ペットとして人気のミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)には、毒があります。毒といっても食中毒の原因となるサルモネラ菌で、毎年症例があり子どもや高齢者が感染しています。アメリカでは、衛生上の理由で子ガメの販売が禁止されているほどです。
昭和の「ミドリガメ」ブームと毒性報道による遺棄
ミドリガメは、アメリカを原産とするミシシッピアカミミガメ類の通称です。ミドリガメは、お菓子の景品にされたことがきっかけでブームとなり、その後遺棄された個体が野生に定着しました。その数は、野生で見られる亀の7割に達するという調査もあり、在来種を圧迫する原因となっています。
ミドリガメが大量に遺棄されるようになった原因
ミドリガメは1950年代から流通し始め、1966年にお菓子の景品となったことでブームとなり、記録がある1990年代には毎年100万匹が輸入されていました。
一方原産国アメリカでは、ミシシッピアカミミガメのペット向け養殖が行われていましたが、1975年にサルモネラ菌対策として幼体の販売が規制され、その分が日本を含む海外に輸出されたのです。
2013年の動物愛護法制定により、UFOキャッチャーや露店の「カメすくい」には第一種動物取扱業の登録が必要となり、実質的に消滅。2014年に段階的な法規制を行う方針が示され、更に輸入量が減って現在に至ります。
ミドリガメは長生きで大きくなる
ミドリガメは、幼体の頃は5cm程度で緑色ですが、成長すると緑色は失われ黒っぽい地味な色になります。甲羅で30cmくらいに大きくなり、寿命は数十年あります。つまり、ミドリガメは気まぐれに飼えるような生き物ではなく、野外に遺棄される原因の一つとなりました。
ミドリガメはサルモネラ菌を保菌していて、食中毒原因となる
ミドリガメをはじめとする爬虫類は、食中毒原因となるサルモネラ菌の保菌率が高いことで知られています。保菌率は50%〜90%という調査もあり、ガチャなら全員当選も同然の状態です。
糞尿経由で飼育水に溶け出したミドリガメのサルモネラ菌は、手指経由で口に入り食中毒を引き起こします。体が弱い子どもや高齢者の発症例が多く、亀に触れる機会が多い子どもはリスクが高いわけです。
爬虫類のサルモネラ菌症例では、お腹を下す胃腸炎等の軽いものだけでなく、敗血症・髄膜炎などの重篤な事例も確認されていて、厚生省が特集ページを作って注意喚起しているほどです。
「ミドリガメ」ブームの後、1970年代にこうしたミドリガメの毒性が複数報道され、さらなる遺棄を招くことになりました。
ミドリガメは、数年後の法規制が迫っている
2022年現在、ミシシッピアカミミガメは外来生物法で法規制すべく手続きが進行中で、早ければ2023年から規制されます。生態系に害があるから規制が検討されているわけで、規制前でも野外に放出しないようにしましょう。
今回の法改正では、個人の趣味の飼育はOKで、輸入・売買・放流は禁止になる方向性です。既に飼っている個体については、野外放出せず飼い主の責任として終生飼育しましょう。
ミドリガメのサルモネラ菌は、どうにかできるのか?
ミドリガメのサルモネラ菌は体内に保菌しているため、飼育水を変えたり体表をきれいにしても意味がありません。また、糞尿経由で飼育水や飼育容器、放し飼いした場合は床などに広がることにも注意が必要です。
触った後はよく手洗いしたり、室内で放し飼いしないなどの対策が求められます。大人はともかく、幼児はあちこち触ったり口に手を入れてしまうもの。完全に親が世話するか、子どもが生まれたら飼育を控えるなどする必要があるでしょう。