【昭和レトロ広告】お菓子の景品が「アマゾンのミドリガメあげます!」だった時代

大量に輸入されたミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)が、野外に放され社会問題になっていることは、ご存知の方も多いでしょう。今回、1966年にお菓子メーカーがミドリガメを景品としていた広告を入手したので公開します。そういう時代もあったんです。

ミドリガメを景品とするお菓子の広告

これが、森永製菓が1966年の週刊マーガレットに出していた広告(クリックで拡大)。原本にあたった画像はネット初出でしょう。

「森永スキップとチョコボールでアマゾンの緑ガメをあげます! 」キャンペーン概要

“世界でも珍しい 愛玩用のカメさん。大きさは4センチから5センチ。コウラは美しい緑色。アマゾンやミシシッピーから海を超えて…到着!”

  • 応募期間:〜1966年8月14日(開始日不明)
  • 景品・当選者数:緑ガメ・毎週3000名(別資料によれば合計15000名)
  • 当選発表・発送方法:毎週火曜日抽選。(株)東京水族館から当選者へ直送。
  • 応募資格:森永スキップ(30円・50円)とチョコレートボール(30円)の空箱100円分を一口として応募。30円の製品は3箱でも1口。

上野水族館飼育係長 杉浦宏氏が「緑ガメは 可愛くて丈夫なので 世界中の動物愛好家が ペットにしています。」とコメントしています。今なら侵略的外来種を配る話に動物園がお墨付きを与えることはないので、時代感ありますね!

後述しますが、発送方法は「プラスチック石鹸箱に空気穴をあけてカメの赤ちゃんを入れてふたをし、その石鹸箱をそのまま封筒に入れ、ポストへ投函する」というやや乱暴なもので、実際死着した例もあるそうです。まだ暑い8-9月に郵送すればまあそうなりますよね…。

実際に送られたのはコロンビアクジャクガメだった

別パターンの広告では「南アメリカ・アマゾン産の緑ガメ」としていますが、ミシシッピアカミミガメは北アメリカ原産でアマゾン産ではありません。また、実際に送られたのは近縁のコロンビアクジャクガメが中心だったとされています。コロンビアは南米北端で、アマゾン川流域ではありません。

コロンビアクジャクガメはその後コロンビア現地で保護されるようになり、1970年代以降は流通が激減したことから、ミシシッピアカミミガメが「ミドリガメ」を代表する種となっています。

ミドリガメブームの推移

流れで書いてしまいますが、ミドリガメ輸入が年代によってどう変わっていったか。

ミドリガメは1950年代から流通し始め、1960年代にはお祭りの露店で「カメすくい」されたり、金魚屋で販売される人気のペットに成長しました。

個人的に気になっているのは、1965年末に公開された映画「大怪獣ガメラ」との関係です。ガメラシリーズ第一作であり、ガメラは少年が捨てたミドリガメが成長したもの、という描写があります。

しかし、「大怪獣ガメラ」上映開始は1965年末なので、1966年の森永製菓キャンペーンが応募締切8月であることを考えると、時間がありません。両者が独立した話だったのか、ガメラに刺激を受けて景品をミドリガメにしたのか、どちらでしょう。いずれにしても、景品キャンペーンはTV CMされ、ミドリガメブームの一端を担いました。

一方原産国アメリカでは、ミシシッピアカミミガメのペット向け養殖が行われていましたが、1975年にサルモネラ菌対策として幼体の販売が規制され、その分が日本を含む海外に輸出されました。ペットショップやホームセンターを始め、1990年代までUFOキャッチャーなどでの販売事例があります。

その後、2013年の動物愛護法制定により、UFOキャッチャーや露店の「カメすくい」には第一種動物取扱業の登録が必要となり、実質的に消滅。2014年に段階的な法規制を行う方針が示され、更に輸入量が減って現在に至ります。

当時の週刊マーガレット

広告掲載号では、加山雄三さんが表紙を飾っています。週刊マーガレットでは、映画や演歌のスターが表紙を飾る仕組みになっていたようですね。1966年で50号近く発行されていますが、懸賞の応募が8/14締め切りであることを考えても、広告を確認できたのは2冊だけでした。

また、本キャンペーンにはモノクロ含め複数のバージョンが確認されていますが、当時カラーページは表紙から10ページほどと裏表紙(裏表紙裏)の十数ページに限られていたためでしょう。

週刊マーガレット表紙(1966)
週刊マーガレット表紙(1966)

ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)問題とは?

