【和訳】オウサマゲンゴロウモドキ国際交流のラトビア側報道

オウサマゲンゴロウモドキ

オウサマゲンゴロウモドキは欧州でも法律で保護されていて、日本への輸入もラトビア政府の許可を得ています。今回の国際交流のラトビア現地側報道を和訳してみました。ゲンゴロウ研究が進む日本でオウサマゲンゴロウモドキ域外保全を研究、ラトビア側にはタガメやタイコウチなど日本の大型水生昆虫を提供する枠組みです。

オウサマゲンゴロウモドキ(Dytiscus latissimus)の日本輸入及び展示が可能になった経緯

オウサマゲンゴロウモドキは欧州各国でも絶滅危惧種扱いで、今回の輸入もラトビア政府の許可を得たものであることは既報のとおりです。域外保全の研究を行う名目ですが、この枠組みはマルコガタノゲンゴロウの研究者として知られる小野田さんがラトビア現地の研究者Dr.バレリーの協力を得て作ったものです。

現地の報道としてはニュースサイト「CHAYKA(チャイカ=カモメ)」で「ラトビアの甲虫が日本の話題を席巻。ダウガフピルス(ラトビアの都市名)には日本の水生昆虫5種が届く」という記事が出ています。

この記事は今回のオウサマゲンゴロウモドキ輸入にあたって、小野田さんが果たした役割をラトビア側から解説しています。

Dr. Valery

出典:2019.11.25 https://chayka.lv/2019/11/25/zhuk-plavunets-iz-latgalii-pokoril-yaponiyu-a-v-daugavpils-prislali-pyat-vidov-yaponskih-vodyanyh-nasekomyh/(Web魚拓)

Google翻訳でもだいたい意味は取れますが、ざっくり意訳します。以下、敬称略。

CHAYKA「ラトビアの甲虫(オウサマゲンゴロウモドキ)が日本の話題を席巻。ダウガフピルス(ラトビアの都市名)には日本の水生昆虫5種が届く」

(冒頭の写真はラットゲール動物園の昆虫学者昆虫学者Valery Vakhrushev)
昨夏、日本の研究者小野田晃治氏が(ラトビアの)ダウガフピルスに来て、絶滅危惧種の水生昆虫を見学していった。ダウガフピルスのラットゲール動物園の専門家が対応し、その話が発展して両国の研究者が協力し合うことになった。

30匹の甲虫(オウサマゲンゴロウモドキ)が(ラトビアの)ラットゲールから日本に送られ、ラトビアにはいない5種の水生昆虫が日本からラットゲール動物園に送られた。来年、それらの水生昆虫を見られるだろう。

水生昆虫を共有するアイデアが生まれた理由

ラットゲール動物園が日本の研究者から手紙を受け取った今年の4月から、この話が始まった。その手紙は、ラトビアのため池にも生息しているゲンゴロウの世界最大種latisimmus(オウサマゲンゴロウモドキ)を野生下で見たい、というものだった。

ラットゲール動物園はこれに応じて、小野田晃治氏は東京からラトビアを訪れた。その件は春に記事にした。

小野田晃治氏は在野の研究者で地元で水生昆虫を専門にしている。ラトビア訪問は2日がかりで、うまくいった。日本人のゲストはため池で10匹のCybister lateralimarginalisを得て研究のため日本に持ち帰った(注:latisimmusも見たが、輸送には許可がいるので他の種のみだった?)。東京で彼はゲンゴロウの仲間を研究している。

小野田晃治氏の熱意はDr.バレリーに伝わり、両者は希少種の昆虫を交換するアイデアにいたった。日本側はlatissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)の生体で研究したいし、ラトビア側は(注:ラトビアにはいない)外来種に興味があった。

latissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)は保護種なので、昆虫を交換する手続きは困難だとわかった。latissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)はヨーロッパの野生生物と自然生息地の保存に関する条約(日本名不明)で保護されていて、国際自然保護連合(ICN)のレッドリストにも含まれている。またEUの「92/43/EEC」(参考:生息地指令【EU】)でも保護されている。

したがって、ラトビア国外に輸送するには、特別な許可を含む全ての手続きを踏む必要がある。ラットゲール動物園はラトビア環境保護庁の支援に感謝している。

オウサマゲンゴロウモドキは小野田晃治氏から全ての日本人への贈り物

latissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)はヨーローッパの西部からシベリアの東部まで幅広く生息するものの、一般的ではない。latissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)は多くの土地で、絶滅危惧種とみなされている。しかし、ラトビアは自然環境が豊かで、ため池にはまだ多くのゲンゴロウがいる。

小野田晃治氏はラトビアから生きたlatissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)を受け取り、飼育施設として3つの動物園(博物園)を選んだ。福島県アクアマリンいなわしろカワセミ水族館、石川県ふれあい昆虫館、北杜市オオムラサキセンターの3館だ。ラトビアのlatissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)は既に訪問者に展示されていて(注:2019.11.15から展示開始、本記事は11.25)、将来的には繁殖に取り組むことになる。

日本の研究者たちは、latissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)の繁殖プログラムと生息地での(効率的な)保護の研究を開始する予定だ。彼らはlatissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)幼虫の代替餌を開発する。ゲンゴロウの幼虫は一般に広食性でヤゴ・ボウフラ・巻貝・魚などを食べる。しかし、latissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)はトビケラ幼虫を好む狭食性を持つ。日本の研究者の課題は、十分なトビケラ幼虫がいるため池でなくても、latissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)幼虫を育てられる代替餌を見つけることだ。

