昆虫図鑑『学研の図鑑LIVE新版』レビュー

オオムラサキ

発売前から話題の昆虫図鑑『学研の図鑑LIVE新版』。子ども用に予約していますが、Kindle版を自分用に購入しました。以下レビューしていきますが、すばらしい出来。多くの人の記憶に残る特別な一冊になることでしょう。

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学研と丸山さんがタッグ!という意味

学研の昆虫図鑑は半世紀の歴史を持ち、累計200万部とある程度ベストセラーが約束された書籍。無難にリニュアールする方法もあったはずだが、監修が丸山先生なのだから、それで終わるはずがない。

丸山宗利先生と言えばTV番組の情熱大陸やNHK子ども科学電話相談回答者のほか、書籍『昆虫はすごい』『きらめく甲虫』『とんでもない甲虫』ほかのヒットで知られる昆虫学者。『昆虫はすごい』は発行部数累計14万部と、昆虫の枠を超えて一般書の領域に達したベストセラー。

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丸山先生の昆虫本の特徴は一つは深度合成であり、もう一つは『とんでもない甲虫』共著の福井敬貴さんのように、若手や専門家を巻き込む力にある、と個人的には思う。福井敬貴さんは、標本作成の名手として知られる。

しかし、今回は深度合成を使わなかった。

昆虫図鑑『学研の図鑑LIVE新版』が深度合成を売りにしなかったのは、全面にピントが合わないような小型種で違いが出る技術であることや、書籍『驚異の標本箱』で深度合成の現時点での最高峰に達したことが考えられる。

そこで、新たなチャレンジとして取り組んだのが、全種“生きている昆虫の写真”で掲載するというコンセプトだ。はっきり言って尋常ではない。学研と丸山先生、実績ある両者がタッグを組んだからこそ、予算や説得力を持って推進できたのだろう。

そもそも、標本ではなく生体の白バック撮影は難易度が高い。触角2本に脚6本、翅が4枚に統一された体の向き。冒頭見開き数種ならともかく、それを全種である。質感を統一するには写真の仕上げを少人数でやる必要がある。腱鞘炎と戦っていた副監修・長島聖大さんのお仕事だろうか。

一から撮影するには、全国を飛び回って生体を確保し、見栄えがよい個体を選んで…というだけでも大変だが、飛んだり動き回ったりする種の撮影待ちだけで数時間、ということもあったと思われる。

昆虫図鑑『学研の図鑑LIVE新版』には、生体提供200人弱、撮影班40人、研究者50人が関わっていると聞く。Twitterで見かけるあの人もこの人もみなそれぞれの分野でバリバリの専門家だ。今後は生体白バック撮影のノウハウが一般化することが考えられる。今から楽しみだ。

この図鑑で育つ子どもが羨ましい!生体写真の意味

長々書いてきた背景の推測は、製作の裏話にすぎない。だが、その努力は実を結んだ。

虫が好きと言っても、全種に詳しい人はいない。私もそうだ。本書では、ページをめくるごとに各種が圧倒的な解像度や鮮やかさで迫ってくる。知っている種も知らなかった種も、すべてが初めて見た種のように新鮮に感じられる。目が離せず、読み込んでしまう。

例えばお恥ずかしい話だが、シロスジカミキリの模様が生時は黄色であることを、最近まで知らなかった。名前がシロスジカミキリで、図鑑や標本でも白い模様なのだから、そういうものだと思っていた。

バッタでもトンボでも水生昆虫でも、標本にすると色が変わってしまう種は多い。昆虫図鑑『学研の図鑑LIVE新版』を手にする子どもは、野外で見るのと同じ色で学べる。とんでもないことだ。とんでもない意欲作と言ってよいでしょう。

1 COMMENT

凄いっすね制作班の努力。昨日その本見かけたゲド(値段がお高いので変えねかったよ〜)そんな苦労があったんすね。

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