの減少原因は環境破壊と農薬が大きいとされますが、もう一つタガメ固有の原因として、街灯(水銀灯)が挙げられます。知識として知っている方は多いと思いますが、調べた所水銀灯設置からたった数年でタガメの地域個体群が絶滅状態になった事例が複数見つかったので、まとめます。

タガメの減少原因は?

日本最大の水生昆虫であるタガメは、全国的に減少し2020年から種の保存法の「特定第二種」に指定され、販売目的の捕獲・譲渡が禁じられました。では、タガメが減少した原因は何でしょうか?

まず、タガメは環境省のレッドデータブックで、絶滅の危険が増大している「絶滅危惧II類(VU)」に分類されています。

その資源状況としては“1950年代までは都市近郊を含め、国内の大部分の地域でふつうに見られた昆虫でした。しかし、1980年頃までには大部分の水田やため池からその姿を消し、各地から地域的な絶滅が伝えられました。”としています。

さらに、レッドデータブックではタガメの減少原因として、農薬と環境破壊を挙げています。

  • 農薬に敏感で非常に微量の濃度でも成長を阻害されるか、死んでしまう
    →大部分の水田やため池から消滅。丘陵地のため池で生き残る
  • ゴルフ場などの乱開発で丘陵地のため池も破壊され、芝生の除草剤も影響

特に、タガメは水田害虫のカメムシやゾウムシ対策として使用されるピレスロイド系殺虫剤、カーパメート系殺虫剤に対する感受性が高く(愛媛県レッドデータブック国立環境研究所,1995 ; 昆 野,2000 c)、直接の暴露以外に餌経由でも死亡してしまう敏感さです。つまり、タガメは無農薬が保証される場所でないと、生き残れません。

街灯(水銀灯)設置をきっかけにタガメが激減した事例

タガメが街灯に集まりやすい性質をもつことは知られていますが、地域の個体群が絶滅するほどの影響がある、とは知りませんでした。複数の事例が見つかったので、まとめます。

環境庁がタガメ減少原因の一つに水銀灯を挙げている例

環境省が1978・1979年度に調査を行い、1982年に結果を発表した「第2回自然環境保全基礎調査」という資料があります。40年以上前になりますが、タガメも登場するので、当時の生息状況や減少原因の認識を確認してみましょう。

まず、40年前のタガメの生息状況として、すでに東京、新潟、石川、岐阜、香川、愛媛、高知、福岡、長崎9県で絶滅したとされています。絶滅または減少の要因は「水田その他への薬剤撒布が生息数の減少または絶滅の主因」です。

くわえて、「強力な水銀灯が観光地(特に山地)や自動車道に設置されたことにより誘殺された数はおびただしいものであったろうと思われる。」と水銀灯が挙げられている点に注目されます。

結果として、当時のタガメ生息状況の認識としては「本種はかっては全国的に普通に分布したが、全国の水田地帯への多量の農薬投与、広い果樹園地帯への殺虫剤使用の加重などが主因となって、全国的な密度低下が起こり生活排水による汚染がこれに追討ちをかけ、個体数の激滅、地域的な絶滅による分布地の分断や局地化が進み、現在では本州北部と中部地方、四国、九州の大部分で絶滅に近い状態を生じているのが現状」と結論づけています。

これは、現在のレッドデータブックでタガメは1980年頃には姿を消した、している部分と一致します。

水銀灯設置をきっかけに、仙台広瀬川のタガメ地域個体群が絶滅した事例

昆虫におよぼす屋外照明等の影響 ことにタガメ, スズメガ類およびコウチュウ類について(小野泰正, 1995)」を取り上げます。筆者の小野氏は、上述の「第2回自然環境保全基礎調査(1978)」で、指標昆虫として全国調査が行われたタガメに関し、岩手・宮城両県の調査責任者と、東北地方の総括を担当しています。

同調査では、東北地方のタガメの生息状況は、15箇所確認された福島県を別として、各県数カ所しか生息地が確認できず、すでに普通種ではなかったとしています。

次に、仙台市街地、青葉山を付近にかかる「澱橋(よどみばし)」がタガメに与えた影響について。1961年に現在の「澱橋(よどみばし)」にかけ替えられた際、高圧水銀灯が設置されると、多くのタガメが集まりました。

1963年に一日おきに調査した所、5 月から7月下旬に多くの個体が飛来し、総計では50匹でした。周辺にはため池等の止水域がなく、これらの個体は広瀬川河川敷由来と見られます。タガメの飛来は翌年以降激減し、1968年以降確認されていません。この付近での工事は後年のもので、結論として水銀灯がタガメの地域個体群絶滅の原因としています。

徳島市で水銀灯に集まるタガメが数年で激減し、絶滅状態となった事例

徳島県版レッドデータブック(2001)によれば、農薬等で減少した個体数が、水銀灯の設置により短期間に激減し、ほとんどの場所で絶滅した、としています。なかなか生々しいですね。

徳島市内でも約 40 年ほど前から、あちこちに水銀灯が設置されるようになり、眉山や徳島駅前のバスのターミナルなどに照明がついた頃には、大量のタガメが飛来し、踏みつけられた死体が山のようになっていたという話を聞いている。

しかし、このような現象は 1-2 年しか続かず、飛来した個体はすべてそこで死んでいったものと思われる。このような性質を持つが故に、その付近の本種が絶滅状態になるのはわずか 1-2 年しかかからず、現在では、くり返し調査を行っても発見できていない。

山間部での個体の減少あるいは絶滅を引き起こしたのは、街路灯の設置と共に、学校の校庭に設置された夜間の校庭解放のための照明装置であったと思われる。


現在、徳島県で生息が確認されているのは 1 箇所だけである。

徳島県レッドデータブック

タガメが生息できる環境とは

6cm以上に達する日本最大の水生昆虫タガメですが、環境破壊にくわえ、農薬や水銀灯が脅威になっていることがわかりました。

徳島県レッドデータブックにあるように、「現在、我が国の平地ではほとんど見られない。かろうじて生き残っているのは、水田が多く、その周辺に池などがあり、さらにまわりに水銀灯などの街路灯や、橋、トンネルなどの照明がない山間部に限られてきている。」という現状になっています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です