2020年は何箇所かで野生のタガメを見つけましたが、タガメの関東の生息地はどんな場所で、素人でも見つけられるものでしょうか?
飼育下でも興味深い種ですが、野生個体を見つけてみたい、実際の生息環境を知りたい、あわよくば生態写真を撮りたい!との思いがありました。
結果的に慌てていてうまく撮れなかったんですが、カエルを捕食している様子を生で見られて満足です。
In English. Find wild Giant Water Bug in the field – Diving Beetle and Giant Water Bug breeding
日本最大の水生昆虫タガメ。タガメの飼育方法や餌、交尾から繁殖、幼虫の育て方まで、タガメの飼育・繁殖方法についてはこちらの特集もご覧ください。
なお、タガメは2020年に種の保存法「特定第二種」に指定され、販売目的の捕獲飼育譲渡などが禁止されましたが、個人が趣味で飼育することは規制対象外です。
今年の北関東タガメ生息地遠征
と言いつつ、私は免許取っていないので、これまで遠征を具体的に考えたことがありませんでした。自然度が高い場所に大荷物で電車、ということは考えられないからです。
しかし今年、水生昆虫で交流があった方から、一緒に行きませんか?というお誘いをいただいて何回かタガメを探しに行ってきました。
その結果2回目でタガメを発見、3回目は自分の奥さんに車を出してもらって家族で遠征しこちらも発見と、3回中2回別々の場所で出会うことができました。
したがって北関東におけるタガメの採集難易度は、知識がある人がゼロから探しても見つかる、くらいの難易度と言えそうです。
今年見た水生昆虫たち
タガメを探すと、結果的にほかの水生昆虫たちも見つけることになります。ヒメゲンとコシマは特に大量に見ました。
タガメの生息場所を探すアプローチ
もしタガメの生息地をゼロから探そうとしたら、どのような方法があるでしょうか。
生息地をピンスポットで教えてもらう
一番簡単なのは、生息地をピンスポットで教えてもらうことです。しかし、それはいる所にはいる、という当たり前の話なので面白くありません。
結果的に教えてもらった例もありますが、仮説に基づいて自分で見つけた、という経験が大事です。
過去の記録から大雑把なエリアを絞り込む
あんまり具体的に書くとアレですが、○○県くらいだと広すぎて検討がつきません。もう少し市区町村レベルまで絞り込まないと、現地での時間がなくなってしまいます。
過去の記録やTwitterで見かけた情報などから直近でも生息が確認できているエリアというのはだいたいわかります。
たとえば、北関東ではタガメは広域に薄く生息しています。さらに繁殖期は数km飛翔するため、たまたま市街地で見つかったからといって、そこに行ってもいる訳がありません。
もう少し候補を絞り込むにはどうしたら良いでしょうか。
タガメの生息地の条件を考える
タガメが減少した原因から逆算していくと、現在でも繁殖している場所が浮かび上がってきます。
つまり、タガメは生態系の頂点であり、かつ農薬に極端に弱い特徴を持っています。したがって、下位の水生昆虫たちも豊富で、かつ農薬が入らない場所が候補になってきます。
具体的に言えば、田畑の農薬が流れ込む下流や、ザリガニやウシガエルが侵入して水草がなく死んだ色の水になっている所は見込み薄です。
毎回ヌマエビやドジョウ、何かしらの水生昆虫が入るくらいの場所だと期待が高まってきます。
逆に毎回ザリガニが入ったり、ウシガエルの鳴き声が聞こえてくると「あー(棒)」と嘆息して撤退します。
また、確率論から言えば、タガメは水の流れが早かったりあまり深い所にはいません。幼虫はそれほど遊泳能力がないからです。
タガメは水深20cmまでの堀上や素掘りの水路の方がいる確率が高いです。三面コンクリの水路は見込み薄で、いたとしても流されてきたなど偶然でしょう。
写真はいい感じの水路があるはずの場所ですが、現地は丁度改修された所でした。周辺の水たまりではヒメゲンゴロウやハイイロゲンゴロウがまだ泳ぎ回っていましたがこうなると見込み薄です。
谷津田とは何か
こうした条件を満たすタガメの生息地として「谷津田」という地形があります。谷津田とは「谷戸」を利用した水田環境です。
谷戸とは丘陵が侵食されてできた谷状の地形です。両側が丘陵でその間に田んぼが広がり、上流にため池や細い水流があります。
こうした地形は農薬の影響が限定的ですが、近代化しづらく休耕田になったり放棄されて陸地になりやすいのが弱点です。
Google Mapsで下見したり候補地を管理する方法
この後、Google Mapsで下見する方法、Google Mapsで候補地を管理する方法について書こうと思いましたが、長くなるので別記事にて。
なお面識ない方からの「生息地を教えてください!」系のご質問にはお答えできません。ある程度仲良くなって、それから一緒に採集や観察に行きましょう。
はじめて、○○と申します。
タガメの飼育・研究に興味があります。
HP記載のとおり「いきなり一緒に採集に行きましょう!」とは言えないですが
ある程度情報交換できたら是非採集お供させてください。
(以下略)
ご認識の通り、タガメは2020年2月から特定第二種の規制対象です。個人による趣味の捕獲・飼育は規制の対象外ですが、個人間譲渡の場合「種の保存に資する目的である」あるいは「販売・頒布」に当たらないことが条件となります。
以下は一般論ですが、個人間の譲渡においても「状況に応じて個別に判断」の保留が付いています。個人の場合「研究目的」であることを証明・保証することが難しいので、
・幼虫を育て、成虫を譲渡元に戻す里返しパターン
・タガメ飼育者間の、血統入れ替えのための交換
などが安全なラインかと思います。
もちろん、知り合いになった後、一緒に採集に行くのはWelcomeです。別途、ご連絡します。
> ・特定の個人に対する商業目的でない個体等の譲渡し等
> ※該当・非該当ケースについては、状況に応じて個別に判断が必要
よろしくお願いします。
私は販売が禁止される前にタガメを購入しました。何度か失敗をして死なせてしまいましたが、今では繁殖に成功しています。ただ心配なのは、ずっと同じ血統(血筋)、兄弟で繁殖させていることです。生物界では同じ血縁で繁殖をしていると血が濃くなり異常な固体が生まれると聞いたことがあります。同じ血縁関係の固体で5~6年は繁殖が続いています。異常な固体は生まれてくることがあるのかどうかを知りたいです。お教えいただけますでしょうか。
タガメについて血統を気にされる方は結構多いのですが、個人的にはそのような経験はありません。ほかの例では、何年か経つと産卵数が減る、孵化率が悪くなると言った話をたまに聞きます。
複数ペアいる場合は、1卵塊のみからだと確実に兄妹となってしまうため、各回個体数を絞ることで複数卵塊から成虫を出す工夫がされていると思います。
また、野外放出しない前提でしょうから、飼育者間で余った個体を交換することも行われていると思います。
タガメは餌由来の全滅なども起きうるので、交換できる相手を作っておくことは有効です(特定第二種の譲渡要件を満たすよご注意ください)。