【FAQ】販売・飼育禁止?!タガメの規制で何が許され何が禁止されるか?

特定第二種の規制

2020年2月20日から、が「種の保存法」の国内希少野生動植物種「特定第二種」に指定され、商業目的の採集・販売が禁止されます。研究・趣味目的はOKとされていますが、タガメに関して何が許され何が禁止されるか、理解・周知は進んでいないように見えます。私が勉強した範囲で、タガメの「特定第二種」指定の影響について説明します。

「種の保存法」とは何か、「国内希少野生動植物種」とは何か、「特定第一種」と「特定第二種」の違いは何か、一つ一つ見ていきましょう。「特定第二種」で禁止されることと許されることだけ見たい方は目次から移動してください。

誤解している方見かけましたがタガメの標本もNGです。

【特集】タガメの方法

日本最大の水生昆虫タガメ。タガメの飼育方法や餌、交尾から、幼虫の育て方まで、タガメの飼育・繁殖方法についてはこちらの特集もご覧ください。

「種の保存法」の概要

通称「種の保存法」の正式名はめちゃくちゃ長くて「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」と言います。1993年に施行され、国内に生息・生育する、又は、外国産の希少な野生生物を保全するために必要な措置を定めています。

国内で絶滅が危惧される種を「国内希少野生動植物種」に指定し、「個体の取り扱い規制」として販売・頒布目的の陳列・広告、譲渡し、捕獲・採取、殺傷・損傷、輸出入等が原則として禁止されます。原則として、というのは許可が必要という意味です。

その他、個別に「生息地の保護」や「保護増殖事業」が行われます。

タガメが種の保存法「特定第二種」に指定された経緯

タガメ

今回、政府は種の保存法の一部を改正し、2017年に新設された「特定第二種」初の指定として里山に生息するトウキョウサンショウウオ・カワバタモロコ・タガメの3種を指定しました。初の指定ですから、象徴的な種を選んだといえるでしょう。トウキョウサンショウウオは乱獲された塊がネットオークションで販売され、タガメも卵塊の出品を見かける状況でした。

参考:環境省_「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定について(国内希少野生動植物種の指定等)

参考:本改正に関するパブリックコメント

上記は指定後の資料であって、特定第二種国内希少野生動植物種の選定は「希少野生動植物種専門家科学委員会」で行われています。資料2は特定第二種という制度を理解するのに役立ちます。

参考:
環境省_令和元年度第2回希少野生動植物種専門家科学委員会 議事次第・資料
資料2_特定第二種国内希少野生動植物種の選定について
特定第二種国内希少野生動植物種の選定の進め方について

曰く、特定第二種は里地里山に依存し、多産であり、生息・生育地の環境が回復すれば速やかに個体数回復が見込めるが、業者による大量捕獲には耐えられない状況の生物、です。特定第二種の必須要件には「繁殖による個体の数の増加の割合が低いものでない」が入っている点に注目しましょう。

我が国においては、多くの絶滅危惧種が里地里山等の二次的自然に依存している(昆虫類、淡水魚類、両生類の約7割が二次的自然に生息と推定)。そうした二次的自然に分布する昆虫類や淡水魚類等の種については、自然界においては個体数が減少し、絶滅のおそれがあるものの、多産であり、生息・生育地の環境改善がなされれば速やかに個体数の回復が見込めるものが多い。このような種の保全のためには、生息・生育地の減少又は劣化への対策が有効であり、個体数が著しく少なくなければ、個体の捕獲等及び譲渡し等を規制することは必ずしも優先度は高くない。一方で、販売業者等の大量捕獲等がなされた場合には種の存続に支障を来たすおそれがある。

こうした趣旨から、平成 29 年度の種の保存法改正においこうした趣旨から、平成 29 年度の種の保存法改正において、販売又は頒布等の目的での捕獲等、譲渡し等及び陳列・広告のみを規制する「特定第二種国内希少野生動植物種(以下、「特定第二種」という。)」制度を創設した。(同法は平成 30 年6月に施行)。

残念ながらタガメが候補になった経緯及び決定された回の議事録は見つけられませんでしたが、委員からはTwitter界隈でみなさんが望んでいるであろうことが指摘されています。

