タガメの水質という時、飼育における水質と、水質悪化で減少したという文脈の2つがあります。タガメは成虫になれば普通に飼育できますが、幼虫時代は水質にかなりシビアです。また、タガメは農薬に敏感で餌も水質も農薬NGです。
日本最大の水生昆虫タガメ。タガメの飼育方法や餌、交尾から繁殖、幼虫の育て方まで、タガメの飼育・繁殖方法についてはこちらの特集もご覧ください。
タガメ飼育に求められる水質
タガメ成虫の飼育は、餌代はかかるものの、飼育下における水質はそれほどシビアではありません。普通に関東の水道水で飼えます。ドジョウやカエル、金魚などを餌にすると思いますが、食べ残しで水質悪化するので、ろ過装置は入れた方が良いでしょう。
在宅勤務の方は、随時食べ残しを取り除けば、週一程度の水換えで済むはずです。ちなみにゲンゴロウはタガメの食べ残しを喜んで食べます。
水生昆虫なのに溺れるの?!タガメ幼虫飼育における水質問題
一方タガメ幼虫は水質含めかなり繊細で、すぐ死にます。飼育難易度も高く、初めてだと全滅させる例も複数聞いています。成虫のペアはシーズン3-4回産卵するので、なんだかんだシーズン10匹程度は新成虫を残せるでしょう。
タガメ幼虫の飼育のコツの一つは、いかに水換えを減らせるかです。タガメの幼虫は毎日餌を食べますが、食べ残しで水質が悪化します。白濁してくるので毎日水換え必要ですが、水換えすると幼虫が暴れだして大量死することがよくあります。
タガメ幼虫は腹面の繊毛に空気を貯えて呼吸しますが、水換えをきっかけに呼吸不全に陥ってしまうことがあるようなんですね。不自然に腹を水上に出したり、容器を登ったりするのは呼吸不全の兆候です。
登れる足場を用意しても、助からないものが多いので、水生昆虫の癖にバグなの?!と不可解な気持ちになります。
現在は、濾過装置を入れて数日引っ張り、水も総入れ替えしないよう工夫しています。それでも、4令後期だと餌があるだけ食べるので、水質的に2日もたなかったりします。
農薬に敏感で生息環境の水質に厳しいタガメ
タガメは1950年代までは市街地近辺でも普通に見られる種でしたが、1980年には各地で地域絶滅が報告されるなど、急速に姿を消しました。その減少要因として水質悪化、具体的には環境省のRDBで「タガメは農薬などの汚染にとても敏感で、非常に微量の濃度でも成長を阻害されるか、死んでしまいます。」とされている特質が関係しています。
「タガメにも天敵はいる?幼虫時代は捕食される側!」の記事後半で説明しているように、タガメは一般的な昆虫より10倍以上農薬に敏感で、農薬に触れた餌を摂取することでも死んでしまうことが確認されています。
つまり、水田がある平野部、下流部では生息環境的にほぼ生きられない、ということになっているのです。現在タガメは、山間部や丘陵部など、農薬の影響が少ない場所で生き残っています。
タガメの水質に関するまとめ
タガメの水質には、飼育における水質と生息環境の水質の2つがあります。タガメ幼虫の飼育にあたっては、餌の食べ残しによる水質悪化があるので、水換えが必要ですが、水換えが呼吸不全のきっかけとなってしまう場合に注意が必要です。
また、タガメが農薬に弱いことは有名で、多くの平野部では農薬が流れ込むため、丘陵部や山間部で生き残っている状況です。