ミドリガメすくい
ミドリガメすくい

アメリカ原産のミシシッピアカミミガメは、1950年代後半から幼体が「ミドリガメ」として輸入され、1990年代半ばに年間100万匹も輸入されましたが、近年では5万匹前後に減っています。

ミドリガメとして売られている頃は5cm程度ですが、成長すると甲羅だけで20-30cmに達し、飼いきれず野外に放たれたものが在来種を圧倒し、「自然しらべ2013 日本のカメさがし!」によれば、野外で確認されたカメの約6割がミドリガメという状況になっています。

甲羅干しするミシシッピアカミミガメ
甲羅干しするミシシッピアカミミガメ

数が多すぎて既存法制では対応できないことから、ミドリガメとアメリカザリガニは、対策が必要なのに規制できていない大巨頭と言われています。

  • お菓子の景品として毎週3000人に配られた時期もあった
  • 環境省の調査では2013年時点で約110万世帯で約180万匹を飼育
  • 2016年の調査で野外で800万匹弱が生息と推計
  • 外来生物法改正による規制が検討されている

ミドリガメ広告の経緯を調べる

以下、どうやって調べていったかという話。ミドリガメがお菓子の景品とされていた件、ネットでも広告の画像が見つかりますが、高精細画像はないようです。半世紀前、私が生まれる前の話ですが、これは経緯を調べて原本を見てみたい!

結論からいうと、1965年に発売された森永製菓「チョコレートボール」の景品としてミドリガメが配られていた時期があります。

  • 「チョコレートボール」は現在の「チョコボール」の前身となるお菓子
  • パッケージには、キョロちゃんではなく、TVアニメ「宇宙少年ソラン」のキャラクター(リス)が描かれていた
  • 「チョコレートボール」は、1966年のアニメ放映終了とともに販売終了した
  • 現在の「チョコボール」は1967年発売
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調べた所、ミドリガメがお菓子の景品として配られていた件は有名で、複数の書籍で触れられています。書籍「みんながしらないカメの話」では「プラスチック石鹸箱に空気穴をあけてカメの赤ちゃんを入れてふたをし、その石鹸箱をそのまま封筒に入れ、ポストへ投函する」という発送方法や週3000匹合計15000匹だったことなどが触れられています。

著者の杉浦 宏さんは、上野動物園、井の頭自然文化園などで飼育員を歴任し、複数の著作があります。広告に名前が出ていたご本人による本なので、事情は正確であろうと思います。

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書籍「ちびっこ広告図案帳―ad for KIDS:1965‐1969」では、1966年の週刊マーガレットに掲載された広告が掲載されています。ネットに出ている画像はこの辺りの書籍が出典でしょう。

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森永製菓「チョコレートボール」の販売期間は1965-1966年と短いので、期間もかなり絞れました。後は1966年の週刊マーガレットを虱潰しに調べるだけです。

マーガレット|書誌詳細|国立国会図書館オンライン では1966年に16巻収蔵で、全巻チェックしましたが未掲載でした。週刊なら年間50冊くらいあるので、抜けている巻が多そうです。

次に出版界隈の人に聞いたところ、明治大学「現代マンガ図書館」を紹介されました。こちらは1966年の週刊マーガレットをほぼ全巻収蔵していて、リファレンスサービスから掲載号を特定できました。

なお、「現代マンガ図書館」の古い年代の資料を閲覧するには、資料保護のため有料会員のうち一日会員ではなく月間会員または年間会員になる必要があります。

そのほか、調べきれていない件は、以下です。

  • TVアニメ「宇宙少年ソラン」は、1955年から1966年まで森永製菓の一部提供で放映。ミドリガメ景品のTV CMされていた話もありますが、裏が取れていません。
  • Wikipediaによれば「宇宙少年ソラン」は「週刊少年マガジン」1965年20号から1966年45号に漫画掲載されていたので、ミドリガメ広告掲載されていた可能性が高い(未調査)。
  • ミドリガメ今昔 | 垣屋源八朗の身皮物語 に、当時の森永製菓社員に聞いた裏話が載っています。ほかでは出ていないオリジナル情報です。新たに裏は取れないと思いますがリンクしておきます。
  • 生き物を景品にするのは森永製菓が初めてではありません。江崎グリコの「ア-モンドグリコ」が昭和34年3月に手乗り文鳥を景品にする新聞広告を出したり、昭和31年に「幸福の小鳥さがし」で小鳥が当たるキャンペーンを実施しています。新聞は収蔵されているでしょうから、探せば原本が見つかるはずです。

