タガメ交尾の様式は知っていても、実際の行動を見たことがある人は少ないのではないでしょうか。タガメのオスは水面を揺らすポンピングでメスを呼び、出会ったペアが交尾して産卵に至ります。
タガメの交尾の流れ
冬眠から目覚めたタガメは6月下旬をピークに繁殖活動を行います。こうした繁殖活動に入る産卵条件は、日照条件と水温が関係しています。
飼育下では餌をよく食べる、暴れたり容器を登ったりするなどの行動が見られるようになります。力も強く、隙間から脱走してしまうこともあるので注意しましょう。
日本最大の水生昆虫であり、生息密度が低いタガメの場合、交尾の前にまずペアが出会わなければなりません。タガメの場合数km飛翔することが知られ、その際灯火に引き寄せられてそのまま死んでしまう要因になっています。
一方のオスですが、体を上下させて水面を揺らす「ポンピング」という行動でメスを呼びます。こうしたポンピングはコオイムシでも見られます。
下記動画のように、普段は餌を待ち構えて動かないタガメが、繁殖期は活発に動き回ります。
こうしてオスとメスが出会うと、産卵に適しているか確認するように支柱を登ったり降りたりなどした後、交尾に至ります。
タガメが産卵する様子の写真・動画
タガメの場合、卵塊をオスが保護する生態はよく知られていますが、産卵中オスが何をしているかご存知の方は少ないと思います。タガメのオスは水中と卵塊を行ったり来たりしながら、交尾を繰り返します。メスも産卵を中断して交尾を受け入れます。
なおコオイムシでは卵1個ごとに交尾しますが、タガメの場合毎回ではないようです。
タガメの産卵には2時間程度かかりますが、泡を出しながら上から下に卵を産み付けることで、卵塊を形成していきます。
産卵直後の卵は緑色で、30分から1時間経つと縞々の模様が浮き出てきます。
タガメ雄による卵塊保護
タガメではオスが卵塊を保護する習性が有名ですが、その目的は外敵からの保護に加え、給水という要素が大きいことはあまり知られていません。なんらかの理由でオスがいなくなった卵塊は、孵化しません。飼育下では人間が霧吹きすることで孵化まで持っていくことが可能です。
水中で産卵し孵化する種と比べ、水上に産卵するタガメはまだ完全に水中に適応していません。卵が大きくなることで、体積比の表面積が減り、水中では酸素供給が足りないという事情があるのかもしれません。
飼育下では頻繁に見られるタガメ交尾と産卵
タガメはシーズン3-4回程度産卵するため、飼育下では毎週のように産卵する時期が出ます。私の場合オス1メス2で新成虫が産んでしまったものを含めシーズン10卵塊産卵しています。
オスは卵塊を保護している10日ほど交尾に関心を示さないため、オスメス同数だとメスの方に待ちが発生してしまいます。ただでさえ生息密度が低いタガメの場合これはロスになるため、メスが卵塊を破壊することでオスを獲得する特異な習性が生まれたと考えられます。