「昆虫学者は、さまざまな昆虫の人工飼料を開発しています。日本はゲンゴロウ分野の先進国で、熱意を持った研究がそれを可能にしました。日本の研究仲間が、latissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)養殖の新しい技術開発に貢献できれば嬉しいです。」

ダウガフピルスの動物園では、日本の研究者の熱意と活動を称賛している。「晃治は素晴らしい人物です」とDr.バレリーは語る。「私たちは彼の熱意に感動しました。彼はlatissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)を見るために、多額の費用をかけて欧州までやってきました。そういうことができる人は多くありません。両国間の昆虫の交換を企画できたのは彼のおかげです。私たちが彼の要請に応じて日本に送ったlatissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)は、水生昆虫に興味を持つすべての日本人に対する、彼からの贈り物です。」

ラットゲールからゲンゴロウが到着した件は日本の日刊紙「毎日新聞」を始め、多くのマスメディアで取り上げられるニュースになった。

小野田氏はFacebookで「この昆虫は文字通り、日本中の昆虫研究者や愛好家を魅了しています。生きているうちにlatissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)が泳いでいるのを見るなんて信じられない、と!地元の新聞やTV局はlatissimus(オウサマゲンゴロウモドキ)が日本に輸入されたことを報道しています。」と書いた。

(注:日本のほとんどの報道は以下の記事で網羅しています)
オウサマゲンゴロウモドキ オウサマゲンゴロウモドキ生体が日本初上陸【写真・動画】

石川県ふれあい昆虫館からは「現存するゲンゴロウで世界最大!国内初展示となるオウサマゲンゴロウモドキが石川県へ到着しました!見てくださいこの美しい緑!!そして幅広い翼のような上翅!♀の背面には筋がありますが、なんと黄金色に輝いています。美しく、迫力のある姿は何時間でも見ていられますよ!この貴重な機会をお見逃しなく!!」という投稿があった。
https://www.facebook.com/fureaikontyukan/posts/2777901265575572

ダウガフピルスではタイコウチ・ミズカマキリ・タガメなど巨大な水生昆虫を見られる

ダウガフピルスの研究者は、(latissimusとの交換で)日本から5種類の昆虫を得た。Lethocerus indicus(タイワンタガメ)、Kirkaldyia deyrolli(タガメ)、Ranatra chinensis(ミズカマキリ)、Laccotrephes japonensis(タイコウチ)、Cybister chinensis(ゲンゴロウ)だ。

「日本から来た水生昆虫は、研究者にも動物園来園者にも興味深い種です。(ラトビアにも似た種がいるがもっとサイズが小さいので、これらの種は)巨大な水生昆虫です。」ラットゲール動物園の昆虫学者Dr.バレリーは、おそらく夏までに動物園で展示できるとしている。

日本から来た水生昆虫は現在、ダウガフピルス州のラットゲール動物園で検疫作業中だ。水生昆虫は飛行機のコンテナで輸送され、低温の影響を受け何匹かは死亡してしまったものの、徐々に適応し回復するはずだ。(注:熱帯種も含まれ輸送中の低温に耐えられなかった可能性がある)

動物園では、日本から来たカメムシ(注:ゲンゴロウ以外はカメムシの仲間)の繁殖と越冬環境を作っている。Dr.バレリーは今後の計画について「水生昆虫の適応は難しい。日本と異なる水に適応する必要がある。日本には四季の変化があり、越冬を模した低温条件を再現する必要があります。その後、気温が上昇して春になればスムーズな繁殖に至ります。」と語った。(注:繁殖ということは数ペア+予備が輸送されている)

日本からラトビアに送られる昆虫は、さまざまな場所から慎重に収集された。「私たちは福島県アクアマリンいなわしろカワセミ水族館、石川県ふれあい昆虫館、北杜市オオムラサキセンターのスタッフと、これらの昆虫の輸送を担当してくれた小野田晃治氏に非常に感謝しています。」とダウガフピルスの昆虫学者(注:Dr.バレリーか?)は語っている。「私たちは、これらの水生昆虫を研究したり訪問者に展示したりできます。私たちは、彼らの(注:直訳では私たちの、だが)協力に感謝するとともに、常に興味深いオファーを受け付けています。」

記事を読んだ感想

Chayka.lvが現地でどういうポジションのメディアなのか承知していないが、オウサマゲンゴロウモドキの国際交流について、丁寧に取材されている。

ラトビア側Dr.バレリーと日本側小野田晃治氏の双方からコメントを取っているし、タイコウチやタガメなども現地で撮ったもののようだ。タガメを持つ人物はDr.バレリーと同じ服装で、Dr.バレリーとタガメ写真のクレジットはChayka.lvオーナーのЕвгений Ратков。私は仕事で撮影もするが、たとえば人物と昆虫とではまったく別の撮影技術が必要で、いきなりこのレベルのものは撮れない。相当場数を踏んだ方かと思う。

本記事では、現地でも保護されている希少種を輸送する苦労や、ラトビア側がタガメやミズカマキリ、タイコウチなど現地では珍しい昆虫5種を得たことが記されている。

また、日本での反響について大きく割かれている点も目を引く。別記事で「日本はゲンゴロウの研究が進んでいる国」と書かれている様子から、欧州ではそれほどゲンゴロウ(あるいは水生昆虫)の研究者が多くないのかもしれない。
#とはいえDr.バレリーの真っ白な研究施設は格好よくて羨ましい
#別記事で水生昆虫専門家が少ない件に触れられている

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