ミドリガメがお菓子の景品だった件に関する興味深いTweet

当時ミドリガメ懸賞に応募し、送られてきた人。「ボール紙で出来た石鹸箱みたいな物の中に生きたミドリガメが濡れた紙に包まれて入っていた。」と具体的なお話。

森永製菓が直接ミドリガメを輸入したわけではなく、輸入業者などを経由したわけですが、おそらくその関係者さん。2019年なので最近のTweet。

なお、本キャンペーンには最低4パターン広告があったことを確認しています。

私の力不足で直接お話を聞くことはできていませんが、半世紀前の話で、当時のことを直接知る人も減っています。まだ間に合うので、興味がある方は引き継いでいただければと思います。

外来種と侵略的外来種の定義

おさらいになりますが、外来種問題の基礎知識。「」と「特定外来種」は明確に定義されているので、人間も自然の一部だ!とか混ぜっ返さないようにしましょう。

外来種のうち、生態系、人の生命・身体、農林水産業等へ被害を及ぼすものが「侵略的外来種」とされ、特に対策が必要な種は、外来生物法の「特定外来生物」指定で輸入や飼育・売買・放流などが禁止されます。

特定外来生物」には、ヒアリやカミツキガメ、アライグマ、ブルーギル、バスなどが指定されています。

外来種の考え方 外来種が駆除対象になるかは侵略性次第、という話
外来種
導入(意図的・非意図的を問わず人為的に、過去あるいは現在の自然分布域外へ移動させること。導入の時期は問わない。)によりその自然分布域(その生物が本来有する能力で移動できる範囲により定まる地域)の外に生育又は生息する生物種(分類学的に異なる集団とされる、亜種、変種を含む)。

■侵略的外来種
外来種のうち、わが国の生態系、人の生命・身体、農林水産業等への被害を及ぼす又は及ぼすおそれがあるなど、特に侵略性が高く、自然状態では生じ得なかった影響をもたらすもの。
環境省公式サイトより

ミシシッピアカミミガメは外来生物法の改正を視野に規制が検討されている

ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)とアメリカザリガニは、2005年の「特定外来生物」制度の施行当初から、指定対象として検討されてきた目玉的存在ですが、「既に蔓延している地域が多く、またペットとしての飼養も極めて多いため、適正な執行体制の確保や効果的な防除が困難である」として除外されきました。

これについては、2015年に作成された「外来種被害防止行動計画」において、以下の大方針が明記され、アメリカザリガニとミシシッピアカミミガメを念頭に外来生物法の改正が検討されています。

大量に飼養されている侵略的外来種であるミシシッピアカミミガメ等について、大量に捨てられること等の影響が出ないような対策を実施した上で、段階的な法規制の導入を行うこと等を検討します。

外来種被害防止行動計画」P84
アカミミガメ 侵略的外来種アカミミガメの「特定外来生物」指定に向けて法改正が検討されている件

今は、時代が違う

ミドリガメがお菓子の景品として配られていた話は、現在のチョコボールの前身となるチョコレートボール時代のもので、TVアニメ・CM・雑誌など複合的に行われた大掛かりな販促の一環でした。景品にできるほど安かったということでもあり、全国的にミドリガメブームが起こり、大量に輸入されるきっかけの一つと言われています。

お菓子の景品競争という側面があったにしろ、個別の企業がどうこうではなく、当時はそういう時代だった、ということでしょう。例えば、現代はドブ川も減り、「せめてコイが住めるきれいな川に!」という時代でもありません(コイも外来種で、放流すると水草や在来種が激減するのでやめましょう)。時代にあわせて、知識をアップデートしていく必要がある、ということですね。

ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)とアメリカザリガニは、外来種問題の二大巨頭であり、将来の法規制にあたっては社会的な混乱を最小限に抑える舵取りが必要です。一方で、うまくいけば外来種問題の啓蒙が一気に進むという期待もあり、今後の展開を見守りたいと思います。

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