○吉田正人委員 17ページの課題④に関係して、質問および意見です。指定種をふやすことがゴールではなくて、指定されたものが安全な状態になっていくということが目標だという議論は全くそのとおりです。そのためには、この保護、回復の計画を実行していくということが大事だと思いますが、現在の法律上は保護増殖事業という名前になっています。今後、特定第二種国内希少野生動植物種のように、第2の危機によって、里地里山の管理がされなくなったことによって減っていくというような生物を考えていかなくてはなりません。その場合、個体数の増殖というよりは、例えば草地、草原だったら火入れをしたりとか、草刈りをしたりとか、そういった生息地管理をしていくということがこの管理の重要な部分になると思うんです。(平成30年度希少野生動植物種専門家科学委員会議事録より)

また「特定第二種」の選定の進め方の資料を見ると「流通規制の効果が高い種」(トウキョウサンショウウオ!)、「かつて身近に生息し、一般にも比較的広く認知されている種」「特定第二種を知っていただくために適切な種であるかの観点」とあり、特定第二種初指定の象徴種としてタガメが選ばれた、とみて良いでしょう。

「特定第二種」の選定の進め方

「特定第二種」で禁止されること・許されること

特定第二種の規制

出典:環境省「特定第二種国内希少野生動植物種制度の概要について」

特定第二種に指定されたタガメの取り扱いで今後禁止されること・許されることをまとめます。
・販売・頒布目的の捕獲・譲り渡し等は禁止。販売・頒布目的でない趣味・研究目的では許される。
・販売とは、対価を得て財産権を移転すること。
・頒布とは、有償・無償を問わず、不特定多数の者に配り分けること

特定第二種国内希少野生動植物種の選定についてにもう少し細かく書いてあります。

■禁止される行為
・インターネットオークション・店頭での個体等の販売・購入
・個人間での個体等の販売・購入
・店頭・商業目的のイベントにおける個体等の無償配布

■許される行為
・学術研究や生息状況の調査を目的とした捕獲等又は譲渡し等
・系統保存や野生復帰等の保全を目的とした飼育又は繁殖に伴う個体等の捕獲等又は譲渡し等
・特定の個人に対する商業目的でない個体等の譲渡し等
※該当・非該当ケースについては、状況に応じて個別に判断が必要
※種の保存に影響がないものに限る

これらをフローチャートにまとめると以下の通りです。
・「金銭又は金銭的価値に換算できるような対価」もNG
・標本もNG
である点に注意しましょう。

販売又は頒布の適用フロー

諸々まとめると、今後タガメを入手する方法は1.自分で採集する 2.面識ある個人から無償で譲り受けるのどちらかです。

個人的には、資料を読む限り「特定第二種」は「特定第一種」の難点、つまり一旦指定されると研究者であっても生息地調査すらままならず、保護しようがない点に改善が見られます。わざわざ説明されているように、研究・保存目的は十分配慮されているようです。

一方、学術研究、繁殖、教育、当該種の生息状況又は生育状況の調査、その他種の保存に資すると認められる目的で行う個体の捕獲等又は譲渡し等については、種の保存への支障や、個体の不適切な取扱いが生じるおそれが少なく、種の保存のために飼育者を募集するなど不特定又は特定多数の者を対象とする場合であっても、それを販売又は頒布目的の捕獲等又は譲渡し等として禁止する必要はない。

タガメ飼育に関するFAQ

Q:タガメの捕獲・飼育・譲渡は禁止された?

A:タガメは2020年2月から種の保存法「特定第二種」に指定され、販売・頒布目的の捕獲・飼育・譲渡等が禁止されました。趣味および研究目的は規制対象外です。

Q:種の保存法に新設された「特定第二種」とは?

A:今回指定されたタガメやトウキョウサンショウウオなどは卵塊がヤフオクなどで流通している実態があり、販売を規制することで保護の効果が期待されています。既存の「国内希少野生動植物種」指定では保護活動あるいは研究目的の調査・捕獲にも許可が必要だった部分の改善も含まれています。

Q:「特定第二種」で禁止される行為は?

販売・頒布目的の捕獲・譲渡等が禁止される。販売・頒布目的でない趣味・研究目的では規制対象外。「販売」とは、対価を得て財産権を移転すA:ること。金銭以外も含まれる。「頒布」とは、有償・無償を問わず、不特定多数の者に配り分けることを指す。

Q:「特定第二種」指定後に許される行為は?

A:・学術研究や生息状況の調査を目的とした捕獲等又は譲渡し等
・系統保存や野生復帰等の保全を目的とした飼育又は繁殖に伴う個体等の捕獲等又は譲渡し等
・特定の個人に対する商業目的でない個体等の譲渡し等
※該当・非該当ケースについては、状況に応じて個別に判断が必要
※種の保存に影響がないものに限る

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